今年8月に徴用工像設置が計画されているソウル市の龍山駅

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 京都中心部から北に1時間ほどの山中にある「丹波マンガン記念館」。その敷地に韓国側が「強制徴用労働者像」と呼ぶ像が設置されたのは昨年8月のことである。徴用工像にはすでに、ソウル市内のターミナル駅の1つである龍山駅前に設置する計画もあり、第二の慰安婦像問題となる懸念もある。この計画を試みたのは、「強制徴用労働者増建設推進委員会」。その中心をなすのは、韓国の二大労働組合である民主労総と韓国労総だ。

 この「徴用工像」をつくったのはキム・ウンソン氏とキム・ソギョン氏夫妻。世界各地で設置の動きが進む慰安婦像の製作者である。徴用工像にはすでに各地で設置する計画があり、第二の慰安婦像問題となる懸念もある。ジャーナリスト・竹中明洋氏がレポートする。

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 設置の動きは韓国だけではない。北朝鮮でも計画が進行中だという。

「まだ具体的な場所は決まっていませんが、北の朝鮮職業総同盟をカウンターパート(交渉相手)に協議を進めていて、来年、平壌に設置される予定です。今年5月にも韓国から推進委員会の実務者が北に向かい、打ち合わせをする予定です。像は韓国で製作したものを持ち込むことになっています」(民主労総の嚴美京局長)

 朝鮮職業総同盟とは、北朝鮮の労働団体とされている。だが、そもそもかの国で自由な労働運動など認められるわけがない。韓国など海外の労働組合への浸透のための事実上の工作機関だというのが、公安関係者の見立てだ。韓国の労働組合と組んで徴用工の問題で日韓の分断を図ろうという意図を感じずにおれない。

 徴用工像の建設を推進する委員会が要求するのは、共同調査や謝罪だけでない。

「先にありきというわけではありませんが、真相が究明されれば賠償も求めていきます。少なくとも(請求権が放棄されていない)中国の労働者に対して日本企業が支払った額に準ずるものを求めていきたい」(同前)

 韓国では、元徴用工らが日本企業を相手取って賠償を求める訴訟がたびたび起こされている。今年3月16日にも、ソウル中央地裁が富山市の機械メーカー・不二越に対し、元徴用工の遺族らに損害賠償を支払うよう命じる判決を出している。

 これに対し、日本政府は、日本統治時代の被害や損失について、65年の日韓国交正常化に伴う請求権協定で「完全かつ最終的に解決済み」という立場で、判決は受け入れられない。

 慰安婦問題で謝罪と賠償を求める韓国に日本が反発して両国関係が悪化した経緯を指でなぞるかのような展開となるのではないか。

 じつは徴用工像の建設推進委員会に複数いる共同代表のなかには、挺身隊問題対策協議会(挺対協)の尹美香代表の名前がある。すでに述べたとおり、徴用工像の製作者は慰安婦像と同じ夫婦。この設置の動きが第二の慰安婦像問題となり、両国間の大きな火ダネとなるのを懸念するばかりだ。

【PROFILE】竹中明洋●1973年山口県生まれ。北海道大学卒業、東京大学大学院修士課程中退、ロシア・サンクトペテルブルク大学留学。在ウズベキスタン日本大使館専門調査員、NHK記者、衆議院議員秘書、『週刊文春』記者などを経てフリーランスに。近著に『沖縄を売った男』。

※SAPIO2017年5月号