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●市場分析の甘さを指摘
リコーは、4月12日、2019年度を最終年度とする第19次中期経営計画を発表した。2017年4月1日付で、社長に就任した山下良則氏が陣頭指揮を執る新体制での新たな経営方針となる。

その山下社長が、最初のスライドで示したのが、「過去のマネジメントとの決別」であった。

「成長を阻害する遺産や前例は、聖域を設けず見直す」とし、「RICOH再起動」を宣言してみせた。

山下社長が打ち出す「RICOH再起動」では、トップダウンでやり抜く「構造改革」、事業を絞り込み、他社が嫌がるような勝てる戦略展開を徹底する「強みを軸とした成長事業の重点化」、ステークホルダーの信頼を再構築するための「結果を出す実行力と責任」を柱に掲げる。

「社内外に対して、リコーの経営に対する評価、中期経営計画に対する期待をヒアリングしたが、厳しい意見が寄せられた。リコーの存在が疑問視されるという声さえも聞かれた。社長就任前から経営陣の一人として経営を担っていたものとして、自己否定から取り組む覚悟で進める」とした。

○新社長 5つの暗黙の了解を見直す

そして、過去の経営に対して、手厳しく評価する。

「成功体験やオフィスプリンティング事業のリーディングカンパニーという自負から、市場を直視しない自分本位の戦略立案、戦略展開となっていた」と指摘。「コスト構造の抜本的転換を先延ばしにしていたこと、事業ポートフォリオの選別が徹底しておらず、利益がでない、将来性が描けていない事業を止めずに継続したこと、サービスなどの成長事業も、顧客ニーズや自社の強み、競争戦略の視点が弱く、結果として総花的であったことがみられた。また、中期経営計画の目標を達成できないのは、一部の事業や機能において、責任範囲と役割、権限が不明確な部分が存在し、経営に問題があったといわざるをえない」と、具体的な問題点を示してみせた。

「市場環境や顧客を直視し、やるべきことを確実に実行することで、ステークホルダーの期待に応える経営により、信頼を回復する」と、体質改善に強い意思をみせる。

そして、「長く染み着いていた5つの原則を見直す」と意気込む。

リコーには、「マーケットシェア追求」、「MIF(複合機の設置台数)拡大」、「フルラインアップ」、「直売・直サービス」、「ものづくり自前主義」という市場規模拡大を前提とした「5つの暗黙の了解」(山下社長)があった。

●中期経営計画の中身は
リコーは、1990年までは、国内を中心に、MIFを積み上げ、アフター収益を確保。この実績をもとに、新規顧客を獲得し、既存顧客には、アナログからデジタルへの転換、モノクロからカラーへの転換などを進めてきた。さらに、国内成功モデルをベースに、買収によって海外展開を加速。14年連続の増収増益を達成し、2007年度には最高益をあげている。だが、2008年度以降、リコーの稼ぎ頭であるA3MFPの市場鈍化が進んだこと、A4MFPやLPが拡大したものの、サービス事業の利益率や金額が減少。市場規模拡大を前提とした戦略が成り立たなくなってきた。

「需要台数が横ばいのなかで、MIF獲得のための価格競争に売価下落が継続し、各社のカラー化も一巡し、カラー機への置き換えによる規模拡大は困難。しかも、モバイルの浸透やインフラ環境の変化により、働き方が多様化し、ペーパーレス化が加速しており、アフターサービスによる収益に大きな影響を及ぼすことになる。5大原則を利益重視の観点で抜本的に見直す必要がある」と語る。

今回の中期経営計画の基本姿勢もこうした市場変化を捉えたものとしている。

○中期経営計画3つの基本プラン

2017年度からスタートする第19次中期経営計画では、具体的な財務目標として、最終年度となる2019年度までに、構造改革効果で累計1000億円以上、2019年度の営業利益で1000億円以上、3年間のフリーキャッシュフロー(ファイナンス事業を除く)で1000億円以上を目指す。構造改革効果の内訳は、コスト構造改革で450億円、業務プロセス改革で550億円。「構造改革は、いいところは継続しながらも、聖域は設けない。だらだらやるのではなく、早期の効果実現を目指し、施策の前倒しを進める。2017年度には構造改革をやりきるつもりで取り組む」と述べた。

