(右から)太賀、矢本悠馬、中村蒼らが共鳴した現場 (C)2017「ポンチョに夜明けの風はらませて」製作委員会

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 早見和真氏の青春小説を実写映画化する「ポンチョに夜明けの風はらませて」の撮影現場が、このほど茨城・新鉾田の海岸で報道陣に公開。メガホンをとった新鋭・廣原暁監督(「HOMESICK」)が取材に応じ、太賀、中村蒼、矢本悠馬ら若手俳優たちとともに試行錯誤を続ける日々を語った。

 モラトリアムを持て余す男子高校生の又八(太賀)、ジン(中村)、ジャンボ(矢本)が、あてもなく旅する姿を描いたロードムービー。又八たちは友人の中田(染谷将太)と計画していた“卒業式乗っ取りライブ”を目前に控えたある日、ジャンボの父親のセルシオを無断で借り、高校最後の旅に出る。道中で破天荒なグラビアアイドルの愛(佐津川愛美)、風俗嬢のマリア(阿部純子)を仲間に加え、少しずつ成長しながら、自分の生き方を見つめていく。

 この日の撮影は、たどり着いた海辺で夜通しどんちゃん騒ぎした後、又八たちがよろよろと起き上がるというひと幕。悪ふざけで砂を被せられ、そのまま眠りに落ちてしまった又八は、散歩中の犬に顔を舐められ目を覚ます。自身の状況にギョッとしながらも、砂から這い出て服を着ると、雑魚寝しているジンとジャンボが見える。しかし、愛とマリアの姿はない。我に返った又八はあわてて2人を叩き起こし、愛たちの行方を探す。

 ロケは雲ひとつない快晴に恵まれ、地平線がくっきりと見える紺碧の海をバックに、又八役の太賀はパンツ一丁になり、頭部を出した状態で砂に埋められていた。顔にバターを塗っていたものの、うまく犬が舐めてくれず、何テイクも撮り直していく。冬の寒風が吹きすさぶ海辺なだけに、カットがかかるたびに、砂まみれの太賀のもとにベンチコートを持ったスタッフが一目散に駆け寄っていった。

 原作を読んだ感想を、廣原監督は「次に何が起こるかわからない無茶苦茶感があった」と語る。一筋縄ではいかない異色の青春譚を映像化するにあたり、脚本段階では「ロバート・アルトマン監督の映画や、ほか森崎東監督、鈴木則文監督の『トラック野郎』みたいな無茶苦茶な映画がやりたいと話していました。それが出発点です」という。原作者の早見氏からは「君たちの考える青春映画を撮ってほしい」とメッセージをおくられ、「高校生3人がとにかく前に前に進み続け、どこかに行って何かやり続ける、まったく振り返らないという物語にしたい」と決意した。

 キャスト陣には、今後の日本映画界を担う若手実力派たちが結集。演出して感じたことを聞くと、「太賀さんはとても繊細に調節してくれています。芝居の幅がとても広いうえに、監督が求めていることを考えて演技してくれて、とてもありがたいです」と感謝しきりだ。続けて「中村さんは表情が良くて、視線だけでいろんなものを思わせる。顔の寄りを撮りたくなるし、それによって語られないジンの思いが伝わるんです。ジャンボのキャラはおっとりしている感じではありますが、実際の矢本さんはかなりお調子者。お願いしてもないのに色々とやってくれますし、それによって僕の考えていたジャンボが、もっと広がっていった」と称賛を惜しまない。

 印象深いシーンは、「セルシオの車中で、キャストたちが歌っているところ」だそうだ。「歌うことだけ決まっている、という撮影でしたが、そこがすごく面白いシーンになりましたね。うまい具合に(キャストの心に)何かが通っていく、グルーブ感が生まれていくのを感じました」と振り返った。

 「ポンチョに夜明けの風はらませて」は、10月に東京・新宿武蔵野館ほかで公開。