写真提供:マイナビニュース

写真拡大

日本マイクロソフトは4月12日、データベース製品のさらなる市場拡大を目的に、ISVパートナーを支援する新施策を発表。3年後までに国内市場で10%以上の拡大を目指す。

日本オラクルは2016年1月にSE1(Standard Edition One)を廃止し、2017年1月にはOracleがライセンス体系を見直して、クラウド環境での利用料を値上げするなど、状況は刻々と変化している。これらのことから、"オラクル離れ"を選択肢に挙げる利用者も少なくない。他方で日本マイクロソフトは2016年4月に、Oracle DatabaseからSQL Server 2016への移行を支援する施策を実施しているが、今回発表した施策も次の一手といえる。

具体的にはISV(独立系ソフトウェアベンダー)パッケージのデータプラットフォームを、Oracle DatabaseからSQL Server 2016/Azure SQL Databaseへ移行、もしくはSQL Server 2016/Azure SQL Databaseへの対応を行うISVパートナーに対して、最大300万円相当の移行作業支援を行う。その中身は移行ツールの提供とコンサルティングサービスがセットになったOMA(Oracle Migraine Assessment)や、PoC/性能検証/開発支援といったサービスが含まれている。その内容はISVパートナー側の状況によって異なるため、日本マイクロソフトと相談した上で組み合わせることが可能だ。

後者のマーケティング施策や、移行・対応したISVパッケージの販売促進活動を日本マイクロソフトが支援するというもの。なお、条件・制約にある「Azure Database Services」は、Azure SQL Database及びAzure SQL DWH関連サービスを指す。ご覧のとおりイベント協賛やテレマーケティング活動、マテリアル作成など条件に合わせた内容を取りそろえているが、このような施策を行う理由として、日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 業務執行役員 本部長 佐藤久氏は"潮目が変わった"と語る。冒頭で紹介した移行施策に対しては80件ほどのプロジェクトが稼働中であり、同時に16社ほどのISVパートナーからは、SQL Serverにも対応したいという多様なデータベースに対応する「マルチDB化」検討に関する問い合わせが増えているという。過去には盤石と思われていたOracle Databaseの一強時代が、IT技術の進化に伴い変わりつつあるのだろう。

日本マイクロソフトが市場調査したところ、ISV+SI(システムインテグレーション)系パッケージ約500の50%がSQL ServerをメインDBとしている。さらに内訳を見ると約30%がOracle Database、約20%が他社製データベースだという。日本マイクロソフトは日本オラクルが持つ約30%の市場をターゲットにして、まずはSQL Serverへの対応。市場需要を踏まえながらIaaSのAzure対応や、PaaSとなるAzure SQL Databaseへの移行をうながしていく。佐藤氏は2020年までの3年間で「(SQL Server/Azure SQL Databaseのシェアを)60%まで拡大したい」と語った。

このような施策を選択する理由の1つがIT市場環境やISVパッケージ市場の変化である。佐藤氏はIDCのレポートを引用する形で、「2020年までにクラウド関連支出は30%まで拡大し、産業特化型クラウドソリューションの成長が顕著になる」と述べていた。ここにOracleのライセンス価格上昇が相まって、非IT系企業がシステム刷新を図る際は産業特化型パッケージのクラウド対応と価格競争力の確保に注目が集まることは火を見るよりも明らかである。このタイミングで日本マイクロソフトがSQL Server 2016や、Azure SQL VM(仮想マシン)、Azure SQL Databaseを訴求しない訳がない。

さらに佐藤氏は自社製品の優位点として、「パフォーマンスとコストの両面で最適な価値を提供」「6年連続、脆弱性が最小のデータベースの評価」「オンプレミスとクラウドのハイブリッドな選択が可能」「多くの機能を追加費用なしで使用可能」「エディションごとにコードを分ける必要がない」「支援施策でデータベース対応・移行が安心&容易になる」と6つのポイントを並べた。

パフォーマンスに関してはSQL Server 2016以降は充分な能力を発揮するようになり、セキュリティは脆弱性への対応などを評価するNIST(米国標準技術局)NVD 2015年10月発表データを元に「データベース内のデータは安心・安全に再利用されなければならない」(佐藤氏)と強調。オンプレミスとクラウドについては、「接続性ではなく一貫性」(佐藤氏)と両者で同一の構造を構築できる強みがあるという。

また、新機能は周知のとおりSQL Serverのバージョンアップに伴って、インラインメモリーやカラムストアなど、多くの新機能を搭載している。ISVパートナーはそのまま利用できるため、自社顧客に対しても高い価値を提供できるだろう。SQL Server 2016は多くのエディション(現在は5エディション)を備えているが、ISVパートナー向けとなるとEnterpriseとStandardに絞られる。両者はメモリーやデータベースサイズなどで制限はあるものの、機能についてはほぼ同一となるため、ISVパートナーは異なるアプリケーションを開発する必要がないという。

今回はISVパートナーとして富士通の「PRO-NES」とSCSKの「eMplex」が紹介された。PRO-NESは中堅製造業向け生産管理システムとして既に20年もの間、アジアを中心にOracle Databaseでビジネスを続けてきたが、「正直なところ過去に何度もSQL Serverへの乗り換えを検討してきたが、当時はオラクルに優位性があったと判断した。だが、ここ数年はSQL Serverの高性能化とコスト的メリットも増加し、顧客からの需要も増えてきたことから、SQL Serverの採用を決断した」(富士通 西日本ビジネスグループ グローバルビジネス本部 ソリューション推進部 部長 大河内渉氏)。

eMplexはCRMの知見を活かした統合顧客基盤として独立したソリューションだが、「顧客データのリアルタイム連携を図る上で重要なのはセキュリティ。SQL Serverなら適切な価格で高度なセキュリティ機能を顧客に提供できる。これまでのOracle DatabaseのみからSQL Serverに対応させるため、マルチDBなど基盤の刷新を図った。顧客に対して複数の選択肢を提案できる」(SCSK 流通システム第三事業本部 流通・CRMサービス部 副部長 西谷友宏氏)と共に自社顧客に対する選択肢の提供と自社製品の強化を基準にSQL Serverへの対応を行っている。

筆者が以前、佐藤氏にインタビューを行った際、「10年後も市場規模は大きく変化しない。だからこそ(産業特化型パッケージのように)今までIT化されていない業種でクラウドを実現するのが重要」と語っていた。現在の日本マイクロソフトにとってデータベースプラットフォームはMicrosoft Azureに次ぐ稼ぎ頭だという。このことを踏まえても、同社によるSQL Serverの訴求戦略は今後もとどまらず、大きく拡大していくだろう。なお、支援施策に関する問い合わせは「SQL Direct」から行える。

阿久津良和(Cactus)

(阿久津良和)