詩的なセリフが作品を彩る (C) 2016 A24 Distribution, LLC

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 第89回アカデミー賞で作品賞、脚色賞、助演男優賞に輝いた「ムーンライト」(公開中)の本編映像が、公開された。幼少期の主人公が、人生の指標となる金言を授けられるシーンを切り取っている。

 ブラッド・ピットが製作総指揮を務めたヒューマンドラマ。米マイアミの貧困地域で孤独な生活を送る黒人少年シャロンが、自己のアイデンティティを模索するさまを幼少期(アレックス・ヒバート)、少年期(アシュトン・サンダース)、青年期(トレバンテ・ローズ)の3つの時代構成で描きながら、幼なじみの親友ケヴィンや麻薬常習者の母ポーラ(ナオミ・ハリス)との関係の変遷を見つめる。

 父親がいないシャロンは、偶然知り合った麻薬ディーラー・フアン(マハーシャラ・アリ)のもとに身を寄せるように。フアンはシャロンの父親代わりとなり、人生を歩むためのヒントを与えていく。映像では、シャロンを海に連れ出したフアンが「ちゃんと支えてる。離さないから安心しろ」とシャロンを抱えあげて泳ぎ方を教えるさまが、たゆたう波の動きに同期した美しい映像に加え「マネー・ショート 華麗なる大逆転」の作曲家ニコラス・ブリテルによる叙情的な音楽と共に紡がれる。

 キューバ出身のフアンは「俺もガキのころはお前みたいなチビで、月が出ると裸足で駆け回ってた。あるとき、ある老女のそばをバカやって叫びながら走り回ってた。老女は俺をつかまえてこう言った。『月明かりを浴びて走り回っていると、黒人の子どもが青く見える。お前をこう呼ぶ、ブルー』。自分の道は自分で決めろよ。周りに決めさせるな」と語りかける。フアンのこの言葉はその後のシャロンの生きざまに大きな影響を与え、劇中でも月明かりが印象的に描かれる。タレル・アルビン・マクレイニーによる本作の原作戯曲「In Moonlight Black Boys Look Blue(月明かりの下で黒人の子どもは青く見える)」にもつながる、本作の根幹的なテーマを象徴したシーンとなる。本作でオスカーに輝いたアリが、温かくも芯の強さを感じられる演技を披露し、父性を体現している。

 バリー・ジェンキンス監督は「戯曲の中で“夜”は、シャロンが最も落ち着ける場所であり、素の自分を出せる時間として描かれていたんだ。通常、青色は“哀しみ”を表すために使われるけど、この作品の中では、メランコリックな気持ちだけでなくて、“美しさ”も同時で描かれていた。だから映画でも、シャロンが最も安らぐとき、自分らしくいられる夜を、月明かりの下で美しく描いたつもりだよ」と意図を明かしている。