タイガー・ウッズが2位に12打差を付けて驚異的な初優勝を飾った1997年大会から20年。今年のマスターズは波乱続きだった。

練習日は激しい雷雨に見舞われ、コースが何度もクローズ。予選2日間は寒気と強風に見舞われ、難しいオーガスタで厳しい自然をも相手に戦う我慢のゴルフを強いられた。
そこにウッズの姿は無く、世界ナンバー1のダスティン・ジョンソンの姿も見ることはできなかった。開幕前日に階段から転落して故障し、出場を泣く泣く断念。
優勝候補の筆頭がティオフさえできなくなったことは悲しいビッグニュースではあったが、世界1位が不在になろうとも、はたまた天候が大荒れになろうとも、優勝候補は目白押し。最終日のリーダーボードには、最上段にジャスティン・ローズとセルジオ・ガルシア、その下には1打差でリッキー・ファウラー、そのまた1打差にはジョーダン・スピース、ライアン・ムーア、チャーリー・ホフマン、さらに1打差でアダム・スコット。
世界のトッププレーヤーたちが当たり前のように名を連ねたそのリーダーボードは、実力の差が僅差で逼迫している現在のゴルフ界の勢力図を反映する形になっていた。
そう言ってしまうと、故障して棄権したジョンソンは別としても、ジェイソン・デイ、ロリー・マキロイ、松山英樹は、なぜそこに食い込めなかったのかという疑問が浮上するかもしれない。冷たい言い方に聞こえるかもしれないが、そこにはそうなっても不思議ではない理由がやっぱりあったのだと思う。
デイは肺がんで余命12か月と診断された母親を米国へ呼び寄せ、マスターズ前週に行なわれた手術に立ち会うなど家族のことに心を砕いた。母親の手術は成功し、デイは笑顔でオーガスタにやってきたが、そうやって迎えたマスターズで100%の力を出すことはできなかった。
マスターズで優勝すればキャリアグランドスラム達成となるマキロイは、昨年のうちから今年のマスターズに照準を合わせようと意気込んでいたが、その意気込みが裏目に出て、今年1月に肋骨を疲労骨折。以後、7週間も戦線離脱を強いられたマキロイにオーガスタを制することはできなかった。
昨秋からの好調を肝心なときに持続できず、ショットもパットも不調続きのままオーガスタにやってきた松山が「チャンスはない」と言い切るほど優勝争いの蚊帳の外に置かれたことは、ピークをうまく合わせることができなかったことの反映だった。もちろん、「それが実力なんで――」と言った松山自身が、それを一番、痛感していた。
選手たちの実力差がとても小さい今だからこそ、ほんの小さな不安や不調や出来事が成績や運命に大きな影響を及ぼす。必ずしても経験がモノを言うわけではな、マスターズ覇者のスピースやスコットも今年は勝つことができなかった。
それならば、波乱続きだった今年、そして技術の差がひっ迫している今、プレーオフを戦ったローズとガルシアは他選手たちと何が違ったのか、どこに違いがあったのかと考えたとき、思い浮かぶ答えは一つしかない。苦労や不調を嫌というほど味わい、人生の谷の厳しさを嫌というほど噛み締め、当たっていたスポットライトが当たらなくなったときのやるせなさ、情けなさを誰よりも味わってきた2人だからこそ――。
17歳のアマチュアにして全英オープン4位に入り、天才少年と呼ばれてプロ転向したものの、21回連続予選落ちしたローズ。米ツアー初優勝までには12年を要した。
天才少年と呼ばれて19歳でプロ転向。すぐさまウッズと全米プロで死闘を演じ、メジャー優勝はすぐだと言われたガルシアは途中で引退を口にするほどの不調に陥り、実に18年間、メジャー優勝に辿り着けなかった。
そんな2人だからこそ、波乱にも悪天候続にも負けず、他選手たちから抜け出すことができたように思う。
ローズはすでに2013年の全米オープン優勝とリオ五輪の金メダルを手に入れている。最後の最後にガルシアとローズの勝敗を分けたものは、オーガスタの魔女の粋なはからい。
「そろそろガルシアにも長年の我慢に報いるものをあげましょう」
そんな声がオーガスタの日曜日の夕暮れに聞こえてきた。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
<ゴルフ情報ALBA.Net>

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