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●IoTを新たな成長分野に
4月12日、インテルが家庭向け「宅内IoTプラットフォーム」の実証実験を発表した。パソコン向けCPUでは独占的なシェアを誇るインテルが、なぜこのタイミングでIoTに取り組むのか、その狙いを探る。

○パソコン中心だったインテルがIoTに進出

発表会に登壇したインテル代表取締役社長の江田麻季子氏は、「デバイスが生み出したデータを高速にクラウドに運び、そこから新たなサービスが生まれる。そのサイクルを回していくことがインテルの成長戦略であり、IT業界全体の成長にもつながると信じている」とIoTへの取り組みを語った。

その背景には、パソコン市場の低迷がある。スマートフォンやタブレットの普及が進む中、パソコンの買い換えサイクルは長期化している。パソコン1台ごとにCPUを1個売るというインテルのビジネスモデルは、もはや頭打ちだ。そこで新たな活路を見出そうとしているのがIoTだ。

IoTの世界ではパソコンほど高性能な半導体は求められないものの、莫大な数のデバイスが普及することが見込まれ、需要は大きい。この分野で主流を占めるのはARMアーキテクチャのCPUで、そこに目を付けたソフトバンクが英国ARM社を買収したことは記憶に新しい。

そこでインテルはIoT向けに省電力の「Atom」や、さらに小型の「Quark」プロセッサーを売り込み、新たな成長分野を確保しようというわけだ。

●飛躍に向けて実験開始
○関西電力と協力し、IoTプラットフォームを提供

IoT市場にCPUを売り込むために、インテルが目指しているのが「プラットフォーム」の提供だ。たとえばIoTにより家庭内に安全や便利をもたらす「スマートホーム」のために、さまざまな規格の製品が家庭内に入ってくると面倒なことになる。

そこで、最初に共通のプラットフォームを構築し、その上で多くのデバイスやサービスを連携させるというのがインテルの狙いだ。その中心には「ホームゲートウェイ」デバイスが位置しており、ここに蓄積した家庭内のデータをサービス事業者に提供するというモデルを提唱する。

今回は、その実証実験として関西電力との提携を発表した。2018年3月まで、関西の100世帯に対して「ホームゲートウェイ」と「環境センサー」を提供することでデータを収集。それに基づいて、ヘルスケアや教育などさまざまなサービスを提供していくという実験になる。

「環境センサー」は温度や湿度、CO2、地震センサーなどを備えており、宅内のコンセントに差し込むだけで利用できる。そこから収集したデータをゲートウェイデバイスに蓄積していく仕組みだ。これらはインテルとクアルコムが参加する「OCF」(Open Connectivity Foundation)規格に準拠しており、将来的にはOCF対応デバイスと広く接続する可能性も秘めている。

●狙うはエコシステムの形成
もちろん、ゲートウェイデバイスのCPUは「Atom」、環境センサーは「Quark」と、どちらもインテル製だ。ただし、このセンサーは「リファレンスデザイン」であり、将来的には多くのメーカーが類似のデバイスを作れるよう仕様を公開していくという。

すでに関西電力は、電気やガスの使用量を「見える化」するポータルサイトを運営しており、200万人の会員が利用している。将来的には実証実験で得た知見をサービス開発に活かしたい、というのが関西電力の狙いだ。

○パソコンで成功したエコシステムをIoTでも再現

スマートホームのプラットフォームとして、インテルを選ぶ理由はどこにあるのだろうか。その優位性は、オープンなプラットフォームやセキュリティ、スケーラビリティにあるという。特にスケーラビリティについて江田氏は、「将来的にゲートウェイが多機能化していけば、高性能なCoreプロセッサーも搭載できる」との展望を示した。

江田氏が強調するのが「ビジネスモデルの確立」だ。「IoTのプラットフォームにおける収益性を確保し、継続的に改良していく。そのためにはエコシステムの形成が欠かせない」と、多くの企業を巻き込んでいくことの重要性を語る。

パソコン市場でインテルは、CPUを中心としたエコシステムの形成により大きな成功を収めた実績がある。その成功をIoTでも再現したいというのが、インテルの狙いだろう。

(山口健太)