4月1日から9日まで、カナダ・エドモントンで開催された男子カーリングの世界選手権『Ford World Men’s Curling Championship 2017』。来年の平昌五輪の出場権もかかった世界最高峰の大会に、2月の日本選手権を制したSC軽井沢クラブが日本代表として出場した。

 SC軽井沢は、総当りの予選リーグとなるラウンドロビンで5勝6敗。参加12カ国中7位という結果に終わり、上位4チームで行なわれるプレーオフ進出はならなかった。それでも、チームが「最低限のタスク」と位置づけていた、前回大会4位という成績と合わせて得られる(※)五輪切符を獲得した。日本の男子カーリングとしては、1998年長野五輪以来20年ぶり、自国開催以外では初めての五輪出場となる。
※平昌五輪の出場権は、五輪から直近の世界選手権2大会の結果に応じて振り分けられる「オリンピックポイント」で争われた。SC軽井沢は昨年のバーゼル(スイス)大会で4位となって9ポイント、今回のエドモントン大会で7位となって6ポイント、合計15ポイントを獲得。カナダ(28ポイント)、スウェーデンとアメリカ(19ポイント)に次ぐ4位で五輪切符を手にした。


平昌五輪の出場切符を手にしたSC軽井沢 20年前の長野五輪を観戦後にカーリングを始めたスキップの両角友佑(もろずみ・ゆうすけ)は、夢の舞台に到達したことについて聞かれると、「もちろん、うれしいけれど……」と前置きし、今大会で思うような結果を残せなかったこともあって、こう複雑な心境を漏らした。

「(今回の世界選手権では)もっと上(の順位)を目指していたので、今は悔しさのほうが強いかもしれない。あとで(五輪出場のうれしさを)実感するんですかね……」

 SC軽井沢にとって、6度目の世界戦となった今大会。日本男子カーリング史上、最高位だった前回の4位よりも上の順位、つまり彼らはメダル獲得を目標に掲げていた。しかし、初戦のイタリア戦、2戦目のオランダ戦と連勝し好スタートを切ったものの、3戦目の世界ランク4位のスコットランド戦で敗戦。以降、世界カーリング連盟が算出する世界ランキング(※順位は世界選手権前のもの)で、9位の日本より上位に位置する格上との対戦では、3位のノルウェーを除いてことごとく敗れた。

 特に、予選リーグ、決勝トーナメントと13戦全勝で連覇を遂げたカナダには、2-10と大敗を喫した。カナダは、戦術、スイープ、コミュニケーションと、あらゆる面においてまったくと言っていいほどミスがなく、常に磐石のゲーム運びを展開。そんな相手に、SC軽井沢は成す術(すべ)がなかった。セカンド・山口剛史の「シンプルに完敗です」という言葉がすべてを物語っている。

 とりわけ圧巻だったのは、カナダのショットの精度の高さだ。両角友が「おそらく、現時点では世界で一番、投げがうまい」と言えば、リードの両角公佑(もろずみ・こうすけ)も「(カナダは)このあたりというエリアではなく、全選手が”ここ”というポイントに石を置いてくる」と、そのレベルの高さに脱帽した。

 しかし、SC軽井沢の面々からは、焦燥感や悲壮感は伝わってこなかった。ラウンドロビン敗退後、プレーオフを観戦したメンバーは、カナダやスウェーデンといった世界トップのショットをスタンドから改めて見ても、「うめぇなぁ」「完璧だ」「今の(ショット)は特にやべぇ」と、それぞれ称賛の声を上げながら、誰もが笑顔を浮かべていた。

 そう、彼らは2007年のチーム結成以来、常に前だけを見つめ、どんな逆境も跳ね除けてここまで来たのだ。

 世界と同等にやり合うために、攻撃的な戦術を採り続け、「もっとリスクを減らさないと勝てない」と批判されながらも、自分たちのカーリングを貫いて日本の頂点に立った。

 当初、メンバーのほとんどが学生やフリーターだったが、「世界に触れ続けないと(世界で)勝てない」と、カナダ遠征は毎年必ず敢行した。その際、勝てるゲームはほとんどなかったが、「今考えると、それすらも楽しかったかもしれない」と、山口は語ったことがある。

 さらに、「最後に生きるのは、技術」と信じて、練習量は減らさずにアイスの上にずっと乗り続けてきた。そして、そんなチームが歩んできた軌跡を、両角友はやはり笑って振り返る。

「常に挑戦ばかりでしたよ」

 記憶に新しいのは、今年の日本選手権。SC軽井沢は、予選ラウンドで札幌に敗れた。そのときも、「やっと、国内でこういうヒリヒリする試合ができるようになった」と、ライバルの登場を認め、歓迎して笑顔を見せた。そのうえで、プレッシャーを力に換えて、プレーオフではしっかりとリベンジを果たして、5連覇を達成した。

 彼らは、逆境でいつも笑っていた――。

 SC軽井沢にとって、次なる目標は五輪でのメダル獲得となる。今回の世界選手権で見せつけられたカナダとの圧倒的な技術差、世界7位という現在地を考えると、その実現は決して容易なことではない。

 平昌五輪まで、あと10カ月。「それまでに、カナダとの差は埋まるかな?」と、少し厳しい質問を両角友にぶつけてみた。彼は穏やかな笑みを浮かべると、その問いには「イエス」とも「ノー」とも答えず、「がんばります。でも(世界の)中盤(の地位)のままいるのかと言えば、それじゃあ、面白くないですから」とだけ言った。

 カーリングは代謝の激しいスポーツだ。五輪を軸にしたチーム構成は、長くても4年単位でメンバーが入れ替わる。しかしSC軽井沢は、2010年バンクーバー五輪、2014年ソチ五輪と2度にわたって五輪出場を逃しながらも、およそ10年もの間、同じメンバーで地道に強化を続けてきた。

 批判や逆境、強い対戦相手というのは、ある種、彼らが一段と輝くための舞台装置なのかもしれない――振り返れば、そう思える瞬間がある。

 世界選手権の大敗を受けて、平昌五輪でのメダル獲得へ。彼らの最大の挑戦が今、始まろうとしている。

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