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●災害対応グッズを文具メーカーが…
A4ファイルやテプラでおなじみ、文具メーカーのキングジムは、災害時にオフィスなどに留まって一夜を過ごす際に必要になるものをセットにした「災害備蓄セット」と、帰宅する人に向けた「災害帰宅セット」を作った。なぜ文具メーカーが……。同社の広報に話を聞いた。

○防災関連商品を展開

「災害備蓄セット」には、長期間保存ができる水、非常用の簡易トイレ、水なしで食べられるご飯など、オフィスなどの滞在に必要になるもの6アイテムが詰め合わせされている。

「災害帰宅セット」には、交通機関がストップした際などに自力で家まで帰ることを想定、帰宅途中に必要になりそうなもの、保存水はもちろんのこと、非常用のライトや笛などがセットされている。

両方とも、入っている箱を組み立て直すと簡易まくらになる。人の目が気にならないように、まくらの両端は目隠しできるようになっているほか、まくらの中には貴重品をしまえるようなっている。いずれも東日本大震災の時の教訓を生かして開発された。

文具メーカーのキングジムがどうして、畑違いの食品を売るのだろうか? 実は、同社が、このような防災関連商品を出すのは初めてのことではないのだ。

最初に出したのが、今回のセットの前身になった「帰宅支援キット」。さらに、2014年には、災害時の防寒対策になる着る布団を出している。「東日本大震災の時に実際に会社に泊まりましたが、そのとき会社に泊まるのは至難の業なのだと分かったのです。そこから発案した商品です」。そう話すのは、同社広報の宮崎千恵さん。「着る布団&エアーマットは、すそを折りたたむことで、サイズ調整が可能で、余震が起きた際にはこのまま逃げることができるようになっている。エアマットは、冷たい床の上で寝ることになっても温度が体に伝わらないようにするためだ。

「発売当時、“社蓄セット”とネット上で、話題にしていただいたこともあって、売り上げは好評でした」。(宮崎さん)フリーサイズで大人ならだれでも着用できるが、学校などが避難所なっている場合も多いため、子ども用も出した。食品だけでなく衣服まで売っていたのだ。

●A4サイズがポイント
○“オフィスに足りないもの”を補う商品を展開

東京都では震災後、東京都帰宅困難者対策の条例を定めている。その中で、事業者に対し、従業員向けの3日分の水、食料等の備蓄を推奨している。

「今、備蓄を持っている企業が多ですが、保管場所がないから増やせないということもあるでしょう。そういう時に、足りない部分を補うという発想です。」発災時に倉庫まで取りに行くことが困難なこともあるだろう。そういう時でも、キングジムの防災関連商品はいずれも、A4ファイル大のケースに入っているのでオフィスの棚に書類と一緒に置くことができる。追加のスペースを作る必要性が低いのが利点だという。

なぜこのような、文具とは程遠い防災関連商品を出しているのか。

○A4サイズがポイント

「うちは元々、オフィス環境を改善するための用品というジャンルでエアコンの風を拡散する装置や、デスク周りの商品も開発していました。オフィスで足りていないものはなんだろうと。そういった発想から今回の防災関連商品は、生まれたのです。」と宮崎さん。

防災関連の商品が、A4サイズのケースに入っている訳。それは、同社の主力商品であり、国内シェア1位の「キングファイル」シリーズの売れ筋がA4サイズ。棚をA4サイズに合わせているオフィスが多いであろうことからなのだという。

とはいえ、同社が持っている自社工場は、ファイルを製造する工場のみ。それ以外の商品については、その商品についての技術、知見などを持った企業に協力してもらい、製造を依頼。今回のセットでは、A4の箱のみ自社製造で、中身の食品などは協力企業から買い集めたものだという。「うちの開発部署は、商品企画という趣きが強いです。アイデアを出して、ディレクションする人というイメージ。工場がないからこそ、幅広い商品が出せるのです」と宮崎さん。“A4”“オフィス”というキーワードで防災関連の商品に行き着いたのだ。企業の防災意識の高まりもあり、売れ行きは好評だという。

今後の同ジャンルの商品の展開はまだわからないというが、A4サイズの災害時の支援セットや、ポメラなど、全く思いもつかない、商品を出し続けるキングジム。まだ見ぬ“オフィスに足りないもの”は世に出るのか。今後の商品展開がますます注目される。

(冨岡久美子)