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アドビは10日、同社とGoogleが共同開発したフォント「源ノ明朝(英語名:Source Han Serif)」の記者説明会を実施した。

「源ノ明朝」は、Pan-CJK(中国語、日本語、韓国語)書体ファミリーで、2014年に同様の座組みで生み出された「源ノ角ゴシック」と同一ラインナップの新フォントだ。オープンソースフォントのため無料配布されており、端末やアプリへの組み込みも許可されている。

源氏を彷彿とさせる特徴ある名称で話題となったが、源は英語名のSourceから引いた語。チーフタイプデザイナー・西塚涼子氏によれば、一時はそのままカタカナで書き下した「ソース」をフォント名称に用いる案もあったが、「ソース明朝」は"焼きそば"など別の印象を与えてしまうと抗議、1年以上の時間をかけて協議した結果決まった名前なのだと明かした。中国、韓国でも別の名称がつけられている。

○デジタル時代に用いる明朝体としてのデザイン

デジタルフォントは言語ごとに購入するのが一般的だが、複数言語を同時に記載する場合、多言語のフォントを混ぜることで太さ・かたちのばらつきが起こってしまっていた。シニアマネージャー 山本太郎氏は、「デザインが統一された多言語対応フォントへの需要はかつては少なかったが、現在はSNSの発展で不意に別の国の人からメッセージを受け取ることも日常化しており、国際的な文字環境が必要とされている」と語った。

西塚氏は、「源ノ明朝」を「スクリーンに表示することを念頭に置いた書体」と明言。字形について、「横の画は(同社がリリースした)小塚明朝よりも太い。光る画面でも先端が飛んでしまわないよう、先端は太めに作っている」と解説したほか、全体に強弱は抑えたデザインとなっていることを挙げ、「読む側にとっては自然な、けれどもタイプデザイナーから見ると変わった書体」と表現した。

また、一般的に縦書きの文字の方が、横書きと比較して大きく見えるため、「源ノ明朝」では横書き・縦書きで異なる字形を保有し、自動的に最適なものに切り替えている。通例のように複数のフォントを組み合わせて用いるのと比較して、ファイルサイズが小さいのも特徴だ。

制作過程では、文字の特徴を司る「エレメント」187件を作成し、それを中国・韓国の現地パートナー企業と共有することで、デザインの統一を図った。言語が異なっても共通する文字も多く、まず日本側で作った字形を提示し、各地で採否をヒアリングした後調整を重ねたといい、西塚氏はこの部分に大きな苦労があったと語った。

日中韓での文字セットという印象が強い「源ノ明朝」だが英数字も当然ながら収録している。Pan-CJKフォントの英字を担当したシニアフォントデベロッパー 服部正貴氏とFrank Griesshammer氏が、制作に関するエピソードを語った。

ラテン文字準拠の数字は英字の大文字より少し小さく作るのが通例。そのため、漢字と比較するとかなり小さく見えてしまう。そこで日本語に合わせ大文字と同じ高さの和文用数字も作られたなど、同フォントならではの制作秘話も明かされた。ちなみに、英和の切り替えも縦書き・横書きと同様自動的に選択されるとのことだ。

なお、デザイナーとして「源ノ明朝」をこのように使ってみてほしいという例として、西塚氏は「児童文学や高齢者向けの書籍」と回答。濁点つき仮名やemダッシュといった創作物でも多く見られる表現にも対応していることを併せて挙げた。この次の展開として問われた際に「VRのような3D空間で表示する用途で、(フォントデザイナーとして)何かできないか狙っている」とも語った。

グローバル化という言葉がもはや古く感じられるほど、日常で他言語を目にすることが多くなった昨今。「源ノ明朝」の利用の場も今後ますます広がっていきそうだ。

(杉浦志保)