コリアンタウンで「韓国人拒否」の貼り紙を掲示する飲食店

写真拡大

 中国国内でも深刻化する“韓国イジメ”。韓国国内におけるTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備計画への報復で、その実態をジャーナリスト・北嶋隆氏がレポートする。

 * * *
 天安門広場から北東15kmに位置する「望京」。中国最大級のコリアンタウンと聞いてやってきたが、一体どうしたことだろう。街にはハングルの看板が溢れ、韓国食品を扱う店からは大音量のK-POPが絶え間なく流れているのに、韓国人の姿がまるで見当たらないのだ。

 しばし散策し、韓国人が集まる喫茶店で20代の韓国人男性に訊ねた。

「実は、韓国大使館から注意喚起があり、なるべく外出しないようにしているんです。トラブルを避けるため、外では極力韓国語を使わないようにしています。この先どうなるのか……」

 男性は周囲の様子を窺いながら表情を曇らせた。THAAD問題勃発以降、中国社会では韓国人への風当たりがこれまでになく強くなっている。

 駐在員の夫とともに長年この街で暮らす40代の韓国人女性が訴える。

「夫が同僚と一緒に中華料理店に入ろうとしたら、入店を断られてしまいました。『韓国人に食べさせるものは何もない。没有!(メイヨー!)』と冷淡な口調で言われ、やむなく店を出たそうですが、こんなこと初めてだし悔しいです」

 こうした店舗は全体のなかでは決して多くはないものの、コリアンタウンの中にですら、明確に「韓国人拒否」をうたう飲食店があった。

〈本店恕不接待韓国人(当店は韓国人お断り)〉

 こんな張り紙を店頭に掲示するラーメン店の中国人店員は、

「中国人の一人として、愛国心を表明するためです」

 と誇らしげに語る。また、

〈当店ではロッテ製品は一切使用していません。我が国政府の厳正な立場を支持します。国家の利益はすべてに勝るのです!〉

 とのポスターを掲げる韓国料理店店長は語気を強めこう持論を展開した。

「THAADは中国にとって重大な脅威だ。とりわけ用地を韓国政府に提供したロッテは許さない。中国人は一丸となり韓国に圧力をかけ続けるべきだ!」

 韓国料理店で働く中国人が韓国を批判するという若干ややこしい展開だが、「THAAD脅威論」が中国の庶民にも浸透していることは理解できた。取材の道中、50代のタクシー運転手にもこんな話を聞かされた。

「THAADのレーダーは中国東北部を含む領土の大半を見渡すことができる。配備には断固反対だ。韓国は中国を見下しているが、核を2発も撃ち込めば降参するだろう」

 話が物騒になってきたところで、車は運転手が「二度と行くか!」と言っていたロッテマート(ロッテグループが展開するディスカウントストア)に到着。

 現在、中国人の集中砲火を浴びているロッテマートの入り口付近には警察車両が横付けされ、10人近い警察官が周囲を巡回している。2012年の反日デモで起きた放火や略奪などが再発せぬよう、警戒しているのだ。

 広い店内に買い物客はごくわずか。平日の昼間とはいえ、閑散としすぎなのだ。商品の入荷が途絶え、空になったままの棚もある。店員によれば、ロッテのボイコットが中国全土に拡大した2月下旬から、来店客は遠くに行けない近所の老人などに限られるようになり「日に数える程度」まで落ち込んでいるという。

 筆者はこのあと北京市内や郊外で複数のロッテマートを取材したが、建物を警察が囲む物々しさ、店内の閑散とした様子はどの店舗も一緒だった。

 100店舗近い中国のロッテマートは、3月中旬までに半数の55店舗が営業停止に追い込まれている。当局から「不当な価格設定」を理由に行政処分を受けたり、「消防設備の不備」を指摘され強制封鎖されたりした店舗もある。実に分かりやすい「嫌がらせ」だ。

※SAPIO2017年5月号