冬季の道を走る車。米ニューヨーク州で(2007年1月17日撮影、資料写真)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】冬季の道路に塩を散布することは、自動車で雪道や凍った道を安全に走行する助けになるが、この塩の流出が、米国やカナダの淡水湖に取り返しがつかないほどの害を及ぼしている恐れがあると警告する研究論文が10日、発表された。

 米科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された論文によると、米国の北東部と中西部およびカナダ・オンタリオ(Ontario)州にある371の淡水湖の大半が、塩化物の流出による塩分の増加を示しているという。

 この傾向が継続すると、水生生物の壊滅と水質の低下、さらには飲用水とかんがい用水の供給にも影響が及ぶ恐れがあると研究チームは指摘する。

 論文の主執筆者で、米ウィスコンシン大学マディソン校(University of Wisconsin-Madison)の淡水に関する専門家、ヒラリー・デューガン(Hilary Dugan)氏は「その実態は驚愕に値する」と述べている。

 デューガン氏は声明を発表し、「塩類化が広範な地理的スケールにわたって変化しているかどうか、そして、その変化の程度と理由を明らかにする目的で長期にわたりデータを蓄積し、北米の湖と貯水池の塩素濃度と気候や土地利用のパターンとを比較した」と研究について説明した。

 また、「湖に関しては、小規模の湖畔開発が、大きな塩類化リスクにつながっている」ことも指摘している。

 今回の調査対象となった湖は、すべて4ヘクタール以上の大きさで、塩化物のデータが10年以上蓄積されている湖だった。

 冬季の道路を走行可能な状態にするために散布される道路用塩化物の使用は、1940年代以降に増加。研究チームは、毎年約2300万トンに上る塩化ナトリウムベースの凍結防止剤が、北米の道路にまかれていることを説明した。

■問題の過小評価

 凍結防止剤からの塩類の大半は、近くの湖や池へと流され、地下水、河川、湖沼などの塩化物汚染の主要な発生源となる。

 研究チームは、車道や駐車場、歩道などの水を通さない地表(不浸透面)に散布される道路用塩の量を測定するため、調査対象の各湖の周囲100メートルから1500メートルまでの緩衝帯内にある道路とその他の被覆面積を見積もった。

 結果は明白だった。湖岸線から500メートル以内にある道路などの不浸透面は、水中の塩素濃度の上昇を予測する強力な要因となっていた。

 この結果を北米の湖沼地帯にあるすべての湖に当てはめると、約7770の湖が塩分上昇のリスクにさらされている可能性があることになる。

 論文の共同執筆者で、米ダートマス大学(Dartmouth College)の大学院生のフローラ・クリバク・テトリー(Flora Krivak-Tetley)氏は、「これらの結果は、塩類化問題の過小評価されている可能性が高い。カナダのケベック(Quebec)州や沿海州など、道路用塩が多量に散布される多くの地域では、長期の湖データが得られていない」と述べた。

 湖水中の塩化物濃度の上昇は、水中生態系の食物網の基盤を成す魚、無脊椎動物、プランクトンなどの構成を変化させることが明らかになっている。

 これにより、水生動物種の減少につながることが考えられる。極端な場合には、塩類化が低酸素状態を引き起こし、水生生物を窒息させ、水質を低下させる恐れがあると、論文は指摘している。
【翻訳編集】AFPBB News