マイクロアーキテクチャ「Zen」を採用するAMDの新CPU「Ryzen」シリーズに、メインストリーム向けの「Ryzen 5」が登場しました。IntelのハイエンドCPUの半額以下の価格で同等の性能ということでブレイクしている「Ryzen 7」に続いて、Ryzen 5がIntelの牙城を切り崩せるのか、AnandTechが徹底的なベンチマークテストを行っています。

The AMD Ryzen 5 1600X vs Core i5 Review: Twelve Threads vs Four at $250

http://www.anandtech.com/show/11244/the-amd-ryzen-5-1600x-vs-core-i5-review-twelve-threads-vs-four/

◆Ryzen 5とは

「Ryzen 7」シリーズが8コア/16スレッドであるのに対して、「Ryzen 5」シリーズは6コア/12スレッドの1600Xを筆頭に、4コア/8スレッドのモデルまでというラインナップ。「Ryzen 5」というネーミングから分かるとおり、IntelのCore i5シリーズがライバルとなっています。もっとも、Intel Core i5は4コア/4スレッドということで、Ryzen 5にはスペック上から大きなアドバンテージがあり、SkylakeやKaby Lakeなどのメインストリーム向けCore i7をも射程に捉えた、もっともボリュームの大きいCPU市場を狙う製品、と言うのがより正確なところ。ハイエンド市場にRyzen 7で切り込むことに成功したAMDは、Intelが支配するメインストリーム市場を切り崩そうと投入したのがRyzen 5というわけです。ちなみに、Ryzen 5もRyzen 7と同様に倍率ロックはかかっておらず、すべてのCPUでオーバークロックが可能です。



RyzenシリーズのCPUは、共有L3キャッシュで4つのコアが結合された「Core Complex(CCX)」で構成され、CCX間をまたぐとレイテンシ(遅延)が大きくなる構造になっています。8コアのRyzen 7も6コアのRyzen 5もCCXが2基搭載されているのは同じで、6コアの場合、8コアのうち2コア分が無効化されています。



3コア+3コアの2つのCCXで構成される1600Xのコア別の消費電力を示すのが以下の図。1コアのみOCされたXFRの状態だと22.54Wで残りの5コア分を含めて合計22.91W、2コアがフルロードのXFRではそれぞれ20.78Wと20.67Wで残りの4コア分を含めて合計41.91W。なお、3コア以上がフルにロードするとXFRは効かなくなり、6コア/12スレッドを使い切ると約60Wになります。



Ryzen 5シリーズには、TDPに応じて2種類のAMD純正CPUクーラー「Wraith Spire」と「Wraith Stealth」がそれぞれ付属します。ちなみに、Ryzen 7 1700に付属するWraith Spireと違って、Ryzen 5のCPUクーラーはリング状のLEDを搭載していません。



Ryzenシリーズにはメモリの制限があります。現時点でサポートされるメモリは、シングルランクメモリの場合は2枚挿しで2667MHz、4枚挿しで2400MHzまで、デュアルランクメモリの場合は2枚挿しで2133MHz、4枚挿しで1886MHzまでとなっています。なお、ECC、非ECC両方のメモリをサポートしています。



Ryzen 5、Core i5の各CPUをロードさせた場合の消費電力は以下のとおり。省電力性能はCore i5にやや歩があるようです。



◆Core i5との比較

Ryzen 5 1600Xの比較には、Coer i5-7600Kが選ばれています。価格はRyzen 5 1600Xが249ドル(約2万7300円)で、Coer i5-7600Kが242ドル(約2万6500円)とほぼ同等。値付けからAMDが1600Xの仮想敵にi5-7600Kを見立てていることは明らかです。



Ryzen 5 1500XのライバルはCore i5-7500。1600X、1500XいずれのモデルもわずかにRyzen 5の方がCore i5より値段が高いのはAMDの自信の現れといえるかもしれません。



◆ベンチマークテスト

ベンチマークに使うのは、マザーボードがASUS「Crosshair VI Hero」、CPUクーラーがNocture「NH-U12S SE-AM4」、電源がCorsair「AX860i」、メモリがCorsair「Vengeance DDR4-3000 C15 8GB」×2(ただしDDR4-2400で使用)、グラフィックボードはGTX1080、GTX1060、R9 Fury、RX480、RX460などNVIDIAとAMDの代表的な5機種、ストレージはCrucial MX200(1TB)、OSはWindows 10 Pro 64bitという構成。ちなみにAnandTechでは完全にスクリプト化されたCPUベンチマークソフトを実装しており、ボタンクリック1つで各種ベンチマークを計測できる環境だとのこと。



AnandTechは、さまざまなベンチマークソフトを駆使してRyzen 5対Core i5の比較を行っています。スクリプトを使って約100のデータポイントを作るのに8から10時間かけて結果を出したそうです。以下はそのうちの一部を抜粋したもので、Ryzen 5の性能に関しておおよその傾向がつかめるはずです。赤色のグラフがRyzen 5 1600Xと1500Xを示しています。

