平昌五輪プレシーズンが世界選手権で終わるのを待つかのように、現役引退を発表した浅田真央。だがそのDNAは、日本の女子フィギュアスケーターの間に脈々と受け継がれている。日本の女子勢の活躍があまり目立たなかった今シーズン、予想以上の成長を見せたのが、シニアデビューを果たした17歳の三原舞依だ。


初出場の世界選手権で総合5位となった三原舞依 初出場の世界選手権には、負傷欠場した日本のエース、宮原知子の穴をしっかりと埋める意気込みで臨んだ。だがその重圧に、「考えすぎてしまった」というショートプログラム(SP)では、一番得意とする3回転フリップでミスを出して得点を伸ばせず、15位に沈んだ。その日は悔し涙がなかなか止まらなかったという。

 だが三原は諦めなかった。中野園子コーチの叱咤激励に奮起すると、フリーでは完璧に『シンデレラ』を演じ切り、自己ベストを更新する138.29点をマーク。何と10人抜きの総合5位に浮上してみせた。
 
「この大舞台に出させていただくことがすごく幸せなんだと、SP後に改めて考え直すことができました。SPの失敗があったからこそのフリーだと思って、気持ちを切り替えることができたのが一番の収穫です。フリーでは、今季一番の滑りを見せることができたのでうれしかったです。

 私がこのスケートに出会ったきっかけというか、この大舞台に出られたのは浅田(真央)選手のおかげだと思っていて、その浅田選手のソチオリンピックのときのフリー演技を思い出し、自分もしっかりフリーで挽回してお客さんの心に残る演技をしようと思って、それができました。

 自分のマックスを超えていると思うくらいの点数(138.29点)かなと思うんですけど、SPとフリーの演技をみると、来年オリンピックに出ていける選手になるにはまだまだだと思うので、シーズンオフからしっかり練習していきたいと思います」

 一昨年12月に関節が痛む若年性特発性関節炎を発症して、完治が難しいという難病を抱えながらの競技生活を送る。そんな彼女が第一線で活躍できるのは、不屈の精神力と好きなフィギュアスケートを続けたいという高いモチベーションの賜物と言える。服薬を続け、毎月1回の注射も欠かせないなど、病気とうまく付き合いながら練習に取り組むのは並大抵のことではないはずだ。だが、そんな素振りは微塵も見せず、生真面目に、そしてどん欲に、フィギュアスケートと向き合ってきた。

 今季はグランプリシリーズ(GP)初戦のスケートアメリカで3位といきなり表彰台に上がり、2戦目の中国杯も表彰台まであと一歩の4位だった。目標にしていたGPファイナルには進出できなかったが、全日本選手権でもきっちりと自分の演技をし、初めての表彰台となる3位に。シーズン後半戦にある2つの大舞台の切符を勝ち取ってみせた。

 2月の四大陸選手権ではSP4位からフリーでノーミス演技を披露して自己ベスト更新の134.34点(当時)を出し、合計では日本女子として4人目の200点超えとなる200.85点を叩き出し、初出場初優勝を飾った。フリーの演目『シンデレラ』のように、苦労から幸せをつかむ物語をなぞるような活躍だった。
 
「今季は最初から、スケートに戻ってこられてすごく幸せという気持ちでやらせてもらってきたんですけど、シーズン初めと比べて成長していると言われるのはうれしいです。世界選手権のSPはすごく悔しかったんですけど、フリーではしっかり自分の持っている力をすべて発揮できたかなと思うので、最終的には120%やり切ったかなと思います」

 そう胸を張る三原だが、平昌五輪を控える来季に向けては、大きく殻を破る必要があるだろう。いまのような愛らしいプログラムでは勝てないからだ。自身も「大人の演技をしなければいけない」と言うように、夢の舞台に立つためには大胆なイメージチェンジをする可能性もある。

 バンクーバー五輪金メダリストのキム・ヨナも16〜17歳ごろまでは人見知りのシャイガールだった。それがカナダのトロントに練習拠点を移してからグッと大人っぽくなり、お化粧も目力を強調する黒ラインを描くなどして大変身を遂げ、当時のフィギュア界で話題になった。

「シニアに上がって一番思うのが、表現力で差が開いているところなので、やっぱりもっと大人のスケートができるように、しなやかな動きだったり、強弱や緩急の表現だったりをもっと磨いていけるようなプログラムにしたいです。今後も本当にたくさんのことをしていかないとオリンピックの選手にはなれないと思うので、バレエとか、いろいろな舞台を観に行って、表現の幅を広げていきたいなと思います。
 
 海外の選手はすごく目力があって、手の動かし方ひとつでもセクシーさであったり、大人の表現ができる方が多い。そういうのも身につけていけたらいいと思います」

 採点競技にとってノーミスの演技はもちろん重要だが、そこにさらに何かプラスアルファを加えていかなければ勝負に勝つことは難しい。完璧な演技はそのままに、見る者をあっと言わせるインパクトのある演技構成や衣装、化粧などでも大変身を遂げれば、来季は今季以上の活躍ができるはずだ。

フィギュアスケート特集号
『羽生結弦 平昌への道 ~Road to Pyeong Chang』

 


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