米中首脳会談でのドナルド・トランプ大統領(左)と習近平国家主席(右)(写真:AP/アフロ)

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 4月6〜7日、アメリカのドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席による米中首脳会談が開かれた。

 就任前から対中強硬姿勢を打ち出してきたトランプ大統領と、アメリカの保護主義に対して牽制する動きを見せている習主席の初の直接会談ということで注目されたが、会談前には北朝鮮が弾道ミサイルを発射、会談中にはトランプ大統領がシリアへの空爆を決行するなど、波乱の展開となった。経済評論家の渡邉哲也氏は、以下のように振り返る。

「会談前の共同記者会見がなかった時点で、事務方などによる協議内容の事前合意がなされなかったことが確実視されていたが、会談後にも、共同声明が出されなかったどころか共同会見すら開かれなかった。これは、トップ同士の会談ではきわめて異例である。

 会談で重要な決定がなされれば共同声明が出され、なんらかの合意があれば共同会見が開かれる。議論が平行線で終われば単独会見または報道機関向けの書類配布のみ、というのが通例だ。これは、同時に会談の成功度を表すことになり、今回は『結局、何も決まらなかった』と見るのが妥当だろう。

 注目すべきは、やはり会談中にシリアへの攻撃を決定したことだ。オバマ前大統領は、シリアへの攻撃について『議会の承認が必要』として結果的に何もしなかったが、トランプ大統領は以前より『議会の承認は不要』と主張しており、それを実行したことになる。

 習主席とすれば、目の前で攻撃命令を出されたことになるわけだが、これは北朝鮮や南シナ海で中国が建設する人工島に対しても、いつ同様の命令が下されるかわからないということを示唆したといえる。そのため、中国に対して非常に強い圧力をかけたことにもなるわけだ」

●北朝鮮に二度もメンツを潰された中国

 北朝鮮は、アメリカのシリア空爆について「許されない侵略行為」と非難する一方、アメリカは原子力空母のカール・ヴィンソンをはじめとする海軍の空母打撃群を朝鮮半島に向かわせていることが報じられた。

 カール・ヴィンソンのほかに誘導ミサイル駆逐艦、誘導ミサイル装備巡洋艦などで構成される同打撃群は、太平洋軍の命令を受けて行き先をオーストラリアから朝鮮半島に変更し、シンガポールから北上中だという。

 また、アメリカのレックス・ティラーソン国務長官は、会談後に「(トランプ大統領は習主席に)もし、中国がアメリカと(北朝鮮の対応で)連携できないのなら、アメリカは独自に進路を決める、と伝えた」と語っており、北朝鮮をめぐる情勢が一気に緊迫感を増している。

 米中首脳会談を挟むかたちで、6日と8日にはトランプ大統領と安倍晋三首相による電話会談が行われており、シリアや北朝鮮の問題について意見交換が行われたとみられている。

「北朝鮮は3月にもミサイルを発射しており、これは在韓米軍の軍事訓練に対する反発という見方が大半だったが、同時期に中国では全国人民代表大会が開かれていた。これは、予算討議や政治活動報告などが行われる、年に一度の重要な政治イベントであり、ミサイル発射は中国に対する挑発でもあったわけだ。そして、今回の会談前のミサイル発射によって、中国はまたメンツを潰されたことになる。

 また、これによって、アメリカが単独で北朝鮮に対応することが正当化されたともいえる。今後、最大の焦点は軍事的オプションの有無だろう。アメリカの目的は北朝鮮を黙らせることではなく、核とミサイルの開発を破棄させ、国際的な監視体制を受け入れさせることにある。そのため、一時的に核実験やミサイル発射を取りやめたとしても、圧力をかけ続けることになると思われる。

 問題は、その圧力がどのような種類のものになるかだが、仮にアメリカが先制攻撃を行うとしたら、北朝鮮の反撃を許さないように核開発の拠点とミサイルの発射基地や保管庫を徹底的に破壊するだろう。そのため、対シリアのような空軍基地に限定された攻撃ではなく、一斉に全土を攻撃する可能性が高い」(渡邉氏)

 北朝鮮は11日に国会にあたる最高人民会議が開かれ、金正恩政権が5年目を迎える。また、15日は金日成元国家主席の生誕記念日、25日は朝鮮人民軍の創設85周年にあたり、その動きが注視されている。

 一方、アメリカのマイク・ペンス副大統領は18日に来日し、安倍首相と会談するほか、麻生太郎財務大臣との「日米経済対話」に出席する。日米中の北朝鮮に対する姿勢が、ますます注目されそうだ。
(文=編集部)