世界2位の富豪、ジェフ・ベゾスは人類最後の希望になるのか?

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米アマゾン・ドット・コム株の好調を受け、同社のジェフ・ベゾスCEOの資産額は先日、ウォーレン・バフェットを抜いて、ビル・ゲイツに次ぐ世界第2位となった。ベゾスは先週、年間10億ドル(約1100億円)相当の自社株式を売却し宇宙開発に投資していると明かし、早くて2018年にも有料宇宙旅行の提供を開始すると宣言した。

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宇宙旅行について夢を膨らませることは長い間、最富裕層の娯楽だった。ベゾスの宇宙開発企業であるブルー・オリジンに加え、リチャード・ブランソンのバージン・ギャラクティックや米マイクロソフトの共同創業者、ポール・アレンのバルカン・エアロスペースがある。また米テスラのイーロン・マスクCEOのスペースXも忘れてはならない。

スティーブ・ジョブスがかつて言ったように「宇宙に打ち跡をつける」ことを目指す、大胆で時にナルシシストすれすれの華やかな億万長者はますます減ってきている。むしろ大半のテック系富豪は冒険よりも身を隠す方に労力を注いでいる。

「ヘリコプターは常にガソリンを満タンにしておくし、空気浄化フィルターをつけた地下シェルターも持っている」。文明崩壊に備えているある投資会社の代表は、米文芸誌ザ・ニューヨーカーにこう語った。また同誌によると、米リンクトインの共同創業者リード・ホフマンは、シリコンバレーの億万長者の半分以上が地下シェルターなど何らかの「終末保険」を準備しているとみている。

その最たる例が、ピーター・ティールだ。米ペイパルの共同創業者でサンフランシスコ在住ベンチャーキャピタリストのティールは、ニュージーランドで事業投資を行って同国の市民権を得たことで論争を引き起こした(具体的な投資額は不明)。ニュージーランドはかつて、世界からの隔離に苦しんでいたが、現在はその「距離」が最大の武器に変わるのを目の当たりにしている。

最悪の事態に備えて極端な自立を目指す運動は、常にニッチな人気を集めてきた。サバイバリストやプレッパーと呼ばれる人々は、食料を備蓄して自然災害に備えたり、人為的な社会崩壊が起きたときのために銃やバイク、金の硬貨を購入したりしている。ジャングルで生き延びるために弓術を学ぶ者もいる。

しかし、かつて少数派だったこの動きが、今や急速に主流化している。テック企業やヘッジファンドの幹部ら、いつ起きるかもしれない社会崩壊から身を守る資金力のある人々が、次々と終末論者らの仲間入りをしているのだ。

21世紀版ノアの箱舟

ドイツ農村地帯の山間部の地中奥深くに、約2万1200平方メートルを誇る巨大な不動産複合施設ビボス・エウロパ・ワン(Vivos Europa One)が存在する。かつては軍関係者と軍用品のための秘密施設として利用されていたが、今は巨大客船のような内装が施されている。

最富裕層が世界の終わりに逃げ込める場所として宣伝される同施設は爆発に耐える地下シェルターで、核の衝撃波や化学戦争、津波、竜巻にも耐えることができる。

共有エリアにはレストランやパン屋、パブ、ワインセラー、アートギャラリー、子どもの遊戯室、ペット預かり所、美容室、映画館、プール、ジムがある。また手術室がついた完全装備の病院や、さまざまな食料・医薬品を保管する倉庫、種子バンク、何百万という動物学的な遺物や遺伝子提供者のゲノムを集めて保管するDNA保存室も用意されている。まるで、クルーズ船運航大手ロイヤル・カリビアンが手掛けた21世紀版ノアの箱舟といったところだ。

このように要塞化し、核兵器から守られたシェルターからは、孤立主義の雰囲気が漂う。まるで最富裕層は人類への希望を全て失い、地下にノアの箱舟を建設することに全精力をつぎ込むことを決心したようだ。

もちろん、迫りくる惨事に対して現実逃避を試みたのは富裕層のサバイバリストが最初ではない。遠い昔、グリーンランドに定住した古代スカンジナビア人も全く同じ行動を取っていた。

グリーンランドのバイキングたちが消えた理由

古代スカンジナビア人がノルウェーからグリーンランドにやって来たのは紀元1000年ごろ。北極海に横たわる広大なその土地が「緑の大地」と呼ばれているのは、入植者の赤毛のエイリークがアイスランドよりも良い印象を与えたいと考えたためだった。

古代スカンジナビア人は牛、羊、ヤギを育てるために干し草を生産。また、長い冬を越すために森の木を切り倒して燃料とし、草の生い茂っていた斜面を家畜の牧草地とした。しかし、彼らはこの地域の唯一の資源であった肥沃な土地を急速に疲弊させていった。

だが解決策は、最初から目と鼻の先にあった。近隣に暮らしていたイヌイットは冬の間、最も確実で数も豊富なアザラシと魚を狩って食料としていた。しかし古代スカンジナビア人はそんなイヌイットを蔑視し、ヨーロッパ式農業を断固として変えなかった。牛は地位の高さの象徴であり、牛肉は高級食だった。

グリーンランドのバイキング社会が崩壊した究極の原因はその経済だけではない。社会的な失敗も大きな原因だった。ピュリッツァー賞を受賞したカリフォルニア大学ロサンゼルス校のジャレド・ダイアモンド教授(地理学)は、同社会の最期の日々を簡潔に「定員超過の救命ボート」に例えている。

干し草の生産が失敗して家畜が死ぬと、飢えた民衆が中心都市に次々と流れ込んだ。都市が蓄えていた最後の食料は同市民を生かすには足りたかもしれないが、「救命ボート」に全員が乗り込もうとした結果、その重みに耐えきれなくなってしまった。

バイキングの文化にもっと適応性があれば、グリーンランドの文明もなんとか持ちこたえたかもしれない。

孤立主義のリスク

古代スカンジナビア人の破滅から学べることは、人類が集合的に盛衰するということだ。人類の行動が自らの首を絞めているという証拠をかたくなに全否定することもできる。その場から逃げ、財産を集めて、世界から自らを隔絶することもできる。シェルターを買って他の裕福な人と一緒に世界の終わりを乗り切ることもできる。

しかし、文明は孤立の中で生き残れない。現実逃避によって偽りの安心感は生まれるかもしれないが、最終的には私たちはみんなつながっているのだ。だからこそ、シリコンバレーの億万長者、そして私たち全員が、逃げ隠れせず、急速に進行する問題に対して急速に進化する技術をもって立ち向かわなければならない。

最終的に破綻したサブプライム住宅ローンにウォール街が何千億ドルという大金をつぎ込めたのであれば、私たちはなぜ、人類の存亡に欠かせない気候学や海洋科学の基礎研究などの資金繰りに苦しんでいるのだろうか。

化石燃料の危険性が確かなのであれば、なぜ使用の継続を検討できるのだろうか。囲碁で人工知能が人間の王者を破れるのであれば、人間が越えるべきでない地球の一線をなぜ人工知能に教えてもらえないのか。

高名な環境科学者、ドネラ・H・メドウズがしばしば口にしたように「私たちは今から始めればぎりぎり間に合う」のだ。現実逃避は避けなければならない。ベゾスやマスクが持つ大胆さは、もし宇宙空間だけでなく地球の抱える問題にも向けられれば、人類最後にして最大の望みとなるかもしれない。