じいちゃん元気で鼻がきく(イラスト・サカタルージ)

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「どうも最近、食べ物がおいしくないと思ったら、においの感覚が鈍くなった」「花見のシーズンなのに、花の香りがしなくなって楽しくなくなった」

こんな悩みを抱えたアナタ、すぐに専門医を診てもらった方がいいかも。嗅覚の衰えは死期が迫っている警戒信号という研究が相次いでいるのだ。

嗅覚の衰えは「炭鉱のカナリア」と同じ体の警戒信号

「40〜50代の嗅覚の低下は死期が近づいたことを意味する?」という怖いタイトルの研究をまとめたのは、スウェーデン・ストックホルム大学のヨーナス・オフロソン准教授らのグループだ。米国老年医学学会機関誌「Journal of the American Geriatrics Society」(電子版)の2017年3月22日号に発表した。

論文要旨によると、65歳以上の高齢者の10人に7人に嗅覚障害があるという。これが40歳以下の若年層では約15%に減る。これまでの研究では、高齢者がにおいを感じなくなる「無嗅覚症」(嗅覚障害)になると、認知症やアルツハイマー病などを発症し、死亡リスクが高まるという報告があった。そこで、中年以降ににおいの感覚が鈍るとどうなのかを調査した。

40〜90歳の男女1774人を対象に、「におい識別テスト」を行ない、10年間追跡調査した。調査期間中に411人(23.2%)が死亡した。年齢や学歴、経済状態など死因に関係する要因を排除して分析した結果、「におい識別テスト」の成績が悪い人ほど死亡リスクが高く、においをほとんど感じない人は、正常な人に比べ、死亡リスクが約20%高かった。

しかも、「無嗅覚症」と認知症やアルツハイマー病などによる死亡率との関係は特にみられなかったという。原因は不明だが、高齢者ではない中年世代の場合は、においの感覚が悪くなると、認知症などとは別の理由で死亡リスクが高まるという。オフロソン准教授は、健康ニュースサイト「HealthDay News」(2017年3月22日)の取材に対し、こう語っている。

「認知症だけでは、嗅覚の喪失と死亡リスクの関係を説明できませんでした。においの感覚は、脳の老化を測る良い指標だと思います。においが分からなくなることは、炭鉱の有毒ガスの発生を知らせるカナリアのように、まだ知られていない脳の危険を知らせる兆候だと思います」

鼻が利かなくなると5年以内に4割が死亡する

実は、この研究と同じように、においの感覚が鈍ると死亡率が高まるという研究がほかにもある。米シカゴ大学のジャヤン・ピント准教授らが科学誌「PLOS ONE」(電子版)の2014年10月1日号に発表した「においが分からなくなると5年以内に5人中2人が死亡する」という怖いタイトルの報告だ。

論文によると、ピント准教授らは57〜85歳の男女3005人に、次のような「嗅覚テスト」を行なった。フェルトペンの先端に入った「ペパーミント」「魚」「オレンジ」「バラ」「革」のにおいを順番にかいでもらい、何のにおいか当てさせるもの。そして、参加者を成績順に次のグループに分けた。

(1)4つ以上においを当てた人=嗅覚は正常(全体の約75%)。
(2)2〜3つ当てた人=嗅覚が鈍い(約20%)。
(3)1つ以下しか当てられない人=無嗅覚(約5%)。

そして、5年後の死亡率を比較すると、(1)の正常な人が約10%、(2)の鈍い人が約19%、(3)の無嗅覚の人が全体の4割の約39%だった。正常な人に比べ、死亡率は4倍も高かった。ちなみに、年をとるほど嗅覚が衰える傾向がみられ、たとえば、57歳の人の64%が5つのにおいを当てたが、85歳の人では25.5%だった。

ピント准教授もBBCの取材に対し、オフロソン准教授とまったく同じことを語っている。

「嗅覚の衰えは、危険が迫っていることを知らせる『炭鉱のカナリア』と同じ、体の早期警戒信号だと思います。がん、脳の病気、心臓の病気、血管の病気、神経の病気、うつ病......。あるいは風邪、アレルギー、鼻腔の損傷とあらゆる可能性が考えられます。直接の死因にはなりませんが、特に中年でなったら要注意です。すぐに医師に診てもらいましょう」