(写真=藤城貴則)

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 Little Glee Monsterは、前人未到のボーカルグループへとまた一歩近づいている。4月9日に東京都・国際フォーラムAで行なった『リトグリライブツアー 2017 〜Joyful Monster〜』の最終公演は、そんな感想を抱かずにはいられないくらい、発見と充実の多い公演だった。

 リトグリは1月8日、結成当初からの目標であった「メンバー全員が学生のうちに武道館のステージに立つ」ことを達成。そこで一旦落ち着くのかと思いきや、息つく暇もないまま全国ツアーへと旅立った。今思ってみるとこのスピード感は、武道館後に燃え尽きず、よりパフォーマンスを磨きあげるためだったのかもしれない。武道館で彼女らを支えたバンドメンバー、本間将人(Sax/Key/MusicDirector)、坂東慧(Dr)、笹井"BJ"克彦(Ba)、半田彬倫(Key/Piano.)、宮本憲(Gt)、吉澤達彦(Tp)、榎本裕介(Tb)によるアンサンブルも、ツアーを通してより強固なものになった印象だ。

 その成長はライブ冒頭の「JOY」や「My Best Friend」、「私らしく生きてみたい」や「Don’t Worry Be Happy」ではっきりと目に、耳に残る形で現れる。Little Glee Monsterは2016年、2ndアルバム『Joyful Monster』をリリースした。同作はポップスとしての要件はしっかりと満たしながら、「10代の女性ボーカルグループがこんな作品を出すなんて!」という衝撃を覚えるくらい、マニアックな音楽的仕掛けを盛り込んだアルバムだ。ジャズ、ファンク、ソウル的なアプローチが格段に増え、作品を通してグループの音楽偏差値が一気に底上げされたといってもいい。武道館公演でライブ初披露となった楽曲も多く、その時にも充分なパフォーマンスであったことを覚えているが、やはりツアーを通して磨いただけあって、この日はさらにグルーヴィーな歌声やフェイクの入れ方で、聴き手をさらに高揚させる。既存曲の「JOY」や「My Best Friend」すら、以前にも増した迫力を伴っていたことも記しておきたい。

 リトグリのライブには、10代〜20代の女性をはじめとした幅広いファン層が訪れる。一気に背伸びをしすぎることへの慎重さも持ち合わせているため、彼女らへの目配せも欠かせない。先述した楽曲のあとは、リトグリの名を一躍有名たらしめたソニー損保CM曲「Happy Gate」と『めざましどようび』テーマソングの「春夏秋冬」、彼女たちが初期から歌ってきた「HARMONY」と、ポップな面もしっかりと提示した。

 かと思いきや、リトグリは一旦ステージから捌け、バークリー音楽院時代には上原ひろみバンドにも在籍した経験を持つ本間の、2分10秒にわたるアドリブでのサックスソロを挟み、スパンコールの衣装を着た6人が全編英詞のソウルフルな「Catch me if you can」、アーバンな歌謡ポップス「Feel Me」、ビルボードTOP40に入っていてもおかしくないアメリカンな「NO! NO!! NO!!!」を歌い上げる。さらにバンドメンバーによるセッションタイムがスタートし、メンバーがスキャットやフェイクを入れるなど、ビルボードやモーションブルーといったライブレストランにでも来たかのような即興のあるパフォーマンスが繰り広げられた。彼女たちの音楽を若いうちから体験し、気づかぬうちにジャズやファンク・ソウルをその耳と体に染み込ませて育つ10代はなんて幸せなんだろうと思う。

 「Catch me if you can」から「NO! NO!! NO!!!」の流れでもう一つ顕著だったのは、メンバーの歌唱力がいわゆる「上手い」だけではない、別の次元へ到達していることだった。ジャズやソウルのプロシンガーは、声の太さや歌の上手さのほかに、圧倒的な表現力がある。言い換えると演技力に近いものかもしれないが、今のリトグリには、そのスキルが備わっているように感じる。直後にパフォーマンスされた「歓喜の歌(喜びの歌)」を軸に、「うれしい!たのしい!大好き!」(DREAMS COME TRUE)や「じょいふる」(いきものがかり)、ファレル・ウィリアムス「Happy」の日本語詞バージョンなどをミックスしたアカペラメドレーや、「会いにゆく」「小さな恋が、終わった」など音数の少ないバラードでは、よりそのスキルが表れていた。

 ライブの後半は、代表曲のひとつである「人生は一度きり」におけるサビ始まりのアカペラで、芹奈が20秒にわたるロングトーンを響かせるところからスタート。「Hop Step Jump!」、「SAY!!!」、「全力 REAL LIFE」、「好きだ。」と、盛り上げどころもしっかりと用意し、いよいよ本編はあと1曲を残すのみ。

「もっともっと私たちの音楽で作れる笑顔もあるなら、私たちも変わらない気持ちで、変わらない部分も大切に、そして進化していく部分も。どちらも大切にしながら、みなさんと進んでいきたいなと思います」(manaka)

 manakaが放った言葉は、まさにリトグリのライブにおける“今とこれから”を的確に捉えている。変わらないポップさや親しみやすさも大事にしながら、リトグリは着実に進化を遂げている。武道館の本編最後に歌われ、多くの人が涙した「はじまりのうた」が、今は快進撃のファンファーレにすら聴こえた。アンコールでは、「放課後ハイファイブ」「空は見ている」と、彼女たちの代表曲が次々に歌い上げられる。

「この間、わたしたちは美空ひばりさんのライブ(『美空ひばり生誕80周年記念だいじょうぶよ、日本!ふたたび熊本地震・東日本大震災復興支援 チャリティーコンサート』)に出て、その時に思ったんです。ひばりさんはその場所にいなくても、見に来てくださっている心の中に生き続けていたんですよ。その光景を見て、こういうアーティストになりたい、アーティストってこうあるべきと思いました。私たちも、何百年もずっとみんなの心に生き続けれるようなアーティストになりたい」(芹奈)

 そんな芹奈のMCから、ライブはいよいよ最後の楽曲「青春フォトグラフ」へ。芹奈が「私たち、すっごく大きな夢があるんですけど、みなさんにその夢が叶った姿を見せることで勇気や元気や笑顔を与えられればと思っています。これからも、私たちと一緒に夢を見ていきましょう!」と煽り、観客もこの曲のみ撮影OKというアナウンスに合わせ、笑顔で歓声を送り、写真を撮るピースフルな光景が繰り広げられた。

 リトグリの大きな夢とは、「2020年、東京オリンピックの開会式で歌う」、「ワールドツアーをする」という目標だ。冒頭に書いたように、このまま突き進めばリトグリは前人未踏の女性ボーカルグループへと進化するだろう。とはいえ、そのタイムリミットがあと3年というのはあまりに短いのではないかと思っていたが、武道館公演とこの日のライブを見て、それは決して無理難題ではないのだと改めて感じさせられた。

 アンコール後、秋の全国ツアー開催のアナウンスとともに、リトグリが『EARTH, WIND & FIRE JAPAN TOUR 2017』の武道館公演(5月22日)でオープニングアクトを務めることが発表された。こちらが思いもよらないスピードで、リトグリは世界への階段を着実に登っていく。2017年は、よりそんな痛快さを何度も味わうことができる年なのではないか、という予感すら覚えた一夜だった。(中村拓海)