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●小池栄子「その幸福感がうらやましい」
女優・沢尻エリカ主演の日本テレビ系ドラマ『母になる』(きょう12日スタート、毎週水曜22:00〜)から、”母になる”ことを考える連載シリーズ。ドラマでは、3歳の時に息子が誘拐され、9年の歳月をへて息子が目の前に現れるという衝撃の展開から始まるが、登場する3人の女性がそれぞれの立場で葛藤する中で、わが子ではない子どもを7年間育てる「麻子」を演じるのが、女優の小池栄子だ。今回は、等身大の小池が『母になる』に寄せる想いを、心理学者の杉山崇氏にぶつけた。

○嫉妬心を越えた先の心の変化

――小池さんご自身は今、子どもをうみたいという気持ちが高まっている時期とのことですが、それは何かきっかけがあったのでしょうか。

小池:感じたものなので言葉にはしにくいです。結婚した当初は、「すぐに子どもがほしい」と思っていたんですが、それから仕事に燃えちゃって、仕事しか考えられなくなったんですよね。もしかしたら今は、気持ちの中で、自分が落ち着いてきたのかもしれません。周りを見てみると、子どもをうんだ同級生も多いんですよね。自然と子どもと触れ合う機会も、20代の時より増えました。それでまた、「子どもっていいな」と思うようになった気がします。

杉山:周りから刺激を受けてという人も多いですよね。結婚と同じで、「そろそろ私も」と感じる人も多いと思います。

小池:焦るとかではないんですよね。その幸福感がうらやましくて、「見たことがない、感じたことがない景色」を私も見てみたいなというような気持ち。あと、年齢的になんですかね。中高生の男の子を見ると「かわいくてしょうがない」という気持ちに、この数年はなってきました。

――もっと小さい子ではないんですね。中高生というと、反抗期・思春期の最中ということもあり、大人からするとちょっと生意気な年頃にも感じられる時代だと思いますが。

小池:そうですね。でも、「これからこの子たちは、いっぱいいろんな経験をして青春を謳歌するんだろうな。いいな」というような気持ちですね。もう少し自分が若い時であれば嫉妬心が強かったと思うんですが、そんな嫉妬心を通り越して、全てがかわいく感じられているんだと思います。不思議ですよね。年をとったのかな(笑)。

杉山:男子の青臭さがかわいく見えてくるという感じでしょうか。なんとなく分かります。でもそれは、年だけではないと思います。たぶん、小池さん自身の心のステージが上がってきたんだと思います。若い時は自分も発展途上だから、どうしても自分と周りを比べてしまう。でも、自分というものがある程度できあがってくると、周りと自分を比べる必要がなくなってきて、その分、周りの人の見え方が変わってくるということはよくあることです。

小池:そうかもしれません。比べることってなくなってきましたね。30代後半はそんな年なんでしょうか。比べてもどうしようもない、ということに気がつくというか。でも、本当に若い時って比べて焦りますよね。

○現在社会で育てるには「上手に心配」を

――今の現代社会で子どもを育てるにあたり、いろんな問題もあります。小池さんご自身が、子どもを育てることになって感じるかもしれない不安、逆に、今だからできる期待はありますか。

小池:自分たちが子どもだった時に通じたことが今は通じない、ということも多いんだろうなとは思いますよね。ただ今はまだ、母親になって子どもを育てるとしたらどんなことに気をつけないといけないのか、特に勉強しているわけではなく、分からないというのが本音です。

人によってはあんまり考えないで、なるようになる的な考えのお母さんもいれば、すっごくちゃんと準備してケアしてというお母さんもいるじゃないですか。ネット上にいろんなことが掲載されているので調べてしまうとか。

杉山:そんな時に私が必ず言うのは、「上手に心配しましょう」ということです。心配のネタはきりがない。全く心配しないのも問題がありますが、心配を集めてしまうと、それでパニックになってしまいます。

この世界はいい世界ではあるけれど、パラダイスではないので、悪いところもありますよね。その悪いところから子どもを守るために、「ちゃんとここだけは抑えておこう」というところをまず受け止めて、心配しすぎないように上手に心配しましょう、と言っています。

