ラジオ大好きアメリカ人、テレビ、スマホより高い利用率 ネット配信は1億7,000万人利用

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 昨今のメディアをめぐる状況について、インターネットの普及によるテレビの視聴率の低迷や、新聞の購読率、若者の読書率の低下などがよく取り上げられる。しかしもうひとつ、忘れてはならないメディアがラジオだ。2011年の東日本大震災のとき、緊急のメディアとして大いに活躍したのはSNSだったが、じつはラジオもそうだった。

 ラジオというと世代により慣れ親しみ方が異なる。あこがれと懐かしさを覚える中高年、馴染みの薄い青少年という構図が思い浮かぶ。若い人の日常生活に音楽はつきもの。その昔、音楽提供の担い手はラジオだった。

 プロモーションビデオ付きで音楽が楽しめる動画サイトや、有料・無料で24時間音楽を配信するサービスなどが登場し、ここでもインターネットが従来のメディアを凌駕しているかに見える。しかし一方で、インターネットを介してラジオも聞けるようになってきている。ラジオ聴取者とそのビジネスの現状を日本と米国で比較した。

◆放送ラジオの聴取率は下降
 NHKが全国の7歳以上の男女を対象に、無作為に訪問調査した結果によると、ラジオの週間接触率(1週間に5分以上聴取した人の率)は、民放とNHKを合わせたラジオ全局で、2006年が44.0%、その10年後の2016年が34.4%と10ポイント近く下降した。年代別にこの推移を比較すると、7〜12歳の小学生から60代にかけてまで、おおむね減少傾向となっている。テレビの視聴すら減るなかで、ラジオはさらに厳しい様子がうかがえる。

「Radiko」をはじめ、全国のコミュニティFMのサイマルラジオ、NHKの「らじる らじる」などインターネット環境でラジオが聴取できる局が増えてきた。専用アプリを使えばスマートフォンでも聞けるので小型ラジオを持ち歩いているのと同じだ。これらを含めた聴取率が気になるが、無料・有料の音楽配信サービスやネット上の音楽BGMサイトなど競合は少なくない。音楽を聴くだけなら、好きなアーティストやジャンルで絞れる音楽配信やBGMサービスのほうが好まれるかもしれない。

◆アメリカではラジオが公共のメディアでは圧倒的な強さを誇る
 アメリカというとハイウェイを走る車にラジオが欠かせないとうイメージがある。音楽のジャンル別やニュース専門の局などがインターネットの登場以前から各地に相当数あり、アメリカ人にとってはひとつの文化でもある。そして今でもラジオはアメリカ人に愛されている。

 調査会社のニールセンによると、NHKと同じ「1週間に5分以上視聴した人の率」(2015年第4四半期結果)は、18歳以上の成人でラジオが93%で最大、以下、テレビ(85%)、スマートフォン(74%)、パソコン(50%)の順となる。これにはデジタル配信されるラジオ局の聴取も含まれている。もともと多数あったラジオ局がインターネットでいつでもどこでも聞けるようになり、さらにリスナーの居住地、属性や好みなどに合わせた音声広告を打てる技術が確立されたことが、視聴者とビジネス拡大の基盤となったようだ。

◆ラジオという情報ソースをうまく利用するアメリカ人
 エディソン・リサーチ社は2000年から12歳以上のアメリカ人のオンラインラジオのリスナー率を調査しているが、それによると2017年調査の月間ラジオリスナーは61%、聴取者推計値は1億7,000万人に達したとされる。年齢別では12〜24歳の利用率が87%、20〜55歳が70%だが、55歳以上になると32%と下がる。インターネットやスマートフォンの利用が前提だからだ。1週間の聴取平均時間は14時間39分(1日約2時間)となり、2017年は過去最長を記録した。またスマートフォンなどの利用者が車のオーディオシステムと連動させている率は2017年で40%となり、スマートフォンを片手にアウトドアでもラジオを楽しんでいる様子がうかがえる。

 2013年のクリア・チャンネル・メディア&エンターテイメントの調査結果によると、66%の回答者がラジオはテレビよりも親近感があり、78%がDJからの最新の情報を頼りにし、80%が新曲の発掘の助けにしているとする。また70%が音楽配信サービスはラジオを代替するものではないと答えているのも興味深い。同じ調査結果を引用したメディア企業のiHeart MEDIA INCでは、CDや音楽ストリーミングサービスとラジオの使い分けはなされていて、十代の63%が2つ以上のオーディオプラットフォームを使用し、その中でもラジオがもっとも人気が高いとしている。好みの楽曲などはCDやストリーミングでコレクションし、新曲や新しいアーティストはラジオで知るという使い分けだ。ラジオが人気の理由はアクセスのしやすさ、タイムリーなニュース配信、交通や天気の情報発信、そしてパーソナリティとの関わりや最新の楽曲を知ることができる点にあると述べている。

 日本ではラジオというと、その昔は深夜放送を聞く若者のイメージがあった。現在ではその世代が中高年になったからか、若者向けの放送プログラムは少ないように思える。変わらない構成で昔ながらのDJがトークするのがリスナー離れを防ぐ手段になっているとの見方もある。テレビ局もそうかもしれないが、思い切った変革には及び腰になる状況なのかもしれない。文化の違いとはいえ、かたやアメリカでは12〜24歳のオンラインラジオの聴取率は87%で、まだリスナーを増やしている。

 日本の若者も音楽は好きなはずなので、ラジオが身近なメディアとして支持される余地はないものだろうか。合間のニュースや番組内の情報は、テレビや新聞と同様に、自分と関わりの薄かった世界との接点となり、長い目でみると役立つものだ。なんでもチョイスができるデジタルメディアの時代だからこそ、そういう偶然の出会いを演出できるメディアの存在価値も高いはずである。