シカゴ現地時間の2017年4月9日に起こったユナイテッド航空が乗客を手荒く引きずり降ろす出来事は瞬く間に世界中に拡散され、激しい非難の声が挙がっています。報道によると、ユナイテッド航空は自社の社員4人を移動させるために搭乗後の乗客を引きずり下ろしたとも見られており、通常では考えにくい対処方法に批判が集まっています。引きずり下ろされた男性が流血していることからも激しいやりとりがあったことがわかりますが、一方で、このようなオーバーブッキングによる乗客の搭乗拒否は法律で航空会社が認められた行為でもあります。

飛行機のチケットを買う際には、誰しもこのような事態に遭遇することを了承している、という前提で実はお金を払っているのですが、このような事態を避けるためにはどうしたらいいか、そして実際に自分が搭乗を拒否された場合にはどのような対処を取るべきなのかが、飛行機利用者に役立つ情報を提供するサイト「AirHelp」が作成したインフォグラフィック「How to Avoid Being Bumped from a Flight」で示されています。

If Your Flight Is Overbooked, Don't Volunteer to Get Bumped

http://lifehacker.com/if-your-flight-is-overbooked-dont-volunteer-to-get-bum-1722036179

「オーバーブッキング」とは、本来の飛行機の座席数よりも多くチケットを販売することをいいます。乗客がチケットをキャンセルすることで空席のまま飛行機が飛ぶということは、航空会社が本来得られるはずだった売上がなくなり、しかもそのコストを全て航空会社が負担するということになります。その不具合を回避するため、航空会社が実際よりも多くのチケットを販売することは法律で認められているわけです。



搭乗するはずだった乗客が何らかの原因で空港にやってこないことを「ノーショー (No Show)」と呼びます。ノーショーが発生する頻度はデータ化され、航空会社がチケットを販売する際に、どの程度のオーバーブッキングを行うかを決める指標「ノーショーレート」として利用されています。



しかし、ノーショーレートはあくまで統計値なので、場合によってはちゃんと全ての乗客が空港に来てしまい、人数がオーバーしてしまうことがあります。このような時に、乗客の誰かがオーバーブッキングを理由に搭乗を拒否されてしまうという事態が発生します。これは一見するとムチャクチャな行為ですが、きちんと法律で認められており、飛行機のチケットを買う際にはこのリスクを受け入れることに同意していることになっています。



これは、航空会社にとってはとてもよい状況であるといえますが、利用者の側にたってみれば「冗談じゃない」ということにもなってしまいます。



いったいオーバーブッキングはどの程度発生しているのでしょうか?2015年1月から3月の期間では、アメリカでは14万3000人の乗客がオーバーブッキングを理由に搭乗を拒否されています。前年同時期のデータでは13万4000人だったことから、搭乗を拒否される乗客の数は増加傾向にあります。



2015年1月から3月の間で、もっともオーバーブッキングが少なかった航空会社は、上位からハワイアン航空、ジェットブルー航空、ヴァージン・アメリカ航空でした。オーバーブッキング発生率は、乗客1万人あたり0.5人から1.9人という数値が出ています。



一方、同時期で最もオーバーブッキングが多かったワースト3は、下から順にデルタ航空、ユナイテッド航空、サウスウェスト航空の3社。オーバーブッキング発生率は1万人あたり最大で15.1人と、文字どおり桁外れの発生率の高さとなっています。この発生率は飛んでいる路線の性質にも左右されるため、必ずしも企業努力が足らないと言い切ることはできないのですが、それでもこの差は大きいと言えそう。



飛行機の座席が埋まっている率を示す用語に「ロードファクター」というものがあります。日本語で「有償座席利用率」とも呼ばれる言葉で、この数字が大きいほど座席が埋まっている割合が高いことを示します。オーバーブッキング・ワースト1・2をしめるデルタ航空とユナイテッド航空の場合、全便の平均ロードファクターは80%台中盤であり、過去数年で増加傾向にあります。これはつまり、航空会社が座席を多めに販売している、またはより多くの利用者が座席を購入していることを示しており、結果としてオーバーブッキングが発生する確率が上がることにつながります。



ちなみに、日本の航空会社の場合は次のとおり。JALが発表した2017年2月の利用実績では、国際線のロードファクターは81.1%、国内線は68.9%、ANAの同月データでは国際線が75.5%、国内線は65.7%となっています。

それでは、オーバーブッキングによる搭乗拒否を避けるためにはどうすればよいのでしょうか。まず、航空会社が提供している「フリークエント・フライヤー・プログラム」の利用実績を積むこと。これはいわゆる「マイレージサービス」で、その航空会社をより多く利用しているほど優遇され、搭乗拒否の対象者から外されることにつながります。また、ピークの時間帯を避けるのも物理的に搭乗拒否を回避することにつながります。また、チケット購入時やチェックイン時の条件によっては、搭乗拒否を受けることを承諾していることがあります。これを避けるためには、事前にチケット購入時の契約内容をよく確認することが必要です。



それでもオーバーブッキングで搭乗を拒否されてしまった場合、そのような時には「自発的に拒否を受け入れるべきではない」とAirHelpは助言しています。空港のカウンターなどで搭乗拒否の通知を受け、それを受け入れた際には、アメリカの規定では200ドルから400ドル(約2万2000円〜4万4000円)、場合によっては今回のユナイテッド航空の一件のように800ドル(約9万円)の補償を提示されます。しかし、搭乗拒否を断固として受け入れず、それでもなお搭乗できずに代替の便が用意されなかった場合には、最大で1300ドル(約14万円)の補償を受ける権利が発生すると言うのがその理由です。



この金額は、目的地への到着が遅れた時間の長さによって変化します。国内線の場合、1時間未満の場合は補償が受けられませんが、1時間から2時間の遅れの場合は、チケット代金の200%、または最大で650ドル(約7万円)が補償されます。遅れが2時間以上になった場合は、チケット代金の400%または上限1300ドル(約14万円)の補償を受けることができます。補償を受ける方法は乗客が選ぶことができ、現金または航空会社の金券などで受け取ることが可能です。国際線の場合は、それぞれの時間が2倍になります。



ただし、これには4つの除外条項が存在します。「代替便が用意され、到着遅延が1時間以内だった場合」や「チケット発券やチェックイン、予約のリコンファームを適切に行っていなかった場合」、「飛行機の機材変更があり、座席数が少ない機材が割り当てられていた場合」、「座席数60席以下の航空機において、安全上に関する重量制限を理由に搭乗を拒否された場合」の4つのパターンの時には、補償を受けることができないことは留意しておく必要があります。



なお、日本の航空会社でもオーバーブッキングは発生しています。その際には、代替便の振り替え日が当日の場合は1万円、翌日以降は2万円を支払うルールが設けられているとのこと。国土交通省・航空事業課の担当者によると、日本国内でオーバーブッキングが原因の苦情は「これまで聞いたことがない」とのことで、今回のユナイテッド航空のケースのように乗客が安全上の理由以外で強制的に降ろされることは、考えにくいとのことです。

ユナイテッド航空「オーバーブッキング」騒動、日本で起こったら? - 弁護士ドットコム

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