◆CPUシステムテスト

・Adobe Reader DC

高解像度のPDFファイルを開くベンチマーク。試験を10回繰り返さして得た平均タイムがグラフ化されていて、グラフが短い(数値が低い)方が性能が高いことを示しています。PDFを開く作業はシングルスレッド動作なので、周波数の高いCore i5の方が優勢な結果になっています。



・3D Particle Movement v2.1

3D Particle MovementではRyzen 5の圧勝。



・DigiCortex 1.20

脳のニューロンやシナプスの活動を視覚化するDigiCortexでもRyzen 5 1600X・1500XはCore i5 7600Kを上回ります。



・Agisoft Photoscan 1.0

2D画像を3Dモデルに変換するAgisoft Photoscanでは、1600Xは7600Kに上回りますが、1500Xはほぼ互角。



◆レンダリングソフト

・Corona 1.3

レンダリングソフトCoronaでは、Ryzen 5の完勝。



・Blender 2.78

BlenderもRyzen 5の方が好スコアです。



・POV-Ray 3.7.1

POV-Rayでは1600Xが好結果ですが、1500Xは7600・7600Kに負けています。なお、POV-RayはRyzenリリース後に頻繁に更新されるようになっているので、今後、スコアが変化する可能性が指摘されています。



・Cinebench R15

シングルスレッド性能を示すベンチマークソフトとして代表的なCinebench。メニーコアが不利なCinebenchでは、シングルスレッド性能は予想通りCore i5が優勢です。



他方でマルチスレッドではRyzen 5がCore i5を圧倒しています。



◆Webテスト

・SunSpider 1.0.2

JavaScriptアルゴリズムツールのSunSpiderを使ったテストでは、7600Kがわずかに1600Xを上回ります。



・Mozilla Kraken 1.1

オーディオ処理や画像フィルタなど実使用時により近いJavaScriptベースのベンチマークKrakenでは7600Kが優勢。なお、1500Xが1600Xを上回る結果が出ています。



・Google Octane 2.0

スマートフォンやタブレットなどの電力消費が制限された端末向けのOctaneでは、Core i5がRyzen 5を上回ります。



・WebXPRT

財務ソフトWebXPRTでは7600Kがリード。ただし、Ryzen 5も互角の勝負をしています。



◆エンコードテスト

・7-Zip

圧縮解凍ツール7-ZipではRyzen 5の圧勝。1600Xは7600Kにほぼダブルスコアをつけています。



・AESエンコード

AESコーディングでもRyzen 5はCore i5を圧倒します。



・HandBrake

エンコードソフトHandBrakeを使った、H.264のエンコードでは、1600Xが頭一つ抜け出しており、6コア/12スレッドの性能をいかんなく発揮しています。



同じく4K画質のHEVCのエンコードでも、1600Xは7600Kに優勢。



◆CPU総合テスト

・PCMark8

PCMark8では、1600Xは7600に、1500Xは7500を上回ります。



・Chromium Compile(v56)

Chromiumのナイトリービルドのコンパイルテストでは、Ryzen 5が優勢。



・3DPM v1

3DPMのシングルスレッド性能。やはりコア数の少ないCPUが優位なスコア。



マルチスレッド性能ではRyzen 5の完勝です。



・CineBench 10

CineBenchも同様の傾向です。シングルスレッド



マルチスレッド



◆GPUテスト

ゲーム性能を確かめるGPUテストでは、5種類のグラフィックボードを使ってゲームでのベンチマークを計測しています。

・Civilization 6

Civilization 6をGTX 1080を使ったフルHD(1080p)での平均フレームレート。Ryzen 5がCore i5を上回ります。



4K画質でもやはりRyzen 5がCore i5よりも高性能です。



ミドルレンジクラスのグラフィックボードGTX1060では、ほぼ互角のスコア。



AMDのハイエンドグラフィックボードR9 Furyでは1600Xが7600を圧倒しています。



AMDのミドルレンジグラフィックボードRX480でも同じ結果。



・Rise of the Tomb Raider

Rise of the Tomb RaiderではCore i5が圧勝しています。



・Rocket League DX9

Rocket LeagueもCore i5がRyzen 5を大きく上回ります。



・Grand Theft Auto V DX11

Grand Theft Auto Vではわずかに1600Xが7600を上回ります。



・8Kテスト

Civilization 6を使った8K画質での比較。ややCore i5が優勢です。



各種ベンチマーク結果から、Ryzen 5がライバルのCore i5と同等以上の性能があることが分かります。ゲームでは周波数の高いCore i5が有利なことが多いものの、6コア/12スレッドとCore i5をコア数で50%、スレッド数で200%上回るRyzen 5 1600Xが有利な処理も多く、同価格帯で登場したRyzen 5は、ライバル不在で性能進化に乏しい割に価格が高止まりしていたIntel CPUの強力な対抗馬になりそうです。なお、AMDは2017年中にさらに低価格なRyzen 3や、Zenアーキテクチャ採用のGPU内蔵APU「Raven Ridge」をリリースする予定です。