<ユナイテッド航空機の席から腕づくで引きずり出された乗客は中国系だったことから、「人種差別!」と中国ネットが大炎上。しかしこの騒ぎの底流には、中国人の黒人差別もある>

4月10日、ユナイテッド航空機に搭乗していたデイビッド・ダオが、シカゴ警察の警官に無理やり席から引きずり出された。その動画が投稿されると、アメリカのインターネットは大騒ぎになった。

それも当然だ。その動画には、人の心に明確に訴えるものがあるからだ。とはいえ、これが中国ではるかに大きな話題になるとは誰も想像できなかったに違いない。動画は数時間のうちに、2大ソーシャルメディアサービス「微博(ウェイボー)」と「微信(ウィーチャット)」を駆けめぐった。動画の視聴回数は3億3000万回を超え(アメリカの国内線を利用したことのある中国人の何倍にものぼる)、怒りのコメントも数十万件に達した。

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彼らはなぜこれほど熱くなっているのだろうか? 明らかなきっかけは人種だ。ダオはケンタッキーに住む中国・ベトナム系の医師で、「私が選ばれたのは中国人だからだ」と叫んだと報じられている。中国の一般市民は、国外で中国人に起きる災難は、すべて人種差別が原因だと考えがちであり、そうした人たちからすれば、この動画は、たきつけに火を投じるようなものだった。

アジア人に対する差別が原因

数週間前にはフランス警察が中国人男性を射殺した事件があったため、オンラインの雰囲気はすでに興奮状態になっていた。今回の事件でも、アジア人に対する人種差別が原因だとする声が大勢を占めている。

その見方は、どちらの事件に関しても、正しいのかもしれない。ユナイテッド航空のケースでは、降ろされた4人の乗客はランダムに選ばれたとされている。だが、ユナイテッド航空については、これまでにもアジア系の乗客が差別的な扱いを受けたという訴えがある。ダオが白人であれば、年配の医師というその立場はもっと重く受け止められ、暴力へのエスカレートは避けられたかもしれない。

だが、そうした人種差別を非難する声の一部には、あまり快くない言外の意味が隠されている。アメリカに住む中国移民のコミュニティーの一部では、問題を白人中心の権力構造のせいにするのではなく、黒人が優遇されているせいだと非難する傾向がある。そうした傾向は、中国本国の国民にも広く浸透している(アメリカに生まれ育った中国系アメリカ人は概して、アメリカの黒人問題の根深さをもっとよく認識している)。

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ジェームズ・パルマー