東海道・山陽新幹線歴代車両(「Wikipedia」より)

写真拡大

 国鉄が分割民営化されてJRグループが発足してから、4月1日で30周年を迎えた。JR東日本など本州3社は株式上場するなど、高収益企業に生まれ変わった。昨年10月25日にはJR九州も上場した。

 国鉄時代に開業した新幹線は東海道、山陽、東北(盛岡まで)、上越の4路線だったが、JRになってから開発が加速し、九州や北海道にも延伸した。2022年には九州新幹線の長崎ルート、23年には北陸新幹線が敦賀まで、31年には北海道新幹線が札幌まで延伸される計画だ。だが、現在のJR繁栄の陰には、今なお続く国民負担がある。

 分割民営化当時、国鉄の累積債務は37兆円に達し、利払いだけでも年1兆円を超えていた。JRに移行した際、これらの巨額な債務を引き受けるために設立されたのが、特殊法人の国鉄清算事業団だった。このスキームにより、JR各社は身軽な状態で民間企業として新たなスタートを切ることができた。

 同事業団は国鉄が所有していた土地とJR各社の株式を売却した収益で長期債務を返済し、余剰人員の再就職促進という後始末を行ってきたが、1988年に解散した。解散時に残った債務は、国の一般会計に引き継がれた。気になるのは、その国鉄長期債務の残高だ。財務省発表によれば、98年度末で24兆98億円だったが、2014年度末時点では17兆9784億円になったとされる。

 元横浜市長の中田宏氏によれば、年間約5000億円が元本償還および利払いに充てられていると推察されるという。支払い財源については、郵便貯金特別会計からの特別繰入(02年度まで)、たばこ特別税収、一般会計国債費などによって手当てされてきた。

 もちろん、1987年のタイミングで大幅な人員削減と合理化で分割民営化していなかったら、国鉄の債務ははるかにひどい状態になっていただろう。

●新幹線は地方を幸せにするのか

 中田氏は昨年4月に、「新幹線は地方を幸せにするのか」と題する論文を発表した。そのなかで指摘しているのが、整備新幹線と赤字垂れ流しの並行在来線の問題だ。70年の全国新幹線鉄道整備法に基づき事業化された路線が整備新幹線であり、東海道や山陽、上越は整備新幹線と呼ばない。

 整備新幹線は73年に政府が整備計画を決定し、89年から着工された。昨年3月に開業した北海道新幹線もそのひとつだが、43年も前に決められた計画なのである。43年前といえば、全国的に人口が増えていた時代で、日本全体が高度経済成長に沸いていた。だが、バブル崩壊後に日本経済は低迷し、日本はすでに人口減少社会に入った。計画当時とは想定された社会環境がまったく変わってしまった。

 整備新幹線の問題は、その建設費自体が巨額であること、そして建設コストに見合った収益が上げられるのかということだ。例えば、北海道新幹線は開業からこの1年、平均乗車率はたったの32%である。

 鉄道が開業することで、人が住み、職場ができ、新たな経済圏が生まれるといったバラ色の未来を描きがちだが、そんな時代はとうの昔に去ってしまった。

 整備新幹線が開業すると、並行在来線はJRの経営から分離されて、地元自治体が出資する第三セクターが受け皿となる。しなの鉄道(長野県)、青い森鉄道(青森県)、肥薩おれんじ鉄道(熊本県・鹿児島県)など、数多く存在する。北陸新幹線開業時には、えちごトキめき鉄道(新潟県)ほか2社の運行が始まった。

 並行在来線は沿線住民の日常の足であり、自治体が維持・存続させようとするのは当然だ。しかし、少子高齢化で利用者が減り続けるなか、メインは通勤・通学の利用者となり、運賃収入で売り上げを伸ばすのは至難の業である。どの並行在来線も経営は苦しく、しかも運賃はJR時代に比べてアップしている。

 民間企業のJRからすれば、整備新幹線を引き受ける代わりに、お荷物路線を切り離してほしいと要求するのは当然だろう。90年に「建設着工する区間の並行在来線は、開業時にJRの経営から分離することを認可前に確認すること」が政府・与党申し合わせで合意されている。

 並行在来線の赤字は地元自治体の財政で補填されることになる。中田氏は「その財政負担に耐え切れなくなった各地方自治体はやがて国に補助金等の陳情に走る」という。

 メディアは北陸新幹線のときも北海道新幹線のときも、観光名所やグルメ情報など、華やかな部分だけを紹介する。しかし、地元も国民も新幹線の開通の裏側に潜む大きな問題を考えなければならない。そうでなければ、“第2、第3の国鉄”を生み出しかねないのである。
(文=横山渉/ジャーナリスト)