BIZREACHが運営するウェブメディア「BIZREACH FRONTIER」では、FinTech、VR/AR、人工知能など、最先端の分野にチャレンジし、いま、ではなく未来、「次の時代の当たり前」になるサービスや技術を作らんとする日本の企業を紹介しています。

ライフハッカー[日本版]では、毎週その中から1本の記事をセレクト。前人未踏の領域へとチャレンジする日本企業をご紹介していきます。

人間の大脳新皮質のネットワーク構造を模倣しモデル化した情報処理、ディープラーニング(深層学習、機械学習)を用いることで、コンピューターはデータの特徴を多段階でより深く学習できるようになった。

「ディープラーニングを実際に活用するためには土台作りが大変です。僕らは一般の人が、ディープラーニングを意識せずとも簡単に使えるようなプラットフォームを作りたいと思っています」と語るのは、リープマインド株式会社の松田総一CEO。同社は2012年12月に創業した、ディープラーニングに特化したスタートアップだ。

「僕らは今、チップの開発とソフトの開発をしています。そして、日本を代表する大手自動車メーカーや家電メーカーと組んで普及させていこうと考えています」

1970年代にパーソナルコンピューターが普及したとき、Intelがチップを、MicrosoftがOSを、そしてマシンを作るIBMという巨人が共同し、市場を一気に開拓した。松田氏はAIoT(AI+IoT、「次世代のIoT」を示すリープマインド社内での造語) を普及させるために、同じ事業構造をとるべきだと考え、チップとOS、その両方のシェアを獲得しにいこうとしている、野心的なベンチャー企業だ。

なぜディープラーニングに着目したのか。現在、モノや人にもセンサーを張り巡らせ、そこから得た情報を解析してマーケティングに活用するといった「センサーデータ」が注目されている。しかし、単一的なデータの収集と解析にはそれほど意味がないようだ。「本当に求められているのは自動運転のように人間をさりげなくサポートしてくれる、コグニティブコンピューティングのようなもの」と松田氏は語る。

人間をさりげなくサポートするためにはディープラーニングによる「高度で複雑で、表現が豊富な計算」が求められる。リープマインドが実現したいのは、この高度な計算に基づく次世代のインターフェースだ。そこは機械が何かのきっかけを察知し勝手に動いてくれる、新しい体験ができる世界だ。


自動で「いい感じ」に整う暮らし


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リープマインドのプロダクトには、身の周りのあらゆるデバイスを一元管理するためのプラットフォーム「JUIZ」、ディープラーニング技術をコンパクトに、シンプルに提供するためのデバイス「Black Star」、顔の画像データをアルゴリズム解析してオンタイムでストレスチェックができるミラー型デバイス「Monolith」といった製品がある。インダストリー向けのディープラーニングシステムからからコンシュマー向けのIoTデバイスまで多岐にわたる。それらに共通しているのは「機械が自己判断で認識ができるような世界観」だ。松田氏が目指す未来の日常生活は「よりシンプルになる」という。

「人間って今、考えることもおっくうになってしまうくらいに可処分時間が減っています。それを全部、自動化してみたいです。例えば、朝起きたら部屋の照明が"いい感じ"に点灯する、洗面所に行けば髪を"いい感じ"にセットしてくれる。着る服も、その日のスケジュールに適したコーディネートが提案されるというのも良いでしょう」
「今僕らがやっていることの1つに『スイッチをなくそう』というプロジェクトがあります。現在は暗がりに入ると自動でヘッドライトが点灯する自動車が増えてきましたが、他にも雨が降ってきたからワイパーを動かすといったことは人間がやらなくてもいいと考えています。音楽にしても空調にしても、乗り手が快適に感じる、"いい感じ"に自動的に整っていればいいはずです」

やらなくていいことはやらなくて済み、自分の大切なことやクリエーティブなことに専念できる。この「いい感じ」を実現するためにリープマインドが行っていることが、ディープラーニング技術の研究とあわせた、省スペース化・省電力化だという。

「具体的には計算の量の工夫をしてデータ量を減らす、ネットワークのサイズを圧縮するなどの方法をとります。なかでも、私たちが今着目しているのが『ポケットAI』という概念です」


「ポケットAI」とスマートフォンの親和性


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ポケットAIは、端的に表せば、外付けの「計算機能」だ。分かりやすい例はGoogle Glassだろう。従来のメガネにコンピューターを追加したウェアラブル端末の代表格だったが、惜しくも2015年に個人向け販売が中止された。

メガネというプロダクト上でさまざまなアプリケーションを活用できる画期的な製品として話題をさらったが、一般にはあまり広がらなかった。松田氏は既存のプロダクトに手を加えてしまったことが、普及を難しくした要因だと分析する。

「現在、道具として使われているものは、長い年月をかけて完成されたデザイン美を備えています。長い年月をかけて作り上げてきたものをテクノロジードリブンだけで壊すのは容易ではありません。ですから既存の道具の大きさ、形であることが大切になります。一方で、Snapchat用サングラス『Spectacles』がサンフランシスコで爆発的なヒットを遂げています。これが売れているのは、サングラスのデザインを損なっていないからでしょう。だからこその、外付けなのです」

