カフェ戦争「がんばらないドトール」強さのヒミツ

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木村和久の「プロオヤジ宣言」。今回のテーマは「カフェ戦争」です。スターバックスに「意識高い系」が集まる一方、ドトールコーヒーは「がんばる人の、がんばらない時間」で対抗しています。さらに星乃珈琲店などの「第3の波」も到来。勝敗の行方は――。

■560円の「クラブハウスサンド」はオヤジ向け?

最近の大手カフェは、全国でともに1000件を超えた、2大グループの覇権争いとなっています。ひとつはカフェ界のセカンドインパクト、シアトル系コーヒーの代名詞となっている「スターバックス」。そして黒船を迎え撃つのは、日本が誇る、安くて美味しいコーヒーの代名詞の「ドトール」です。このふたつの巨大カフェチェーンを軸に、日本のカフェ業界の勢力関係と、未来のスタイルを覗いてみたいと思います。

まずは最近、鳥取県にも進出し、ようやく日本全国を制覇したスターバックス。これは実にイメージ戦略が上手な企業です。人気ドラマの『メリーに首ったけ』や映画『プラダを着た悪魔』などにさりげなく登場させ、アメリカ社会に溶け込んでいることを、アピールしています。アメリカじゃ驚異の1万2000店ですぞ。

スタバはイメージがいいので、当然ながら若者に人気です。でも単独のオヤジ客にはさほどウケていません。メニューが豊富過ぎて、ついて行けないのです。春先に売り出した「サンシャインマンダリンマンゴーティーフラペチーノ」って、舌噛んで死にそうになるっす。だいたいフラペチーノという冷たい飲み物が、オヤジにアウトですし。お腹が冷えると、トイレに行きたくなります。スタバでウンコしたら、オヤジを自ら証明したことになりますからね。

そもそもクリームたっぷりの飲み物は、中性脂肪が気になるオヤジにとっては控えたいもの。「実際はそんなにないですよ、だったらソイラテもありますし」という意見もあるけど、オヤジ世代は「脱脂粉乳がトラウマだから、ミルクの代用品と聞いただけで、拒絶しがち」です。とりあえず飲み物は熱い普通のラテで済ませ、じゃ食べ物をチョイスしましょうか。「クラブハウスサンド」を選ぶや、2つの具を、3枚のパンで挟んだ豪華サンドが出て来ました。けどデカ過ぎて、口にやっとほうばれる。若い女のコは食べれないのではないか。てことは、オヤジ向け? このサンドで560円はないでしょう。小諸そばじゃ、カツどんとソバのセットが600円ですぜ。オサレに生きるって、息苦しいことなのね〜。

スタバは、全都道府県を制覇し、これからは可もなく不可もなくの現状維持でしょう。そこを会社側も十分に理解しているようで、季節ごとに新商品を出し、飽きさせない工夫を凝らしています。加えて、店舗のイメージチェンジに躍起で、コラボ店や新趣向店を続々登場させています。中目黒じゃ蔦屋書店とのコラボで、本屋とスタバの境界がなくなって、ドリンクを飲みながら、みんな本を読んでいます。駒沢公園の脇は、ウッディの木目調スタバで、ペット持ち込みも入り口付近じゃ可能。そういう新機軸で、オサレな街に溶け込む作戦を展開しているのです。さすがイメージ戦略に長けているスタバ、今後、シン・ゴジラ並みの「第二形態」の躍進が見ものです。

■ドトールとは「がんばる人の、がんばらない時間」

これに対抗してというか、すでに存在していた日本のカフェの雄は、ドトールコーヒー。店はこじんまりしていますが、狭いながらも楽しい我が家って感じで、苦になりません。立って飲む場合もありますが、立ち食いそばで慣れているオヤジは、至ってラクチン。コーヒー220円、カフェラテ250円の値段は特筆ものです。ここのラテはあらゆるコーヒーチェーンの中で一番旨いと思います。夏場のアイスコーヒーも絶品で、箱買いして事務所の来客コーヒーに使っていた時期もありました。食べ物もジャーマンドッグが220円って、2つ食べても、スタバのクラブハウスサンドより安いのが、これまた嬉しいです。

オヤジ観点から見ても、ドトールは非常にマッチします。なにしろドトールのキャッチコピーは「がんばる人の、がんばらない時間」ですから。ということは、まさしくオヤジ向けに作っているのでしょう。そう考えるとスタバは「オサレな人がくつろぐ、オサレ空間」と、理解すればいいのかも知れません。

