特集上映で熊本入りした妻夫木聡

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 熊本県で開催されていた「くまもと復興映画祭powered by 菊池映画祭」(4月7〜9日)で俳優・妻夫木聡の特集上映が行われ、主演3作品「ぼくたちの家族」「ジョゼと虎と魚たち」「春の雪」が上映され、妻夫木と同映画祭ディレクターの行定勲監督がトークショーに登壇した。

 同特集上映は俳優にフォーカスし、初回は同県出身の高良健吾、昨年は中井貴一、今年は妻夫木を招いた。行定監督は「主演俳優の言葉は、ときに監督の言葉を凌駕する」と明かし、俳優の視点で映画を語る面白さがあるという。

 妻夫木は、普通の青年からサイコパス、ゲイ、殺人者まで、さまざまな役を演じているが、行定監督は「成功者やヒーロー役は誰でも演じられるが、普通の男を演じさせたら(同世代で)妻夫木の右に出る者はいない。そういう立場を切り開いた男だと思う」と絶賛する。

 「ぼくたちの家族」(監督:石井裕也)は、普通の青年が家族と向かい合う物語。妻夫木は、出演した理由を「完璧な家族は存在していなくて、それぞれが不協和音を抱えていると思う。この映画は、病気をきっかけに家族が壊れて、でも壊れたからこそ再生できることもあって。戻れる場所があることは大切なことだと伝えています」と語る。

 行定監督も「そういう再生は今の熊本に響くはずだ」と言葉を添える。今後どのような役で妻夫木を起用したいか、と聞かれると「たとえば大人の強欲な男をやってもらいたいですね。彼は泣きの役は多いけれど、強欲な男が泣き崩れたらどうなるのか、そういう意外な役をみて見たい」と期待の言葉を残した。

 また、「ジョゼと虎と魚たち」(監督:犬童一心)で演じた恒夫の泣きのシーンも、「妻夫木聡という俳優の大きなイメージになっている」と行定監督。妻夫木は、同作を観客と一緒に鑑賞して泣きそうになった瞬間があると話す。それは、ジョゼ(池脇千鶴)が魚を焼くシーンだ。「最後にジョゼが強くなっていく姿が描かれていますが、スタッフの方に、あの魚は何ですかって聞いたんです。ジョゼが焼いているのは、“サワラ”。サワラを漢字で書くと、魚へんに春。最後にこの魚をジョゼに焼いてほしかった、というスタッフの思いを聞いて、泣きそうになったのを覚えています」。

 妻夫木主演、行定監督の「春の雪」は、映画祭最終日(9日)に熊本県立劇場でフィルム上映された。同作は大正初期の日本を舞台に、互いに思いながらも切ない運命をたどる幼なじみの愛の物語。フィルムで見られるのはこれが最後かもしれないと、約10年ぶりに鑑賞した行定監督は、当時を振り返り「妻夫木は演出家に寄り添う俳優」だと話す。「この映画で大切にしたことは、竹内結子の役をどう美しく、どう儚く映し出すかであり、妻夫木の役割はそういう演技を彼女から引き出すことでしたが、いつも(監督の)隣にいてくれることで、こちらの意図を自然と汲み取って演じてくれました。彼のような俳優はなかなかいない」と最大限の賛辞をおくった。