膨大なデータを計算処理するコンピューターを外付けにし、プロダクトそのものはデザイン美を保つ、そのための「ポケットAI」だという。ひとりひとりが自分の「ポケットAI」を持ち歩く世界観を実現できれば、ウェアラブル端末から切り離せないバッテリー問題も同時に解決される。そして、この「ポケットAI」の思想そのものが、現代人にはフィットしやすいのだという。

「スマートフォンって、僕らが肌身離さず持っているものですよね。ただ、スマートフォンの本質はアプリケーションであって、本体ではありません。手のひらに収まるサイズとはいえ、毎日充電し、持ち歩いている。ここにそのまま『ポケットAI』を搭載すれば、私たちの生活スタイルは変えることなく、世界をより"いい感じ"にできるでしょう」

例えば、体調管理に気を配りたいと考えたとき、「ポケットAI」にその情報をセットしておくと、コンビニエンスストアやレストランでのメニューを選ぶ際に栄養バランスのアドバイスがされたり、ソフトバンク社の感情認識ロボット・Pepperの前で立ち止まればストレスチェックをしてくれたりといったイメージだ。当然、駅の改札機やオフィスのエレベーターなどと「ポケットAI」が接続できれば、さまざまなタッチを省略することができる。こうした未来像に対して、リープマインドが研究開発を進めるチップ技術が役立つと見られている。

いかに体験のストーリーをきれいに作るかが課題になる。エンジニアリングというよりはストーリー作りの段階にきている。

「世の中には素晴らしい要素技術が確立されても、結局何に使うのかが明確にできず、袋小路に迷い込んでしまうものも少なくありません。システムとしてどんなふうに社会に使われるのか、消費者にどんなふうに使ってもらいたいのか。リープマインドは研究機関の顔も持ちながら、商業的な価値まで含めて考えられる組織です。要素技術の研究開発だけでなく、市場に出て、普及するまでをやり遂げることができます」


競合は世界トップクラスの大企業。世界の頭脳が入社し続ける理由とは


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リープマインドの従業員は現在約30人。大半がディープラーニング技術のエンジニアで、技術発信をして学会に論文も発表している。「大企業以外でそうした企業はほぼ見当たらない」と、松田氏は自信をのぞかせる。

事実、リープマインドには世界の一流大学卒の頭脳が集まっており、従業員の出身国は10カ国にも及ぶ。拠点は日本にのみ構えているが、会社のウェブサイトを通じて海外の有名大学出身者などから、入社希望のメールが数多く届くという。

「有名大学の出身者たちは、研究室ではできないことを求めていると感じます。研究者は研究をして自分の研究のロジックを論文にして発表する、要するに論文を書くために研究をしているわけで、学術的に実績を出せばいいとなりがちです。対して私たちは人々の生活、体験を変えたり、全く新しい市場を作ったりといったことまでやりきれる。そこに興味関心を持っていただけているのでしょう。入社動機として『自分の研究が役に立つなら』という声はよく聞きます」

また、世界中から優秀な人材が集まる要因として、グローバルで見ても、リープマインドと同様の事業を展開している企業がほぼ存在しないことも挙げられるという。

「私たちと同様のビジネスを展開していた企業は海外に多くありましたが、FacebookやAmazon、Google、Intelといった企業に買収されました。言い換えれば、彼らがリープマインドの競合にあたるでしょうか(笑)。開発拠点を日本にだけ置いているのも、『日本だからこそできることがあるはずだ』と思っているからです」

リープマインドはストーリーテーリングの重要性を熟知している。どんなに素晴らしい要素技術も、伝え方を誤ればディストピアな未来につながってしまうと考えている。機械自身が学習し、意思決定を下す。いわば「機械が心を持つ」ことに対して、海外では懐疑的な声も多い。

「どんなに完成された、コグニティブな介護ロボットでも、海外では『絶対に嫌だ』という声が圧倒的なのに対し、日本では受け入れても良いという声が圧倒的に高いんです。ロボットに対するアレルギーがないのは、アトムやドラえもんといったロボットと慣れ親しんできた、独自の文化があるからでしょう」

株式会社マイクロアドの渡辺健太郎代表取締役も同様に話している通り、これが日本のAIシーンにおける大きなアドバンテージになる可能性が高いのだという。では、「ポケットAI」は、いつまでに可能になるのだろうか。

「まず、2017年内には基礎を作りたいと考えています。コア技術の課題はある程度クリアしていますが、量産化などに向けてはまだ乗り越えなくてはならない壁も多くあります」

今のライフスタイルを崩すことなく、家電から信号機まで、裏側でいろいろなものがネットワーキングされている、シームレスなデータが集まる世界。私たちにとっての「いい感じ」を整えてくれる世界は、着実に近づいている。

「2020年までにやり切る。それが私の決意です。この世界観ができれば、新しく世界で戦える日本発ベンチャーになれる。そう確信しています」


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