日本企業の方が欧米企業よりもチームワークに長けているというのは幻想?(写真はイメージ)


 前回、「働き方改革」を成し遂げるために、そして企業が生産性を高めるためにも個人の仕事やキャリアを「分化」することがカギになると述べた。

(前回の記事)「もうやめた方がいい『社員一丸となって』の掛け声」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49315

 このようにいうと、必ずといってよいほど返ってくる反論がある。「分化」すると、我が国の強みであるチームワークが損なわれるのではないか、というのだ。

 たしかに日本人、日本企業はチームワークを誇ってきた。欧米に対しても個人では勝てないが、チームワークなら負けないというのが半ば常識のようになっている。最近は「絆」や「つながり」といった言葉が、いっそう日本人の美徳を称揚し、自尊心をくすぐる。

 しかし、ここで冷静に見つめ直してほしい。日本人のチームワークや連帯感は、本当に優れているのだろうか?

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同僚を必ずしも信頼していない日本人

 私は年に数回、企業調査のために海外へ行くが、近年、現地でしばしば耳にするのは「日本人は決まった仕事を同じ仲間同士でこなすのは得意だが、新しい仕事に新しいメンバーで取り組むのは不得手だ」という評価である。現地の外国人マネジャーからは「日本人同士いつも一緒にいるが、本当に助け合っているようは見えない」という声も聞かれる。

 それを裏づける調査結果もある。中央大学(当時)の佐久間賢は2001年に、日本企業と欧米企業のホワイトカラー(回答数計1406)に対して同僚との関係について意識調査を行った。

 結果を見ると、「職場の仲間が仕事に行き詰まったり、困っていたりしたら助け合いますか?」「良い仕事をすれば職場の仲間から高く評価されますか?」「あなた自身のノウハウ情報を仲間に進んで教えますか?」という各質問に対し、「イエス」と答えた人の比率はいずれも日本人が欧米人に比べて顕著に低い。日本人は同僚同士が仲間というより、むしろライバルとして意識し合っていることがうかがえる。

 極めつけは「いまの職場では同僚を信頼できますか?」という質問への回答だ。「ノー」という回答は欧米人が5%であるのに対し、日本人は24%にのぼる。逆に「イエス」の回答は半数に及ばない。大半の人は、一緒に仕事をしている同僚を必ずしも信頼していないのである(『問題解決型リーダーシップ』、佐久間賢著、講談社、2003年)。

背景にある、「チームワーク」の変容

 またイギリスのチャリティー団体、Charities Aid Foundation は寄付、ボランティア、支援の3つの指数からなる「世界寄付指数」を発表しているが、2014年の指数を見ると日本は135カ国中、90位と低い。とくに「支援」(見知らぬ人や、支援を必要としているだれかを助けたか?) の指数では134位と、カンボジアに次ぐワースト2位である。

 こうしてみると、「日本人はチームワークが得意だ」とか「連帯感がある」というのはもはや「神話」にすぎないようだ。

 そして近年、大型プロジェクトや大規模なイノベーションなどでは欧米に太刀打ちできなくなっている。

 背後にあるのは、求められるチームワークの変化である。前回述べた個人の仕事と同様、チームワークにもIT化やソフト化が大きく影響しているのだ。

 日本人がこれまで得意としてきたのは、似通った経験、能力、価値観をもつ「同じ釜の飯を食う」仲間同士が力を合わせてがんばる同質的で受け身(言い換えれば運命的)のチームワークである。

 ところがITによって定型的な仕事や受け身の仕事は著しく減少した。そしてソフトの世界では、優れた知識やノウハウは一瞬にしてコピーできるようになった。その結果、同じような知識やノウハウを持つ人はたくさんいらなくなったのである。

 逆に多様な知識、能力、価値観をもつメンバーがそれぞれの強みや専門性を生かして貢献する、プロジェクト方式のチームワークが急速に比重を増している。情報系、ソフト系の企業やベンチャー型の企業のなかには、ほとんどの仕事をこうしたプロジェクト方式で行っているところもある。

 つまり、「同質性を基本にしたチームワーク」から「異質性を基本にしたチームワーク」へとチームのあり方が変化したのである。

 そして大事な点は、後者においては個人の「分化」が不可欠だということである。

 なぜなら、一人ひとりの専門性や個性を尊重して採用することが必要だし、仮にそうした人材を採用しても、これまでのような集団主義的な働き方、育成方法、職場環境のもとではすぐに同質化してしまうからである。真の意味での「ダイバシティ・マネジメント」が必要になるわけである。

「分化」すると積極的な協力が生まれる

 興味深いのは、「分化」すると社員が利己的に行動したり、組織がバラバラになったりするどころか、むしろ他人を支援し、積極的に連帯しようという態度が生まれることだ。

 極端な例として、社員の給料を個人単位の歩合制にしたところ、社員同士が進んで協力し合うようになったという会社がある。また職場に外国人や非正社員が入ってきて、よどんでいた空気が一掃され、人間関係がよくなったという話も聞く。とくに異質なメンバー同士だと、だれもが主役になり、周りからたたえられるチャンスがあるし、それぞれがチームにとって不可欠な存在なので団結力も強くなる。

 チームワークのあり方について、根本的に考え直す時期にきていると言えよう。

(参考文献)『なぜ日本企業は勝てなくなったのか -個を活かす「分化」の組織論』(太田肇著、新潮社、2017年3月刊)

筆者:太田 肇