関東大学リーグ1部に定着した感のある桐蔭横浜大。今季は初制覇に挑む。写真:猪野史夏

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“桐蔭”と言われて日本のサッカーファンが思い浮かぶのは、森岡隆三や戸田和幸といった日本代表の選手たちを輩出した、桐蔭学園高ではないだろうか。かつては全国の舞台に幾度も駒を進め、神奈川県の高校サッカーを桐光学園と共にリードする存在であり続けてきた。その知名度は全国区であることは間違いないが、近年は目立った成績を残せていない。
 
 一方で、この桐蔭学園高を付属校とするものの、サッカーにおける成績も知名度も付属校に著しく劣っていたのが桐蔭横浜大だ。しかし、それも今は昔。桐蔭横浜大は、名門校がひしめき合う関東大学サッカーリーグ1部(4月16日開幕)で、タイトル争いに果敢に挑もうとしているのだ。
 
「うちは“桐蔭学園高校付属”桐蔭横浜大学ですから」
 
 笑いながらこんな冗談を口にしていたのはチームを率いる八城修監督だ。ちょうど4年前、チームが初めて関東大学リーグ1部への昇格を決めた直後の発言である。
 
 前年度の2部リーグでは下位争い。翌年の大躍進で掴んだ昇格ということもあり、1年での降格も周囲からは囁かれていた。しかし――。
 
 大方の予想を裏切って1部初年度の2013年から4年連続で残留を決め、昨年は夏の全国大会である総理大臣杯の関東予選・アミノバイタルカップでも優勝を果たし、本戦でもベスト4に進出。優勝した明治大に惜しくも逆転負けを喫したが、リーグ戦では下位が定位置だったチームにとって、創部以来初めてとなる全国の舞台を経験した意味は大きかった。選手たちが自信と経験値をさらに高めたのは言うまでもない。
 
 そして近年、関東1部に定着してきたことで、高校年代に華々しい活躍をした有望株たちも入学するようになってきたのだ。
 
 2015年度の高校サッカー選手権で小川航基(ジュビロ磐田)を擁した桐光学園からは、ドリブラーのイサカ・ゼインが昨年に入部し、1年生から主力として活躍。今年の新1年生にはイサカの一つ下であり、川崎のタビナス・ジェファーソンやC大阪の茂木秀と同期で桐光学園の10番を背負った鳥飼芳樹、東京Vユース出身の攻撃的サイドバックである松本幹太が入部した。さらには、神村学園の中心選手で1年時に国体の鹿児島県代表として10番を背負った橘田健人も期待のルーキーである。
 
「1部に上がってからのセレクションの質は高くなりましたし、いい選手も来るようになりました。今年のメンバーは関東1部しか知らないメンバーですし、今までは虚勢を張って『優勝しようよ!』と言っていたけど、今年は選手たちも本気でそこを狙っていると思います」
 
 安武亨コーチはこう語り、1年時からレギュラーとして活躍し、湘南の練習にも複数回参加をしているFW鈴木国友も「メンツ的には関東でもトップクラスだと思うので、優勝を狙える位置にいける」と、4月16日に開幕するリーグ戦に向けて、自信を覗かせている。
 いまや優勝を現実的な目標とするまでに至ったわけだが、チームがここまで成長する種を撒いた人物が現在、名古屋グランパスで指揮をする風間八宏監督だ。1998年に監督に着任、それまで同好会レベルでしかなかったサッカー部に本格的な指導を施し、わずか部員16名のチームを神奈川県大学リーグ2部で全勝優勝させた。
 
 以前、風間監督は「『がんばれベアーズ』みたいな感じだったよ」と、当時を懐かしく振り返っていたのだが、素人同然のプレーヤーもいるなかで選手として必要な技術や意識の部分を徹底的に植え付けた。
 
 その後、関東2部との入れ替え戦に進むまでチームを育て上げた後に、コーチであった八城氏にバトンを渡した。八城修監督は風間監督の哲学を引き継ぎ、関東2部への昇格を果たした後、前述したように2012年に1部昇格を決めたのだった。
 
 攻撃的なサッカーを志向するなかで、相手ありきでサッカーをするのではなく、自分たちがどれだけできるか、という部分にチームは焦点を当てている。そういった風間監督の持つマインドを継承し、今の桐蔭横浜大のサッカーは成り立っている。
 
 例えば、10番を背負う石川大地はどんな狭い局面でも失わない圧巻のキープ力がある。それこそ風間監督から八代監督へと引き継がれた血が流れている選手と言えるだろう。前述した鈴木やイサカを含めた攻撃陣は魅力的で、彼らが今年のチームを牽引する存在になるのは間違いない。
 
 風間イズムを継承する選手たちが、今年は本気で頂点を目指す。 新興チームが挑む栄光への道筋と、目標へ邁進する姿に、ぜひ注目してほしい。
 
取材・文:竹中玲央奈(フリーライター)