同報を伝えるソウル新聞ウェブサイトより

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 アメリカの最高裁判所は、現地時間の3月27日、グレンデールに設置された「慰安婦像」(韓国では「平和の少女像」と呼ぶ)を巡り、「歴史の真実を求める世界連合会」(GAHT)の上告請願書を棄却、これにより「慰安婦像」の撤去を求めていたGAHTは苦杯をなめることになったと韓国の報道は伝えている。

 この上告請願を巡っては、日本政府が異例ともいえる「第三者の意見書」を提出しており、「撤去は妥当」だとした政府の努力も水泡に帰した形だ。

 カルフォルニア州グレンデール市に設置された「慰安婦像」は、2013年、韓国国外に初めて設置された「少女像」である。

 目良浩一氏を代表とするGAHTは、2014年から撤去を求める活動を始めた。目良代表は、グレンデールの市議会が、外交的に問題がある慰安婦像の設置を許可したことは、「外交の全権は連邦政府に付与されているはず。憲法違反である」と撤去のための訴訟を起こした。

 1審、2審とも敗訴したものの、最高裁に上告の請願書をあげ更なる法廷闘争を目指しており、2月22日には日本政府から最高裁宛に意見書が届いた。

◆日本政府の意見書の内容とは

 韓国の聯合ニュースによれば日本政府の意見書は、「日本にとり何にも増して重要な事は、州やグレンデール市の様な地方都市がこの慰安婦問題の様な敏感な外交問題に首を突っ込まない事であり、その為に州・市は米国がその外交方針で発信せねばならない統一的方針を侵害させない事である」(GAHT HPより)とし、GAHTの主張を全面的に支持した。

 GAHTは、代表声明文において「残念ながら、米国最高裁判所は、我々のケースを却下しました。理由はわかりません」としたが、カルフォルニア州の地裁、高裁とも「市議会の少女像設置承認の手続きには問題がなかった」と判決を出している。

「慰安婦像」はこのグレンデールの他、アメリカのミシガン州、オーストラリアのシドニーやドイツのヴィーゼント市にも設置されている。一方でアメリカ・ワシントンD.C.にも設置する動きがあったが、いまだ設置許可の下りる場所を見つけられていない。

◆韓国にとっての「慰安婦像」とは何か?

 韓国の報道では「日本の極右団体」と表現されているGHATの主張はさておき、この「慰安婦像」問題は韓国にとっても「引くに引けない」案件になっている。

 言うなれば、「慰安婦像」にとっては、韓国のイデオロギーと化しつつあるのだ。

 国民が選び期待した韓国初の女性大統領は国事と私事の境目を亡くし失脚した。

 彼女を大統領の座から引きずり下ろしたのは、彼女を選んだ国民たち自身であった。韓国経済の隆盛を支えてきた財閥構造も崩壊した。韓国最大財閥の総帥の腕には手錠が掛けられた。かつては、その財閥企業の一員となるため世界一とも言われる受験戦争すら戦ってきたというのに、だ。

 韓国は、かねてより社会運動の機運が高い国家である。

 しかしその運動は、ある意味においては自己否定の様相も呈す。その中で、自己ではない相対する明確な「敵」として「右傾化する日本」(少なくとも韓国での認識はそうである)があり、「慰安婦像」もとい「平和の少女像」はその象徴の最たるものとなっている。

 慰安婦に関する日韓合意は新大統領選出後、10億円の返還をもって白紙化される可能性が高まってきた。このまま日韓双方の溝はより深まるだけなのだろうか……。

<文・安達 夕>