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○落とし穴・その3:プロンプトとダイアログのずれ

車載インフォテインメントのプロンプトと対話が正しく同期していないと、問題を引き起こすリスクがあります。ドライバーが、いくつかの意味に解釈できるような曖昧な回答をしている場面でこういった状況がよく起こります。例えば、プロンプトが「この番号でよろしいですか? ダイヤルする、と言うか、話し続けてください」と、ドライバーに問いかけたとします。このプロンプトは、ドライバーにイエスかノーの質問を聞き、それから「ダイヤルする」と言うか、追加の番号を言うか、そのどちらかを行うよう指示しています。しかし、初心者のユーザーにとっては、どのように対処するべきか不明瞭です。

ここでの解決方法は比較的簡単です。予測されるユーザーの応答とプロンプトを正しく同期させることです。これは、車載インフォテインメントからの反応と対話全体をより自然に感じるように設計することで実現します。もし、ユーザーがどのように応答するべきか考えこんでしまう場合、それはうまく設計ができていないことを意味しています。同様に、もしプロンプト自体が曖昧で混乱を招くような内容であれば、対話の満足度は低下し、運転の阻害要因を増やしてしまうことになります。

ダイアログ設計者とプロンプト設計者がお互いのデザインの同期を取り、十分なテストを行う必要があります。テストでは、本物のドライバーを使わなくても大丈夫ですが、システム設計や開発に関係していない部外者を参加させることが重要です。

○十分なテストを繰り返し行うこと

頻繁にテストを行っていると、気づかなかった事実が発覚することもあります。例えばアンケート調査によれば、ユーザーは、「コマンドを言ってください(Please say a command.)」といった直接的な問いかけよりも、「どんなご用件でしょう?(How can I help you?)」といったプロンプトを好むことがわかっています。しかし、機能が限定されているシステムでドライバーに対して「どんなご用件でしょう?」といったオープンエンド型の質問をすると、ドライバーの指示がどんなものになるのか、想像もつきません。つまり、プロンプトの文言を検討する際に、親しみやすさやフレンドリーさを重視しすぎると、車載インフォテインメントの機能を超えた動作が指示されるリスクがあります。十分なテストによって、このような問題をあぶり出すことができます。

○落とし穴・その4:エラー表示を過度に避けること

米国自動車初期品質調査(IQS)の調査によれば、ドライバーは車載インフォテインメントで発生するエラーには問題があると感じており、満足していません。特に、エラープロンプトの内容が、ドライバーが希望するタスクの完了の助けにならない場合に、その傾向が顕著です。優れたユーザビリティの実現には、可能な限りユーザーがエラーを起こさない設計が求められますが、同時にエラーが起きてしまった時には、率直かつ役立つように適切に対応することも重要です。この後半の要素がしばしば見落とされています。しかしながら、実際に使われている車載インフォテインメントの一部では、エラーを避けることに注力しすぎるあまり、1つの音声コマンドを実行するたびに確認を求めてくるようなものもあります。このような対策を取ることで、ドライバーはエラーに遭遇する可能性は低くなりますが、果たしてこれは良いことでしょうか?

なぜエラーメッセージが良いことになるのか考えてみましょう。なぜ間違いが起きたのか、それが意味することは何か、そしてどのようにリカバリーするのか、といったことを理解をすることで、人々は間違いから学びます。IQSの調査結果は、そういった学びがあまり行われていないことを示しています。残念ながら、車載インフォテインメントは適切に間違いをドライバーに示していないことが多いようです。適切なエラーの通知の例は、Webサイトのユーザー登録ページに見ることができます。入力欄を見逃した時や、値を間違って入力した時、その入力欄は赤く表示され、適切なフォーマットを示すヒントを提供してくれます。これらのガイドが、正しい結果へとユーザーを導いてくれます。

現在の車載インフォテインメントの中には、ドライバーの指示を理解しているようでいて、実際には誤った理解でコマンドを実行してしまい、非常に不愉快なユーザー体験作り出しているものもあります。ドライバーは、指示したことをきちんと実行してくれる車載インフォテインメントを信頼しますが、このような間違いからは何も学ぶことはできません。

もちろん第一歩としてできる限りエラーを防ぐ努力は必要ですが、必要な時にはエラーを返すことを、ためらうべきではありません。その際、エラーメッセージは簡潔に、しかしドライバーが同じエラーを繰り返さないように学習できるような内容にするべきです。

次に、エラープロンプトは段階的に変化させてください。Nuanceの調査によれば、操作対象のカテゴリ内(もし、操作対象カテゴリの選択前であれば、最上位のガイダンス内)での3段階のエスカレーション戦略が効果的です。最初はドライバーに再操作を促す短いエラープロンプトから始めます(例:もう一度言ってください)。次に、タスク完了に向けてユーザーの言い回しや行動を変えるために、より多くの情報を含んだ長いプロンプトを提供します(例:申し訳ありません、よく聞き取れませんでした。目的地の施設名称や住所をお話ください)。最後に、もしまだエラープロンプトが必要な場合は、最後のエラーメッセージとして、最初からやり直してタスクを完結させるための情報を提供します(例:申し訳ありません、まだ問題があるようですので、もう一度やり直してください。ここでは、施設名称、電話帳の登録先、または住所のいずれかで目的地を設定することができます。準備ができましたら、目的地設定と仰ってください)。

○頑丈で妥当なエラー処理

ユーザーがエラーに遭遇することを極力回避する - このUX設計の基本原則をあまり追求しすぎると、ユーザーからの信頼を失うことになります。ドライバーの車載インフォテインメントに対する期待値は絶えず高まっており、この期待に応え続ける必要があります。頑丈で役立つエラー処理によって、車載インフォテインメントに対するドライバーの信頼と忠誠心を高めることも可能です。

著者プロフィール
Adam Emfield(アダム・エンフィールド)
Nuance Communications
オートモーティブ・ビジネスユニット
プリンシパル・ユーザーエクスペリエンス・マネージャー

約10年間、人間工学、エンジニアリング、コンピュータサイエンスなどの分野を専攻後(修士号取得)、Nuanceにおいて車載機器のユーザーエクスペリエンスおよびユーザビリティに関する研究を主導。
現状の分析を通じて革新的な新しいアイデアを導き、Nuanceのユーザー視点を考慮した提案活動に従事

(Nuance Communications)