そんな2大コーヒーチェーンの狭間で、陰日向に咲くような営業展開をしているのが、「カフェコロラド」です。何を隠そう、ドトールコーヒーが最初にフランチャイズ展開を手がけた業態で、同社の原点ともいうべき店なのです。1972年開業だから、日本のコーヒーチェーンのはしりでしょう。1980年代、中野区や渋谷区に住んでいたので、近所のコロラドを頻繁に利用させてもらっていました。

最近久々に、三軒茶屋のコロラドに行きましたが、昔通りのコーヒーの美味しさに感激ひとしおです。まず低くて広いテーブルが、妙に落ち着きます。スポーツ新聞なども読めて、いくらでもいて下さい感がたまりません。食事類も充実しているし、おやつも拡充、どら焼きがあったから食べましたが、これが結構コーヒーに合う。おやじ心を、巧みに掴んでいますなあ。

カフェコロラドは、同じ時期にオープンした名古屋の雄、「コメダ珈琲」に似ている部分もあります。コメダのほうが規模もでかいし、メニューも豊富ですが、くつろいでもらって、なんでもニーズに応える精神が似ているのです。

そう考えますと、現在のカフェ文化の流れは、こんな感じになっています。

(1)コロラド・ドトール連合の躍進
(2)スタバのセカンドウェーブカフェの隆盛
(3)漢字表記「珈琲店」の逆襲

■六本木の星乃珈琲店「カップルシート」の客層

第三の波は、いろいろ言われていますが、大手チェーン店の展開を考えますと、漢字の珈琲で表す店が増えているのです。

これはコメダ珈琲、星乃珈琲、上島珈琲、椿屋珈琲などなどです。基本的には、昔の日本人がこよなく愛した、「喫茶店」の良さを拡大展開したものでしょう。

いやもっとオサレなカフェがあるという意見もありますが、これはオヤジ目線という記事作りなので、ご了承下さい。

コメダ珈琲店の「なんでもあり主義」

珈琲店はどこも素晴らしいのですが、次世代を担うと言ったら、やはりコメダ珈琲店のなんでもあり主義でしょう。コーヒーの味は普通ですが、広いテーブル、ボリュームのある食事、新聞雑誌、読み放題と居心地は最高です。名古屋のたっぷりモーニングは、90年代、名古屋に通いの仕事があったので、充分熟知しています。ようやくコメダが来たかと喜んでいたのも束の間、近くの三軒茶屋店、宮益坂上店はいつも混んでいて、並ばないと入れません。

コメダのポピュラー化後、おやじは次なるオアシスを探し始めています。そこで登場するのが、星乃珈琲店です。実はここ、「ドトール・日レスHD」の日レスからの出店。ドトールとは、親戚みたいな関係ですか。

星乃珈琲店の六本木店によく行きます。ここは、カップルシートみたいなのがあって、キャバクラのスカウトが、若いコを囲い込みするのに利用しています。実際は対面に座る席で、荷物を置くスペースですが、並んで座っても文句は言われない。狭いから、密着度が増しますぞ〜。

店作りはよく研究してあり、ハンバーグライスプレートなど、食事もしっかりしていて、ゴハンものがあるのが嬉しいです。一方、雑誌も読めるしと、いいとこ取りの急先鋒でしょうか。

今後の流れとしては、あくまで希望的観測ですが、若いコがオサレ疲れを起こして、おやじが好む珈琲店に、大挙流れると思われます。欧米系カフェは、コーヒーよりもエスプレッソ、そしてクリーム系のメニューが売りです。一方、日本の喫茶店は、1970年あたりのジャズ喫茶などでは、豆をそのつど挽いて、一杯ずつ出す、藤岡弘みたいな頑固オヤジのマスターがゴロゴロいました。ですから珈琲の味を本気で比べたら、日本の珈琲が断然美味しいです。恵比寿には「ヴェルデ」という、一杯ごとに出す自家焙煎の喫茶店があり、よく利用していました。というわけで、オヤジ目線の流れでは「本格珈琲店の復活」と、なぜか「カップルシート」って、う〜ん、どっちも、ほぼほぼ魅力的ですね。

(コラムニスト 木村 和久)