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ルネサス エレクトロニクスは4月11日、都内で国内では2014年以来となる大規模なプライベート・カンファレンス「Renesas DevCon Japan 2017」を開催。基調講演にて、同社 執行役員常務 兼 第二ソリューション事業本部本部長の横田義和氏が登壇し、同日披露した組込機器向け人工知能「e-AI」の適用範囲を、自社のすべてのマイコン(MCU)/MPUに拡大するべく2つの技術の実用化を進めていることを明らかにした。

1つ目は「薄膜BOX-SOI(SOTB:Silicon On Thin Buried Oxide)」というCMOSトランジスタ技術。FD-SOIの上に薄膜のSi層を積層することで、トランジスタ素子のバラつきを抑えることを可能としたもので、「しきい値のバラつきがほとんどないので、動作電圧やしきい値電圧を下げることもできる」という。

2015年の組込みシステム開発技術展や、情報処理学会論文誌などで、技術の説明が行われてきたが、簡単に言えば、演算性能をそのままに、消費電力を従来以上に下げることを可能とする技術となる。例えば、Renesas Synergyのローエンドモデルの消費電力は20mW程度だが、SOTBを適用すれば、これが1/10となる2mW程度へと引き下げることができるようになる。

これまでたびたび実用化に向けて開発中とアナウンスしてきた同技術だが、今回のDevConでついに第一弾製品が2018年3月に評価用のサンプリング提供を、2019年3月に量産を開始するというロードマップが明らかにされた。これについて横田氏は「単にトランジスタ技術のみならず、回路などを含めたIP性能のSiでの実証を終えたため」と説明。第一弾製品はマイコンになる見通しだが、「既存製品の低消費電力化ではなく、まったく今までにない製品を実現できるようになる」としており、例えば太陽光や振動などのエナジーハーベストを電源とした高性能マイコン、といった新規分野を切り開きたい、としている。

「プロセスはSOTBで最もエネルギー効率の高い65nmを採用して、自社ファブにて生産を行う予定。これまでの低消費電力化は、バッテリ寿命が長くなります、というのがうたい文句だったが、SOTBはエナジーハーベストと組み合わせることで、電池レスでの動作が可能となり、電池交換が難しい極限の場所での利用なども可能となる」と横田氏は、同技術が生み出す未来を展望する。

一方の2つ目は「DRP(Dynamic Reconfigurable Processor)」と呼ばれる回路構成をダイナミックに切り替え、さまざまな用途に1チップで対応させることを可能とする技術。リアルタイムで回路を切り替えられるFPGAといったもので、古くはルネサス統合前のNEC時代から開発が進められ、たびたび製品化もなされてきたが、回路の高速化ノウハウ(回路自体はC言語で記述が可能)などがあり、なかなか普及するまでには至っていなかった。

そんなDRPを同社はe-AI分野に適用することを同社は今回のDevConにて宣言し、2017年内に何らかのPoC(Proof of Concept)を提供することを明らかにした。このPoCについて横田氏に確認したところ、「DRPをそのまま商品化することは難しい」とのことで、具体的には「実際に評価用のデバイスを提供して、カスタマに、ルネサスが言っている性能が出るのかを検証してもらう」ということのようだ。「DRPは特定の用途を持っているカスタマには良かったが、使いこなしが難しいため、大きく光が当たることは少なかった。しかし、e-AIという市場が生まれて、今後、よりe-AIを活用していく上で、この技術が最適であろうと判断した」とのことで、実際にDRPをe-AIの分野で使ってみたい、というニーズがそこに存在していると見て、事業化を進めることを決めたとする。

また、AI用途で使いこなしてもらうために、「ディープラーニングの推論で利用できる専用ライブラリを用意する」としており、これにより、手軽にディープラーニングの性能を発揮できるようにしたいとしていた。

なお、実際の評価用デバイスについては、マイコンの中にCPUとDRPが組み込まれたコグニティブなASSPマイコンといったものとなる見通しだという。

(小林行雄)