ギズモード・ジャパンより転載:巨大な体でも、センシティブな感覚を持っていたようで。

ロマンあふれる太古の地球の支配者、恐竜。中でも恐竜といえばティラノサウルスを想像する人は多いんじゃないでしょうか。近年では、恐竜は羽毛に覆われていたなど、より詳しい生態がわかってきています。そして今回アメリカで発見された化石から、ティラノサウルスの新たな生態が判明。なんと周囲の環境を察知する「第6感」を持っていたらしいんです!

1992年アメリカ・モンタナ州で、あるティラノサウルスの化石が発見されました。その化石はカルタゴ・カレッジの古生物学者Thomas Carr氏により、約7,500万年前に生息していたティラノサウルスの一種、ダストプレトサウルス属の新種と認定され、D. horneri(ダストプレトサウルス・ホーナーリ、Daspletosaurus horneri)と名付けられました。著名な生物学者Jack Horner氏から取られた名前は、直訳すると「Hornerの恐るべきトカゲ」という意味です。

Scientific Reportsに掲載された研究によると、ティラノサウルスの顔は非常に敏感な鱗で覆われており、環境の変化を機敏に感知する「第6感」を備えていたらしいことが判明。獲物の位置や障害物を察知したり、子供を守ったり、さらには仲間とコミュニケーションをとることができたと考えられます。この能力は現代のクロコダイルにも備わっており、収斂進化を示す最たる例ともなりえます。

D. horneriは、他のティラノサウルス属のアパラチオサウルスや、アルバートサウルス、有名なT.レックスと同じく、巨大な頭部とバランスをとるための長い尻尾を持っています。高さは約2.2m、全長は約9mで、全身が細かい鎧のような皮膚と突起に覆われ、頭部は高感度のセンサーを持つ大きく平らな鱗に覆われています。

初めはD. horneriの「第6感」を特定する研究からスタートしたのですが、その能力に起因する特徴が他のティラノサウルス属からも同様に見つかり、D. horneriだけでなく、すべてのティラノサウルスが高感度な鼻先を備えていたらしいとわかったんです。Willey Online Libraryによると2009年にはトリケラトプスのようなツノを持つ恐竜(角竜類)の顔面の特徴に関する研究は行われていたのですが、ティラノサウルスの頭部に関する詳しい研究はこれが初めてとなります。

D. horneriの化石は大人と子供両方の頭蓋骨、下顎、その他の骨が非常に良い保存状態で発見されました。研究者たちは化石を最新の古生物学技術によって、現代のクロコダイルや鳥類、哺乳類と比較分析。さらに生物の骨組織と皮膚の一致に関する先行研究を参照することで、D. horneriの動脈と神経の位置を予測したのです。その結果、多くの動物が顔や下アゴに持っている重要な知覚神経、三叉神経の存在を明らかにしました。

三叉神経は動物によって異なる進化を遂げています。鳥の磁場を感知する能力や、電気を感知するカモノハシのくちばし、敏感な猫のヒゲや象の牙、水中の微妙な振動を感知するアリゲーターの能力など、様々な動物の「第6感」を司っています。ティラノサウルスの場合、三叉神経が顔の鱗に備わっていて、鼻先が一種のレーダーの役割を持っていたと考えられます。

PLOSによれば、恐竜とクロコダイルは2億3000万年前も昔に同じ祖先から枝分かれしています。両種の感覚器官を単純に比較するには、系統樹上でも離れすぎていますし、見た目もだいぶ異なってはいます。それでもCarr博士は両種の顔の生物学的構造は機能的観点から見るとほとんど同じだと断言しています。そのため博士はD. horneriがどのように「第6感」を使っていたのかは、現在のクロコダイルの行動から予測できると考えているのです。

「クロコダイルは高感度の鼻先のおかげで、水のさざ波を感知しての狩猟、巣の温度の計測、仲間と鼻と鼻をこすり合わせる社会的行動、孵化したての子供の安全な運搬をおこなうことができます。高感度の鼻先がワニの日々の生活でどれだけ役立っているかを考えると、同じような器官を備えたティラノサウルスが同じ能力を持っていたと十分に考えられます」とCarr博士は米Gizmodoに説明。

さらに博士は「他の種の恐竜、特に現在の鳥類まで続く系統の恐竜を研究する専門家にも、同様の研究が広がることを願っています」と答え、研究チームの仮説が、くちばしの進化など恐竜の顔の進化の多様性を理解するのにつながると考えているようです。

ところで、もう一つこの研究による朗報があります。2016年に恐竜にくちびるがあるとする説が発表されたのですが、今回のD. horneriの研究で、ティラノサウルスにはくちびるがなかったと結論づけられています。ティラノサウルスの顔の平らな鱗は、クロコダイルのように歯茎と歯列まで及ぶことがわかり「我々の研究でくちびる説は否定された」とCarr博士。この研究のおかげで、今後『ジュラシック・パーク』にくちびるがついた気持ち悪いティラノサウルスが登場することは避けられたみたいです。


source: Scientific Reports via nature.com, Willey Online Library, PLOS
reference: 収斂進化 - wikipedia

George Dvorsky - Gizmodo US[原文]
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