選手引退を発表した浅田真央さんの会見が、12日午前に行なわれました。前日には、NHKが通常番組枠を差し替えてこの会見を生中継することがニュースに。

すでに、ホームページには自身の言葉で引退の気持ちが綴られていて、こちら側としてはもう十分、「お疲れ様でした」という気持ちでいっぱいです。それでも、みんなが「実際に真央ちゃんが話しているところを見たい」と思うのは、彼女の人間性の魅力に尽きると思います。

涙を抑える姿にもらい泣き

彼女は、話しているときの様子が本当に愛らしい。

今回の会見でも、「具体的に引退を考えた時期」から「今の気持ち」「これまでのスケート人生の中でとくに印象に残っていること」や「お友達の反応」まで、止まない記者からの質問にひとつひとつていねいに、ハキハキと答える。さすがに最後の「結婚のご予定は」には目を丸くしていたけれど、終始和やかなムードで「本当にいい娘だなぁ」と、ただただ見つめていたいと思わせる女性です。

休養から復帰。そのときは、体も気持ちもできると思っていたけれど、実際はうまくいかなかったーー。ということはホームページにも書いてありましたが、会見では、2016年12月の全日本選手権が決断のきっかけだったと答えていました。

引退することについて、平昌五輪に出ると公言していたから葛藤もあったけれど、16年の全日本でトリプルアクセルをプログラムに入れたことで「自分らしく終えられたと思っている」とも。だから、悔いはない、と。晴れ晴れとした表情で会見を終えた帰り際、会場に背を向けて涙を抑える姿は切ないものがありました。

無理させていたのなら「ごめんなさい」と謝りたい!

前日、織田信成さんが浅田選手の引退ニュースを受けて生放送中に泣いていたときには、織田さん自身が引退を決断した際の気持ちとシンクロしちゃったのだろうなぁと思ったのです。しかし会見を見ていたら自分までもが、選手になったこともなければ、これまで頑張ってきたものもひとつもないのに、もらい泣き。

素質のある人が努力を重ねて磨き上げた技能を見せてもらえるというのは、本当にありがたいことです。浅田選手の演技は、伸びやかで優雅でダイナミック。特別フィギュアスケートが大好きというわけでもない自分でも、テレビに映っていたらチャンネルを変えないし、浅田選手が氷上を舞っていると、うっとり見てしまいます。

でも、だから無理してでも頑張れというのはおかしな話で、「もうやりきったな」と本人が思ったところで引退なのであれば、よかったなと思います。涙を抑えていたのは、会見が終わって、少し気が緩んだのではと思います。本当はやめたくないとか、やめることになった自分が悲しいとか、そういうことではなく。

スポーツ界での引退会見で「限界です」と涙をこぼす選手の方を見るたび、追い詰められてしまったその人を気の毒に思わずにはいられません。限界までやらなきゃダメだ、みたいな風潮がそうさせるのだと思うと、申し訳なくも感じます。素質もなくも努力もできない外野が追い立ててしまって、本当にすみません……と。

浅田選手も、「ここまで頑張ってこれたのは、応援してくれたみなさんのおかげ」と何度も言ってくれていました。いやいや、外野は応援だけしていたわけじゃなく知った口ぶりで評価したりもしていて、決して絶対にいいときばっかりじゃなかったはず。オリンピックで、あらゆる試合で、1位をとらせてあげたかったなどと、何の権限もなく思っていたものです。それって重荷ですもんね……。それなのに、そんな風に言わせてしまって。「お疲れ様でした」という気持ちと同じくらい「ごめんなさい」です。

それにしても、去年あたりから、一線で活躍されてきた人の引退が話題になることがとても多くなった気がします。芸能界でも、ももちこと嗣永桃子さん、橋本奈々未さん、堀北真希さん、江角マキコさん、そして、清水富美加さん。「引退」という言葉は強く重いものですが、時代の流れなのでしょうか?誰もが自分の人生を見つめ直して、何を今一番大事にしていきたいか、を考えるようになっているのかもしれません。「私も〇〇を引退しようかな」という声を周囲でも聞くようになりました。

先日も、フリーランスのエディターだったアラフォーの知人が、メインで活動していた媒体が休刊になったあと、「廃業することにした。引退する」と宣言していました。

浅田選手レベルの有名人でもあるまいし、フェードアウトでもいいのにわざわざの引退宣言。そこにはどんな理由があるんでしょうか。仕事、婚活、SNS…。 その2では働くアラサー&アラフォーに「最近引退したこと」と「引退宣言する理由」を紹介します。

幼いころ好きだったものを、ずっと好きでいられる人生がいいよね。浅田選手のこれからが、もっともっと素敵なものになることを祈っています。