その愛くるしさに癒され、家族の一員として愛されるペットたち。そんな彼らの健康をサポートしてくれるのが動物病院だ。飼い主としては、とても頼りになる存在だが、通常診療や夜間診療、手術から病院経営まで、さまざまな仕事を少人数でおこなう病院が多い。

とくに、大規模な病院は患者数も多く、情報の共有は必須。カルテの電子化によって迅速な対応が可能になるのだ。また、ペット保険のレセプトを扱う際にも、電子カルテの方が利便性が高いため、小規模病院にも電子カルテを導入する動きが広がっている。

ただ、病院によって設備や管理方法が異なるため、業界全体が電子化を進めているわけではない。そんななか、昨年発売された「CLAIRVO(以下、クリアボ)」は、IoTに対応した入院見守りシステムとして注目を集めている。

 

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非接触型の見守りシステムでバイタル(心拍・呼吸の状態)を確認。獣医師に喜ばれるそのワケとは?

 

クリアボ本体


 クリアボとは、ケージにセンサーを設置してマイクロ波を放出し、動物から反射してきた周波数の差分によって、体動と呼吸、心拍の動きを捉えてグラフ化。さらに、院内のネットワークを経由してiPadやスマホに情報を送信する見守りシステムだ。獣医師は専用のアプリを通し、グラフ化された動物の心拍や呼吸、内蔵カメラで撮影した動画の確認もできるという。(株)日本動物高度医療センターと(株)日本サーキットが共同で開発した。

動物に触れることなくバイタルを確認できることが、クリアボの大きなメリットだ。非接触のセンサーならばストレスをかけずに、動物の体調管理が可能となる。

赤外線カメラによって、暗所での観察も可能


また、布をかぶせていたり、ダンボールの中に隠れたりしているときなど、接触が難しい場合でも心拍や呼吸の状態を見ることができるため、獣医師から高い評価を得ているという。

「ご購入いただくもうひとつのポイントとなっているのが、呼吸と心拍の状態をiPadやスマホで確認ができることです。手元のデバイスでバイタルを確認できれば、診察中はもちろん、外出中、診療所を離れても院内の動物の状態が確認できるのです。直接入院室に足を運ぶ回数は減っても動物を“診る”回数が増えるため看護の質が向上した、という声もあります」

心拍、呼吸のほかに、室温、湿度も測定可能


 

ウェブカメラブームからヒントを得て生まれた「クリアボ」

動物医療現場の質の向上に一役買っているクリアボ。開発のきっかけとなったのは、数年前に流行したウェブカメラだったという。

「動物病院に入院している動物を遠隔で確認したいと言う獣医師のニーズと、入院動物を自宅から見たいという飼い主さんの要望を背景に、ウェブカメラを設置するケースが増えた時期がありました。私が訪問していた動物病院でもウェブカメラを導入して、ケージ内を観察できるようにしていたのですが、画像だけでは観察に限界があるため、動物の動かない状況を見て入院室まで足を運ぶ回数はあまり減らなかったそうです。一方、動かないわんちゃん、ねこちゃんを見た飼い主さんからの、『うちの子はどうなっているのですか?』という電話の対応の必要も生じ、結果的に仕事が増えてしまったようです」(日本動物高度医療センター・事業開発部・今氏)

「ウェブカメラの問題点は、映像しか判断指標がなかったところでした。映像だけでなく、心拍や呼吸などの状態が付加されることで、一目で動物の状態が判別でき、看護に活用できるのでは、と考えました。その後、人の介護用に開発されたという“非接触センサー”の技術があることを知り、これを動物にも応用することにしました。当社(日本動物高度医療センター)の獣医師の協力のもと、センサーによって得られるデータと心電図のデータの整合性を確認するなど、開発に一年半ほど費やして発売にこぎつけました」

長い調整期間を経て2015年10月にクリアボを発売。導入した動物病院の獣医師からは「看護の戦力のひとつと思っています」(神奈川県 T先生)、「動画だけでは呼吸の確認が難しくても、モニターで呼吸状態がわかるので助かります」(東京都 S先生)などの声もあり、使用感も上々だという。

「先生のなかには、スマホで動物の状態をスクリーンショットし、飼い主さんにメールで送っている方もいるそうです。現場では活用法が多様化してきているので、とても興味深いですね」

クリアボは、今後もユーザーの要望に応えつつ改良を続ける予定だ。そして最後に、IoTの存在が動物医療にもたらす可能性について聞いた。

「病院経営をサポートするシステムや看護に役立つIoTなどの技術が導入されれば、獣医師の負担が減り、より獣医療に専念できる環境が提供できる可能性があります」

生き物の命を預かる重圧。その大きな責任を、最先端テクノロジーがともに背負う時代が訪れるかもしれない。

筆者:Kayo Majima (Seidansha)