By Subith Premdas

地面を眺めながら歩いていると、時おりアリが食べ物や木の葉っぱなどを集団で引っ張って巣へと持ち帰っている光景を目にすることがあります。人間であればお互いに声を掛け合って方向を決めることができますが、言葉によるコミュニケーションができないアリにはその方法は採れないはず。では、アリはどのようにして自分たちよりも大きな物を共同で運んでいるのか、そんなことを調査した研究内容が発表されています。

How do ants synchronize to move really big stuff? | PBS NewsHour

http://www.pbs.org/newshour/rundown/ants-move-really-big-stuff/

この研究を行ったのは、イスラエル・ワイツマン科学研究所のOfer Feinerman教授が率いる研究チームです。このチームではアリの行動に関する研究を行っています。

Ofer Feinerman's Lab: Ant Collective Behavior Group



進化論の観点から考えると、動物が力をあわせて大きな物を運ぶという行為にはメリットとデメリットが存在します。アリの場合、大きなエサを巣へ持ち帰ることができるというのは生存するにあたってのメリットとなりますが、同時に、集団で行動することで急なできごとへの対応が遅くなり、天敵に襲われるというデメリットが存在します。そのため、多くの動物には共同で物を運ぶという習性はなく、このような行為を行うのはクモやフンコロガシの一種、そしてアリやヒトに限定されているとのこと。

前述のように、ヒトは声を掛け合ったり手で方向を示すことで荷物を目的の場所へ運ぶことができますが、アリの場合は荷物を顎で挟むことになるため、というよりもそもそも言語を持っていないために音によるコミュニケーションは無理で、頼みの綱である「触覚」を触れ合わせる情報伝達も、大きな荷物を運ぶ際には接触が遮られるために使い物になりません。



By Troup Dresser

では、どうやってアリは自分たちよりも大きな物を巣へと持ち帰ることができるのでしょうか。研究チームがまず立てた仮説は「巣に近い方にアリが集まることで、引っ張る力が巣の方へ向く」ということと、「リーダーとなるアリが一匹存在し、進むべき方向を示す」というものでしたが、研究の中でこれらの仮説は否定されるに至ります。

研究チームは、アリの一種である「ヒゲナガアメイロアリ」を使って、エサとなる物を運ばせたとのこと。実際に運ばせた物は、ドッグフードのかけらのような小さい物から、プラスチックでできた物体をキャットフードの袋の中に一晩入れておいた少し大きめの物などです。

仮説の1つめが、「巣の方向にアリが集中することで力の向きが決まる」というもの。これは確かに小さめの物の際には確認されましたが、直径4cmを超えるような大きな物体の場合は、物体の全ての方向にアリが群がっていたため、確実な根拠としては認められないものであることが判明。そしてもうひとつの「リーダーが存在する」という点についても否定されています。たしかに、道中ずっと物体に噛みついているアリは確認されましたが、その向きは必ずしも巣に近い方向には向いていなかったというのが、その理由です。

自分の何倍もある物体を運ぶ様子を収めたのがこのムービー。

Nature Communications - Video 3 - Feinerman et al. - YouTube

映像はコンピューター処理によってアリの個体に番号が付けられ、移動した軌跡が線で示されています。黄色い番号は物に接触しているアリ、白い番号は物から離れているアリを示しているとのこと。一方にアリが偏って群がっていることも、進むべき方向を唯一示すリーダーが存在する様子もないのに、画面右上にある巣の方向に向かって動いている様子がわかります。



替わりに研究グループが見いだしたのが、「新しく集団に加わったアリが進む方向を示している」というものだったとのこと。上記のムービーでは示されていませんが、巣の方向からやってきたアリは、物にかみついて巣の方向に向かって引っ張ろうとする力を加えます。すると、それまで運んでいたアリは自然にその新しいアリが引っ張った方向に向かおうとするとのこと。この動きを繰り返すことで、次第に物を運ぶ向きが決められる、というのが研究グループの見解です。

研究グループはまた、アリがどの程度大きい物体を運べるのかについても調査を行ったとのこと。最大で直径8cmという、およそ自然界では遭遇することはないであろう物体を数サイズ用意してアリに運ばせたところ、直径4cmの物体が運べる最大のサイズだったことが判明しています。

Nature Communications - Video 2 - Feinerman et al. - YouTube