ロシア空軍の「スホイ35」戦闘機(資料写真、出所:)


「中国とロシアの軍事協力が前例のない水準まで高まり、アジア太平洋地域での米国の安保態勢に新たな脅威を形成しつつある」――米国議会の中国関連の政策諮問機関が、日本の安全保障にも大きく影響する新たな動きを発表した。中国とロシアが軍事面でますます急接近しているというのだ。

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軍事協力の中身とは

「米中経済安保調査委員会」は3月下旬、「中国とロシアの軍事関係=高い水準への動き」と題する調査報告書を発表した。

 同委員会は米国議会の超党派の政策諮問機関で、米国と中国との経済関係が米国の国家安全保障にどう影響するかを中心に活発な調査研究や政策勧告の活動を続けている。中国側の軍事動向を分析することも多い。

 同報告書は、中ロの軍事協力が密接になっている状況を以下のように説明する。

 中国とロシアの両国は1996年から「連携的な戦略パートナーシップ」というスローガンを掲げ防衛や安保の協力を進めているが、ここに来て戦略的な協力をさらに強めるようになった。

 この協力の中核をなすのは、ロシアから中国への兵器の売却である。2006年ごろにその最盛期を迎えたが、その後、中国側がロシアの兵器システムの核心技術を盗用して自主製造を図る傾向が顕著となったため、ロシア側が後退した。だが2012年ごろから両国は再び新たな防衛協力を推進するようになった。

 2017年の現在、中ロ両国の軍事協力はこれまでにない高い水準の規模と質とを示すようになった。その協力の領域は具体的には(1)軍事演習、(2)軍事技術協力、(3)軍部同士の高レベルの接触、の3つである──。

 そのうえで同報告書は、米国のアジアでの安全保障態勢に悪影響を与えるおそれがある中ロ軍事協力の最近の動きとして、以下の具体例を挙げていた。

・ロシアの「スホイ35」戦闘機の中国への売却

(2016年12月に始まった同機の売却はアジア太平洋地域での米軍の航空戦力の優位を崩し、高性能な戦闘機開発に必要な技術を中国軍に与えることとなる。中国軍にとって同戦闘機の確保は国産の次世代戦闘機の開発のための基礎となる)

・ロシアの「S400」地対空ミサイルシステムの中国への売却

(2018年に中国への引き渡しが始まる同システムは、首都・北京の防空態勢を強化するだけでなく、台湾有事の際は台湾空軍への脅威となる。また、南シナ海や東シナ海での有事でも米国や日本の空軍力への脅威を増すことになる)

「S-400」地対空ミサイルのTEL(輸送起立発射機)車両(資料写真、出所:)


・中ロ両国軍の合同軍事演習の複雑化と深化

(両国の合同演習は、戦闘体験のほとんどない中国人民解放軍の近代化という目標追求に対して、とくに深い考察と知識を与える) 

・ミサイル防衛に重きを置いた中ロ両国軍の合同演習の地理的な拡大

(この動きは、中ロ両国が安全保障上の利益の共有を増大させることを意味し、相互支援の拡大も示している。両国の安保利害の連帯は米国やその同盟諸国への挑戦を強化させることになる)

東シナ海での脅威も増大

 以上のように同報告書は、最近の中国とロシアの密接な軍事協力の動きが米国側にとって深刻な脅威の増大であることを強調していた。

 また、その軍事協力の結果、中国が新たに取得するS400地対空ミサイル防空システムが東シナ海で日本に対する明確な脅威となることも指摘している。

 ただし、中国とロシアは日本と米国のような同盟関係にあるわけではない。中国とロシアの安保協力のレベルは確かに向上しているが、同報告書は「両国間の安保関連政策の違いや伝統的な相互不信により、一方の国が外部から攻撃された際に他方が共同防衛という形で支援する総合的な同盟関係の成立に至る見通しは少ない」と分析している。

 だがたとえそうであっても、日本としては、中国とロシアが連帯を強めることは、アジアでの米国の安保上の基本利益を脅かすという点で注意を払う必要があるだろう。

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筆者:古森 義久