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■どんなクルマ?

ひとつ上のクラスの顧客を狙う

ヴォグゾールのファミリー・セダン、インシグニア・グランドスポーツ。そのディーゼル・モデルのエントリー版が、この1.6ℓ/100ps仕様だ。

公称燃費は混合モードでおよそ25km/ℓで、しかもフォルクスワーゲン・ゴルフのディーゼルのエントリー・モデルより安い。ゴルフよりセグメントは上なのに、だ。

この価格戦略で、アウディやBMW、メルセデス・ベンツからもシェアを奪おうというのが、ヴォグゾールの目論見である。

英国での発売は5月で、価格は最廉価版で£17,115(236万円)。今回の試乗車は装備を追加した仕様だが、それでも£19,280(266万円)に収まる。

装備にも抜かりはない

プラットフォームは完全新設計で、車体は先代よりわずかに大きいが、スペースはそれ以上に拡げられ、サスペンションなども新開発。車両重量は平均175kgも削減している。

エンジンは新型、もしくは既存ユニットの改良版で、今回試す110psディーゼルは販売の主力になるだろう。

装備は、4WDやアダプティブ・ダンパー、8速ATなどを備える上位グレードより当然ながら簡素化される。だが、8.0インチのディスプレイやナビ/インフォテイメント・システム、4GのWi-Fi、コンシェルジュ・サービス、キーレス・エントリーや最新の安全デバイスは標準装備。

これで200万円台というのは、まさにバーゲン・プライスだ。

■どんな感じ?

実用性に大きな問題はない

顔つきにマツダとの類似も感じるが、弧を描いたルーフラインやボディ・サイドの処理などは、上級サルーンすら凌ぐほどエレガントだ。

ホイールベース延長により、室内の実用性は先代を凌ぐ。後席レッグ・ルームはクラス水準を超え、身長180cm以上の乗員にもヘッド・ルームの不足はない。

一方、荷室容量は先代より40ℓ減の490ℓで、競合モデルより浅いが、スーツ・ケースやベビーカーなども呑み込む。

ダッシュボード上部やセンター・コンソール、ドア上部などにソフトな素材が用いられる内装は、一見すると上質だ。

しかし、ドア下部やセンタートンネル周辺は硬くテカりのあるプレーンなプラスティックで覆われる。ステアリング・コラム周辺も同様で、価格の安さを実感させられてしまう。

エンジン、ふつうに走るならば言うことなし

1.6ℓディーゼルは、2.0ℓ版よりやや静かだが、どちらにせよとくに洗練されているわけではない。いっぽう、4.9m級セダンには力不足では、という心配は、少なくとも日常遣いの範疇では無用。

トルク・バンドはやや狭いが、パワー・バンドに入る手前をカバーしてくれる。流れに乗って走るには十分で、勾配での息切れもない。

適度に重く滑らかな6速MTを駆使すれば、ハイ・ペースで走るのも容易だ。ただし、高速道路の合流ではかなり苦しげで、追い越し加速にも余裕はない。

乗り心地とハンドリングは完ぺきとは言えない

脚はやわらかく、快適性に振った乗り味は大型サルーンの流儀。パッシブ・ダンパーと17インチ・タイヤのコンビネーションはしなやかだが、鋭い突起を乗り越える際にはやや減衰不足を感じることも。

だが、ペースを上げてもサスペンションはきっちり仕事をして、フラットな乗り心地と厳密なボディ・コントロール、優れたグリップとスタビリティをキープする。

ステアリングは速さも重さも適切だが、一部のライバルに見られる甘美なバランスや魅力的なフィールは、このクルマには欠ける。

■「買い」か?

とくにクルマに興味ないけど、かっこいいのがいいあなたに

運転しての感想は、なかなかよかったといえる。ただし、コスト・パフォーマンスも踏まえれば、という条件付きで。

ブランドの上級移行という困難なタスクで手一杯のヴォグゾールだが、なかなかハンサムなクルマを造り上げた。装備は充実し、実用的で、目的に適っており、目立った欠点はない。しかも、価格が際立って安い。

たしかに、特別なクルマを探しているユーザーに売り込むのはむずかしいだろう。

しかし、現実的な価値を重視するビジネス・ユーザーや、価格の安さにこだわるファミリー層には、強力にアピールできるはずだ。

ヴォグゾール・インシグニア・グランドスポーツ1.6ターボD 110

■価格 £19,280(266万円) 
■最高速度 204km/h 
■0-100km/h加速 10.9秒 
■燃費 25.0km/ℓ 
■CO2排出量 105g/km 
■乾燥重量 1503kg 
■エンジン 直列4気筒1598ccターボ・ディーゼル 
■最高出力 110ps/3500-4000rpm 
■最大トルク 30.6kg-m/1750-2000rpm 
■ギアボックス 6速マニュアル