野町 直弘 / 株式会社クニエ

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今年2月に掲載した記事で「世界一シンプルなケーススタディ」について書きました。https://www.insightnow.jp/article/9519
以下内容の抜粋です。

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皆さんはどういう意思決定をしますか。


ある品目(アセンブリの機能部品としましょう)のソーシング(契約)プロセス。サプライヤは歴史的にある特定の一社だけという状況。つまり相見積などの競争化はできません。この特定サプライヤに開発委託もしている、いわゆる承認図部品でありほぼ丸投げの状態です。今回は新しい主力製品に使用する新しい部品のソーシング機会になります。

現行価格は600円、新機種の見積りを取ったところ800円で出てきました。価格差の200円について査定してみたところ、仕様差で200円のアップはほぼ妥当なコスト水準のようです。それに対して社内の目標コストは780円です。つまり仕様差で査定すると800円ですが、それでは社内の目標コストはクリアできません。

ところが、このサプライヤの営業から誤送信されたメールがあなたに配信されました。(誤送信してしまったことはもちろんサプライヤの営業も知っています)そのメールの添付資料は当該部品のサプライヤの社内標準コスト資料だったのです。内容を見たところ当サプライヤのこの部品の社内標準コストは580円ということがわかりました。当該サプライヤとの管理費利益は製造原価に一定比率を掛け合わせる方法で積算しており20%が妥当なラインとしてサプライヤとは握れています。そうすると購買コスト基準で積算すると700円が標準価格となります。

あなたが担当バイヤーだったらいくらでこのサプライヤと購入価格を決めますか?
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今回はこの「世界一シンプルなケーススタディ」の最終結果について書きます。
回答者数は83名。ご協力いただいた皆様有難うございました。

まず決定価格ですが、大きく分けると
700円未満
700円
700円〜780円未満
780円
800円
に分けられますが、

700円未満: 9.6%
700円: 32.5%
700円〜780円未満: 25.3%
780円: 28.9%
800円: 3.6%
という結果になりました。

一番多い回答は700円(32.5%)ですが780円(28.9%)と700円〜780円未満(25.3%)と、この3つの種類の回答が多くどれも3割近くなっています。つまり目標コストは達成し、目標コストそのまま派と標準原価派とその中間派に3分されている状況です。

前回の途中集計段階でも述べましたが、私の事前予想では700円が圧倒的に多いかな、と考えていたので、やや想定外でした。また目標コストである780円を基準として考えているバイヤーが3割近くに上るというのは興味深い点です。

次に回答及びその理由を読み取り、そこから回答を”現犖恐全霆爿¬槁献灰好抜霆爿仕様差基準い修梁 という決定基準毎に層別してみました。

”現爛灰好抜霆燹 38.6%
¬槁献灰好抜霆燹 37.3%
仕様差基準: 7.2%
い修梁勝 16.9%

という状況。決定価格の結果とおおよそリンクしていますが”現爛灰好抜霆爐鉢¬槁献灰好抜霆爐任侶萃蠅4割弱ずつでこの両者で約8割を占めています。ここからも多くのバイヤーが目標コストを意識して意思決定していることが理解できるでしょう。

その他の回答では「700円と800円の中間をとる」という折半的な回答や、中には「580円」理由「現行価格よりも下げる。サプライヤには改善を行ってもらう。」や「600円」理由「今どき新製品で値段が上がるなんてありえません。」なんていう猛者もいました。

ケーススタディですから正解はありません。しかし¬槁献灰好抜霆爐箸硫鹽が全体の4割という結果には驚きを隠せません。今回は回答としての選択肢を作っていなかったのですが、もし他社コスト比較基準という選択肢があったら結果はどうなったでしょうか。おそらく他社コスト比較基準と目標コスト基準、標準コスト基準で3分されたと想像できます。

(これはあくまでも私の考えですが)バイヤーは意思決定に自分の軸を持つべきです。つまり目標コスト基準や他社コスト比較基準や仕様差基準での決定でも標準コストを見極める目は欠かせないのです。実際の現場では目標コストが標準コストよりも厳しい、というのが実態でしょう。それでも標準コストを見極める目は必要です。そういう点からは”現爛灰好抜霆爐任硫然雰萃蠅もっと多くてしかるべきと考えます。

いずれにしてもこのようなシンプルなケーススタディであるにも関わらず答えや考え方、価値観は様々なものです。これは非常に興味深いことだと再認識しました。