「韓国人拒否」の貼り紙を掲示する飲食店

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 韓国国内のTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備を契機に中国国内でも深刻化する”韓国イジメ”。飲食店のなかには明確に「韓国人拒否」をうたう店もあらわれている。ロッテグループが展開するディスカウントストア・ロッテマートは閑散としており、3月中旬までに半数の55店舗が営業停止に追い込まれた。当局から「不当な価格設定」を理由に行政処分を受けたり、「消防設備の不備」を指摘されたりした店舗もある。ジャーナリスト・北嶋隆氏がレポートする。

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 韓国バッシングは、都市部よりも地方のほうが過熱する傾向がある。3月初旬には、河南省新鄭市のショッピングビルを舞台に300人規模の「反ロッテ」デモが行われた。群衆は巨大な五星紅旗をはためかせながら国歌を熱唱。重機でロッテ製品を破壊するパフォーマンスまで行った。もはや暴動である。

 デモが起きたショッピングビルを訪れると、店頭の張り紙にこう書かれていた。

〈THAAD事件によって、中国人民の利益と感情が深刻に傷つけられています。当店は、すべてのロッテ製品を撤去します〉

 ところが、このビルの2階では“韓国風”雑貨を扱う店舗が今も堂々と営業を続けていた。大丈夫なのか? 店内を覗くと、大きな注意書きが目に飛び込む。

〈韓流尚品(店舗名)の商品は世界の流行を取り入れた中国製品であり、もともとメイドインチャイナです〉

 たとえパッケージがハングルでも「中身はれっきとした中国製だから早とちりして襲わないように」ということらしい。結局この人たちは韓国のことが好きなのか嫌いなのか。謎である。

 それはさておき、中国に住む韓国人の不安をさらに煽っているのが、日々、ネットに投稿される過激な動画や画像の数々だ。

 北京市内の韓国ブランド店の女性スタッフに「韓国人は出ていけ!」と怒鳴る男。ロッテマートのレジに並ぶ客に「お前は愛国心がないのか!」と罵声を浴びせる女。エントランスに太極旗を敷き、客に踏ませるホテル……。江蘇省啓東市では、路上駐車していた韓国・現代製の車が破壊される事件も発生している。

 今のところ韓国人が肉体的危害を加えられた事例は確認されていないが、3月に入り、中国各地では「韓国に制裁を」「ロッテは出て行け」という類のプラカードを掲げた小規模デモが頻発。韓国に対する抗議は、ボイコットからより暴力的なものに姿を変えつつあるのだ。望京(天安門広場から北東15kmに位置する。中国最大級のコリアンタウンとされる)で出会った韓国人駐在員の男性が言う。

「私自身はトラブルに遭遇したことはないのですが、ネットの投稿を見ると心配になります。4月の連休は家族で中国国内を旅行しようと計画していましたが、行き先を日本に変更しようと思っています」

 中国政府は「理性的な愛国心を持つように」と呼びかけているものの、民衆は“愛国無罪”を御旗に絶賛暴走中。中国各地の過激な反韓運動は、中国政府が民衆をコントロールできなくなっていることの表れとも言えるのかもしれない。

※SAPIO2017年5月号