飽食、活動量の低下、有害物質への曝露と、現代の生活は「健康的」とは言い難い。

 不健康生活の最先端をひた走る米国からは、時々思い出したように「原始的だが、健康的な生活を営む民族に学ぼう」という類いの研究報告が発表される。

 先日、世界五大医学雑誌のランセットに「ボリビアのアマゾンで狩猟・採集、農業で自給自足生活を営む“チマネ”の冠動脈疾患の有病率は、わずか3%にすぎない」という調査結果が報告された。

 調査対象は40歳以上のチマネの人々705人で、CT検査で冠動脈の動脈硬化(石灰化)の有無を調べている。

 その結果、85%の人は石灰化を全く認めなかったのである。わずかなりとも石灰化の兆しがあった13%は、石灰化の指標であるCACスコア(以下、CAC)が100未満だった。つまり心臓発作を起こす確率は年に0.4%以下で、心臓に病気を抱えている可能性は極めて低い。残る3%でCACが100を超えたため、冠動脈疾患だと判断されたわけだ。

 75歳以上の高齢者でも、65%はCACがゼロ。わずか4人(8%)が、CAC100以上だった。ちなみに、米国でCACがゼロの成人は14%にすぎず、2人に1人は100を超えている。研究者は「米国人とチマネの人々との血管年齢には24〜28歳もの開きがある」と嘆き節だ。

 冠動脈の石灰化を促進する因子である「悪玉コレステロール(LDL-C)」をみると、チマネの平均LDL-Cは90mg/dL。そして石灰化を抑える働きがある「善玉コレステロール(HDL-C)」は39.5mg/dLだった。自分の春の健診結果と比べてみるといいかもしれない──あまりの開きに落ち込みそうだけれど。

 肥満、高血圧、高血糖が極めて稀であったことは言うまでもない。チマネの人々はごく自然に、大切な血管を老化させない生活を営んでいる。

 とはいえ都市生活者が狩猟・採集生活に戻るなんて、まず不可能。若々しい血管を維持するには、美味しいモノの誘惑に耐え、思い切り身体を動かすしかありません。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)