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マンチェスター大学の研究グループは、酸化グラフェン膜を用いて海水をろ過し、飲用水にする技術を開発したと発表した。酸化グラフェン膜を通すことによって、水に溶けた塩(NaCl)の97%を除去できることを実証したという。海水淡水化設備の簡易化、低コスト化につながる可能性がある。研究論文は、ナノテク専門誌「Nature Nanotechnology」に掲載された。

グラフェンは炭素原子がハチの巣状に結合した結晶構造をもっている。小さな分子は網目の一部に開けた微細な孔を通過できるが、大きな分子は通り抜けられないため、グラフェンを分子の「ふるい」として使うことができる。あるいは、グラフェンを何層か積層させ、その層間にできる隙間を通過できる粒子と通過できない粒子にふるい分けする方法もある。

これまでの研究では、各種のナノ粒子や有機分子、分子量の大きな塩などについて、酸化グラフェン膜によるフィルタリングが可能であることが報告されていた。一方、海水に含まれている一般的な塩(NaClなど)に関しては、酸化グラフェン膜によるフィルタリングが困難であるとされてきた。水に浸すことによって酸化グラフェン膜がわずかに膨張する効果があり、層間距離が大きくなってしまうため、分子量の小さな塩が酸化グラフェン膜を通過してしまうためである。

研究チームは今回、水に浸した際の酸化グラフェン膜の膨張による影響を取り除き、塩のろ過を可能にするため、酸化グラフェン膜の層間距離を精密に制御する方法を開発した。

その方法は、湿度を制御した密閉容器内に酸化グラフェン膜を入れて処理するというもので、論文によると、相対湿度0%、12%、33%、75%、84%、100%という条件の下で、それぞれ層間距離を6.4Å、7.4Å、7.9Å、8.6Å、9Å、9.8Åに制御することができたと報告されている。

このように層間距離を制御した酸化グラフェン膜をエポキシ系接着剤で硬化処理して、水による膨張効果を抑制したところ、水中の塩(NaCl)を97%遮断するフィルタリング性能を示したという。水分子は酸化グラフェン膜を高速で通過することができるため、理想的なろ過材料になると考えられる。

国連では2025年までに世界人口の14%が水不足に陥ると予測している。現在、海水の脱塩処理に使われている逆浸透膜と比べると、酸化グラフェン膜は材料コストが安く、また低い水圧で水を通すことができるため装置コストも相当低く抑えられると考えられる。今回の技術の実用化によって、水不足の地域に安価かつ簡易に導入できる海水淡水化装置の実現が期待される。

(荒井聡)