なぜ「友達」を部下にしてはいけないのか

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管理職になったら、「腹心」を持ちたいと考えるのが人の常。では、その部下は「友達」のように気心の知れた人間でいいのだろうか。

■友達関係の上司と部下、お互いをどう思っている?

「つきあいの長いあいつなら、仕事のパートナーとしてもうまくいくはずだ」「前職時代に多くの時間を一緒に過ごしたから、お互いをよく理解しているので話が早い」。このような理由で、「友達」を採用し、部下にした経験のある経営者は少なくないはずだ。

また管理職であっても、「あいつとは話が合うし、プライベートで一緒にいても楽しいから、部下にしたい」「前の部署では同僚として仕事をして仲が良かったので、今度は自分の右腕として活躍してほしい」といった理由で、自分の部下を選抜したことはないだろうか。

一見、うまくいきそうにも思えるが、実際のところはどうだろうか。「仲が良い」ことを理由に部下を選ぶとどんなことが起きるのか。

「友達」「仲が良い」という関係性は、多くの場合お互いが「対等」のときに成立する。そういうと、「いやいや、親しい部下であっても対等ということはない。ちゃんと上司として接してくれる」という反論が聞こえてきそうだ。

部下から対等だと思われる上司とそうではない上司とはどこが違うのか。それは、「上司として恐れられているか否か」という点にある。この「恐れ」の有無は、上司の指示が守られていないときや、設定された目標を下回っているときの態度に現れる。そこで、「仲が良いから許される」という態度をとる部下は、上司と自分が対等だとみなしている。

■「友達部下」がありえない理由

組織運営を進めていくうえで、上司と部下は絶対に対等であってはならない。上司は、チームの目標達成に責任を負う。そのため「ルールを決定することと、部下がルールを守れているかを管理する権限を有する」存在である。また、部下はチームの一員として「上司の設定したルールを守り、実働責任を果たす」存在であるといえる。つまり、上司と部下というのは、明確な上下の関係にあり、対等ということはありえないのだ。

上司はルールを決定する立場として、失敗の全責任を負い、部下はルールに従い実働するということにのみ責任を負う。こうすることにより、初めて責任の範囲が明確になる。

上司と部下が意識上で対等になってしまうと、この責任の範囲が不明確になる。ある案件がうまくいかなかったとする。「君達もよく頑張っていたんだけどね、こっちの指示が悪かったよ」「自分たちが力不足でした。課長だけが悪いわけじゃないですよ」という言葉を掛け合えるのはフランクでよい関係のように感じられるが、何も改善されない。お互いに傷を舐め合い、問題の所在を曖昧にしているだけだ。

上司は指揮命令者として、部下の不足を明確に指摘するという責任がある。部下はそれを認識し、不足を埋めることで成長する。そうやって、チームは勝利に近づくものだが、対等な関係ではこの個人やチームを成長させる働きが止まりやすい。居心地のよい関係を維持するために、「不足を指摘する」という、相手に恐れや不快な思いをさせることが避けられるからだ。

さらに、この対等な関係が一部の部下にだけ当てはめられると、悪影響は広範囲に及ぶようになる。

例えば「社長にとって、昔からの友達であるAさんだけは特別だからな」「課長へのお願いは、仲が良いBさんからの方が通りやすいんですよ」などというように、特定の部下だけが許されるという「特例」の存在を、他の部下たちが認識してしまうのだ。

■それでもデキる友達を部下にしたい!

特例を前提とする上司が発するルールは、もはや、ルールの体をなしていない。そして、ルールがなし崩しとなった組織では、都合が悪いことが起きた際に、部下が「ルールが悪い」「ルールを変えて欲しい」「こういうルールを作って欲しい」という思考を持つようになりがちだ。上司は一部に特例を認めている手前、部下のルール変更、開設の要望に答えなければいけなくなる。当然全てに答えることはできず、不満が生まれ、そのために費やした時間は、生産性のないロスタイムとなる。

「仲が良い」というだけで部下を選ぶことがいかに危険か、おわかりいただけただろうか。しかし一方で、経営者や上司として人の上に立つような人物の友達に、能力が高く信頼できる人間が多いことも事実だ。

何を隠そう私も自分が経営している会社の役員として、前職時代の同期、つまり友達を採用している。それこそ、若い頃は一緒に合コンに行ったような仲だ。しかし、今の私たちの関係は対等ではない。部下と上司という関係の中、彼は私に敬語を使うし、昔のように飲みに行って馴れ馴れしく話をすることもない。

友達を部下として採用する場合は、その関係を断つくらいの覚悟が必要だ。対等な意識が残ると、会社拡大のために果たさなければいけない機能を妨げることになるからだ。また、他の部下に与える影響を考えた時には、日頃のコミュニケーションにおいて、「元・友達」の部下に対しては、ほかよりも距離をとるように意識してもしすぎることはない。

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安藤広大(あんどう・こうだい)
1979年、大阪府生まれ。2002年、早稲田大学卒業。同年、NTTドコモ入社後、2006年ジェイコムホールディングス(現在のライク)へ入社。主要子会社のジェイコム(現在のライクスタッフィング)にて取締役営業副本部長を歴任。2013年、「識学」と出会い独立。識学講師として数々の企業の業績アップに寄与。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、識学を設立。著書『伸びる会社は「これ」をやらない!』を執筆。

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(文=識学 社長 安藤広大)