RICOH再起動をベースにした中期経営計画の基本プランは、「構造改革」、「成長事業の重点化」、「経営システムの強化」の3点だ。

構造改革については、「これまでの構造改革では、コスト削減が中心となっていたが、今回の構造改革は、収益構造を変えるものになる点が大きく異なる」と前置きし、「過去にも構造改革はやってきたが、計画は立てたものの、あとは現場に任せきりということもあった。また、置き去りにされている施策もあった。これまでのリコーは、アフター収益で稼いでいたが、これを見直し、事業を細分化することで稼ぐエリアを広げる。また、不採算案件や不採算のMIFがあり、そこを縮小していく。手間をかけている作業をなくすことで本社の固定費削減にも取り組む。同時に、2020年度以降の第20次中期経営計画で成長する事業の種を捲くことにも取り組みたい」とした。

さらに、ものづくり自前主義の見直しと、直販および直サービスの見直しにも乗り出す姿勢を明らかにする。生産拠点の統廃合や消費地拠点の役割の再定義、自社開発機種の絞り込みによる開発費の削減に取り組む。

とくに米国地域においては、「直近の課題である」と位置づけ、現在、8割を占めている直販体制を見直し、ディーラーとの協業強化、インサイドセールスを利用した営業生産性の向上、バックオフィス人材の削減に取り組む考えを示した。

そのほか、新機能を搭載した機種を拡充することで、保守プロセス改革にも着手。「メーカーである技術力を活用し、新たな仕掛けを搭載することで、顧客のダウンタイムの削減とサービスエンジニアの生産性向上を図る。これを活用することで、2019年には20〜30%の生産性向上を図ることができる」という。

なお、カメラ事業については、先頃、約100億円の減損損失を発表し、今後の動向が注目されていたが、「360度カメラのTHETAは、これを軸にサービスを追加することで、事業の立て直しを図る。また、個人向けカメラからは撤退はしないが、機種の品揃えは一部縮小することになる」とし、カメラ事業撤退の一部報道を否定した。

●収益リバイバルプラン
成長事業の重点化では、「自社の強みを再定義し、絞り込んだ上で、その強みに立脚して成長する」とし、「オフィスにおいては、全世界130万社、MIFでは400万台の実績が強みであり、これをプラットフォームと考え、その上に、ワークフローソリューションを提供する。経費精算や議事録作成を簡単に行えるソリューションなどを提供し、ワークフローのデジタル化を進める。一方で、プリンティング技術の強みを生かして、オフセットからデジタルへの移行を進める商用印刷、作像システムや産業プリンタにおいてIJ技術を生かす産業印刷、高速印字プロセス技術に強みを持つサーマルレーザープリンティングに力を注ぐ。事業体制についても、事業の軸を強化し、成長分野に重点投資する」などとした。

経営システム強化については、「これまでリコーは、ステークホルダーに約束したことを守ってきていない。理由はいろいろあるが、実行力に問題があったのは事実だ。いまは、結果につながる責任体制が必要である。私が直接、推進、管理する体制とし、トップダウンでの改革の断行を進める。また、体制の見直しにより、事業軸でのPDCA管理と結果責任の徹底も図りたい」とした。

○リスクに対するリバイバルプランを策定

中期経営計画の見通し前提も、これまでとの違いを感じることができる。

「これまでの改善努力を続けただけでは、2019年度には、約500億円規模の赤字になるというリスクシナリオを想定し、そこからリバイバルプランを策定した」(山下社長)というのが基本姿勢だ。

「オフィスのマシン売価およびアフター売価の下落が継続するほか、商用印刷での企業内印刷の減少などがリスク要素になる」と語る。

実は、昨年、為替影響によって、海外向け製品は値上げを行い、それを最終価格に転嫁した。「転嫁できたのは30〜40%の顧客に留まった。だが、見方を変えれば、30〜40%の顧客はそれを受け入れてくれた。出来たことを増やしていくということが必要である」と、山下社長は語る。

リスクをチャンスにつなげるという発想も、山下社長体制における基本姿勢になりそうだ。

山下社長は、さらに中期的に目指すリコーの姿についても言及し、新たなバリュープロポジションメッセージとして、「EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES」を掲げることを発表した。

「これまでのオフィスを対象にしたビジネスから、現場(ワークプレイス)に対するビジネスを新たな成長機会と捉え、モノ+コトだけでなく、そこにアナリティクスを加えていく。人に焦点を当て、個人、組織に活力を与えたい」とした。

リコーが新体制で挑む中期経営計画は、常識や前例にとらわれず、リコーの体質を抜本的に変えるものになる。そして、山下社長は実行力と結果にこだわる姿勢を示した。そして、2017年度中には、その成果を見せたいと意気込む。山下社長が宣言するようにスピード感を持った改革ができるかどうかが注目される。

なお、同社では、2018年4月には、未来の方向を示す長期ビジョンを発表する予定だという。

(大河原克行)