右腕だけ巨大でピンク色のハサミを持つテッポウエビの新種につけられた名前、それは、イギリス出身で数々の名アルバムを発表してきた伝説のプログレッシブ・ロックバンドの「ピンク・フロイド」に由来するものでした。

Rock giants Pink Floyd honored in naming of newly discovered, bright pink-pistol shrimp

https://phys.org/news/2017-04-giants-pink-floyd-honored-newly.html

Psychedelic shrimp with tons of sonic energy named after Pink Floyd

http://mashable.com/2017/04/12/pink-floyd-snapping-shrimp-science/

やたらと目につくピンク色のハサミにサイケデリックささえ感じるこのテッポウエビの一種は、パナマ近海の暖かい海で発見されたもの。動物分類学の学術誌である「Zootaxa (ズータクサ)」で発表された論文で3人の著者はこのテッポウエビに「Synalpheus pinkfloydi」という学名を命名しています。



このエビとピンク・フロイドの共通点は「ピンク」というキーワードだけではありません。大きな爪を高速で動かすことで、このエビは水中にキャビテーション(泡)を発生させ、その泡が消失(爆縮)する際に生じる圧力波を用いることで、エサとなる小魚を失神、または殺して食べるという習性を持っています。一方のピンク・フロイドといえば、とりたてて爆音で聴衆を圧倒するということはありませんが、むしろ心地よく緻密なサウンド、そしてギタリスト/ボーカルのデヴィッド・ギルモアが奏でる、いい意味で「テクニック満載ではないけど魂に響いてくる」と称賛を集めるギターの音色で聴衆を魅了する、という意味ではこのエビと同じ「攻撃方法」を持っているといえるのかも。

論文を発表したのは、ブラジル・ゴイアス連邦大学のArthur Anker氏、アメリカ・シアトル大学のKristin Hultgren氏、そしてオックスフォード大学自然史博物館のSammy De Grave氏らによる研究チームです。実はDe Grave氏は長らく熱狂的なピンク・フロイドのファンで、新種の生物にバンドの名前をつける機会を狙っていたとのこと。De Grave氏は「私は、ピンク・フロイドが1979年に発表したアルバム『ザ・ウォール』の頃からのファンで、当時私は14歳でした。それ以来私はピンク・フロイドのライブに何度も足を運んでおり、2005年にロンドン・ハイドパークで行われた再結成コンサートにも行きました。この新しいテッポウエビに名前をつけることは、私の最もお気に入りのバンドにあいさつをする絶好の機会でした」と、ロックファン丸出しで思わずニンマリしてしまいそうなコメントを寄せています。

Anker氏もピンク・フロイドとは無縁ではないようで、「私はいつも仕事の時には、ピンク・フロイドをBGMに流していました。しかし今や、バンドと私の仕事は科学文献の中において1つになりました」と、生粋のファンでなければ口から出てこなさそうなコメントを語っています。



By Ricecracker.

Synalpheus pinkfloydiは新種に認定されているものの、同様のハサミを持つ種はこれまでにも存在が確認されています。1909年には、同じパナマ近海でSynalpheus antillensisという種が確認されており、今回の新種と非常によく似た特長を備えているとのこと。しかし、今回の新種はDNAレベルで大きな違いが確認されたため、別の種として新種認定されたそうです。

なお、ピンク・フロイドの創作物には動物に関するものがよく登場しています。1970年のアルバム「原子心母」はアルバムジャケットに描かれた牛が特徴的な作品であるほか、1977年のアルバム、その名も「アニマルズ」では、曲名が「翼を持った豚」「ドッグ」「シープ」という楽曲が収録されています。また、1969年のアルバム「ウマグマ」の名を冠したトンボ「Umma gumma」がすでに登録されていますが、バンド名そのものをモチーフにした名前が登場したのは今回が初のケースとなっています。

ちなみに、ピンク・フロイドの楽曲としては、悪役レスラー「アブドーラ・ザ・ブッチャー」の入場テーマ曲として使用されていた「吹けよ風、呼べよ嵐 (原題:One of These Days)」が日本ではよく知られている曲の1つです。