小池:具体的にどうするかは、経験しながら見極めていかないといけないのでしょうか。

●子育てが楽しくなるか辛くなるかのポイントは?
○ネット上にある誰かの心配の痕跡

杉山:そうですね。子どもの発達のプロセスによって心配する内容がいろいろ変わってきます。昔の村社会だったら、近所に子育て経験の豊富な元"肝っ玉母ちゃん"がいて、「ここは心配しなくていいのよ、大丈夫だよ」と教えてくれたものです。ですが、今はそんな安心感を与えてくれるベテランが周りに少なくなっています。

それで、みんな心配になってしまって、心配事をネットに書き込んでと、どんどん心配事が広がってきています。心配しないといけないことがあるのは確かです。だから、心配しないといけないことを知っておけるかどうか、ということなんだと思います。

小池:自分は犯罪を犯すような人にはならなかったから、父・母がやってきたことを最低限守っていればいいかな、という認識しかまだないんですよね。でも、「それじゃ甘いんだよ」「危険もいっぱいあるんだよ」ってことも聞きますよね。お母さんたちがパニックになってしまうのも分かるような気がします。私には、「母親になる覚悟はできている」という想いもありますが、実感しないと分からないという部分も多いですよね。

○「母としての物語」の本質

――実際、今回のドラマの役柄である「麻子」を通じて実感した心の変化はありますか。

小池:幼い子がひとりきりでいて、もし虐待されているという可能性があるとしたら、どうにか救ってあげたいという気持ちになるのも分かるなって思いました。うみたかったけどうめない身体の人だったら、なおさらですよね。そこにまだ執着があったら、これは罪かもしれないけど、わが子として育てたいっていう気持ちは強くなるのかなって。妊娠は女の人にとってすごくデリケートなところなので、立場によって捉え方は違うんだろうなと思います。

杉山:小池さんがそのように感じるのは、ある種の「母としての物語」の始まりなんだと思います。人間はみんな、「自分の物語」を生きています。自分が主人公の物語が何個かあるんです。「母になる」ということは、そのいくつかある物語の中に、「母としての物語」がひとつ増えるんです。この「母親としての物語」というのが強力な物語で、自分が今まで築いていた物語が引っかき回されてしまいます。

子どもって想定通りに成長することはまずないので、想定外なこともあれこれやるんですよね。想定外なことに自分の物語がどんどん引っかき回されて、崩されていく。でも、それが「母としての物語」なんです。この物語を受け止められるどうかが、子育てが楽しくなるか辛くなるかのポイントなんですよね。

小池:受け止められるか、ですか。子どもをうんだ人から「自分の命よりも子どもは大切」という言葉をよく聞きますが、私はまだ、その気持ちが分からないんだと思います。

杉山:私も最初は分からなかったんですが、子どもをもつと分かっちゃうんですよ。もちろん男性でも。

小池:やっぱりそんなものなんですか。申し訳ないんですけど、正直、親のためだって命を投げ出せるかは分からないですし、ましてや、主人なんて論外だと思ってしまいますし(笑)。そんな、「私の命だし」って思ってしまうんですよね。

杉山:「自分という物語がここで断ち切られても、子どもの物語が続けばいい」って思えるんですよね。確かに、私自身はうんでいないんですけどね。

心理学的に言うと、人間の成長プロセスの中に、次世代に未来を託したくなるという欲求があります。通常は、中年期以上にこの欲求が芽生えてきます。若い人を育てようとか、後輩に自分が築いてきた仕事を分け与えようとか、そうした気持ちもそうです。

親になると、人生の黄昏(たそがれ)時が近づいた時に感じるこの感情が、一気にドバーって爆発するんですよね。それが全部子どもに向かうので、「子どものためなら死んでもいいかな」くらいに思ってしまう。不思議ですよね。

小池:不思議ですね。でも、チャンスがあるなら、そんな感情を味わってみたいです。

次回のvol.6では、小池栄子と杉山崇氏の対談後編として、「生みの親」「育ての親」をテーマに語る。

○"母になる"こと

vol.1: 母になって、自分は変わったと思う?
vol.2: 自分に母親として点数をつけるとすれば何点?
vol.3: 母親になって実感した喜びはある?
vol.4: 自分の時間はいずこ……母親になって実感した息苦しさは?
vol.5: 小池栄子が描く「母」、心理学者が語る「母としての物語」
vol.6: 小池栄子×心理学者が語る「生みの親」と「育ての親」の未来

(新田みつる)