by David Mello

「笑顔」と一口に言っても分類するといろいろな「笑顔」があり、調べによると、笑顔には「楽しい」という感情以外の理由で浮かぶものの方が多いようです。その中で「本物の笑顔」「真の笑顔」として、目尻が下がって口角と頬が上がった、まさに「にっこり」という表情が「デュシェンヌの笑顔」と呼ばれるのですが、この表情は表情について研究していた学者が被験者の顔に電極を押し当てて、人工的に作った表情でした。

BBC - Future - There are 19 types of smile but only six are for happiness

http://www.bbc.com/future/story/20170407-why-all-smiles-are-not-the-same



「笑顔の研究」では、19世紀のフランスの神経学者デュシェンヌ・ド・ブローニュが知られています。当時の心理学では人間の顔の筋肉と魂は直接つながっているのではないかと考えられていて、デュシェンヌは表情がどのように作られるのかを調べました。

男性の顔に直接電極を当てるデュシェンヌ。被験者となっているのは顔の感覚がない男性だとのこと。



顔の片方にだけ電極を当てることで、顔の左右で別の表情をさせているところ。



実験では、頬が上がり目の周りに「カラスの足跡」のようなしわのある、喜びと幸せにあふれた表情ができあがりました。これが「デュシェンヌの笑顔(デュシェンヌ・スマイル)」と呼ばれるものです。



「デュシェンヌ・スマイル」は「本物の笑顔」と表現されることもあり、「笑顔によって幸せが訪れる」という考えの人からは目指すべき笑顔と考えられているようです。ただし、2014年に「落ち込んでいる時の笑顔は気分をよくするどころか逆効果」という研究結果も発表されているので、「笑顔」を作るのはほどほどに。

「幸せになるために笑う」は逆効果 - GIGAZINE



ちなみに、動物も笑顔を浮かべることがあります。たとえばチンパンジーは唇を上下に開いて歯茎を見せることがありますが、この「笑顔」は恐怖から出るものだそうです。下の写真はオマキザルだそうですが、「笑顔」なのか「恐怖の笑顔」なのか聞いてみたいところ。



by Eric Kilby

「恐怖の笑顔」は人間も見せることがあって、たとえば乳児が笑顔でいるのは「幸せなとき」か「苦しいとき」という研究があります。

また、悲しみや痛みを受け入れるときにも笑顔を浮かべることがあります。これは1924年にミネソタ大学の大学院生だったカーニー・ランディスによる実験結果がよく知られています。

Studies of emotional reactions. I. 'A preliminary study of facial expression."

http://psycnet.apa.org/index.cfm?fa=buy.optionToBuy&id=1926-08202-001

ランディスは同級生や教師らを一室に集め、痛みやショックなど特定の経験が同じ表情を引き出すのか実験を行いました。被験者は座っていたイスの下に花火を置かれたり、感電させられたり、目の前でラットを殺されたりと、いろいろな衝撃を与えられました。その結果として見られたのは、泣いたり怒ったりではなく「笑顔」だったとのこと。

これと同じ「悲しみの笑顔」はスポーツ選手も浮かべることがあり、たとえばアテネ五輪のメダリストの写真を分析したところ、銀メダリストがこの「悲しみの笑顔」を浮かべていたことがわかっています。

なお、「笑顔」がもてはやされるようになったのは、少なくともヨーロッパでは18世紀にパリで「笑顔の革命」が起きてから。それまでは無意味な笑顔は人前で見せるようなものではないという共通認識があったようで、ロシアには「理由なき笑顔は愚考の象徴」という言葉があります。

また、考え方としては今でも生きているらしく、ノルウェー政府が配布している「Living and working in Norway」というリーフレットの「ノルウェーとノルウェー人についての面白い声」という項目には、ノルウェーに長く滞在した人の「あるある」として、「通りで見知らぬ人が笑いかけてきたら、あなたは相手を『1.酔っ払い』『2.正気じゃない』『3.アメリカ人』『1〜3のすべて』だと考える」と書かれています。日本でも見知らぬ人に笑いかけられたらちょっと不気味に思うところですが、わざわざこうして書かれるほどに笑顔が目立つともいえます。

BBCでは、このほかに「恥ずかしい笑顔」「飾りの笑顔」「軽蔑の笑顔」「怒りを楽しむ笑顔」などの存在を挙げています。