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マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、脊髄神経に埋め込むことのできる伸縮性ファイバーを開発した。脊髄損傷の治療研究などに役立つと期待される。研究論文は、Science系列のオープンアクセス誌「Science Advances」に掲載された。

脳に埋め込み可能なファイバー材料は以前からあり、脳の特定部位を刺激してその電気的反応をモニターするといった用途で脳研究に使われている。同様のニーズは脊髄に対してもあったが、脊髄の場合は体の動きに従って大きく曲がったり伸びたりするため、従来の埋め込みファイバーでは柔軟性に問題があり、脊髄組織を傷つけてしまうおそれがあった。

研究チームは今回、ゴムのように曲げ伸ばしが可能で、脊髄神経に対して光刺激や電気刺激を送ったり、電気的反応のモニタリングに使ったりすることができる伸縮性ファイバーを開発した。

曲げ伸ばし可能な材料といえばエラストマーがあるが、エラストマーの場合、材料の塊を髪の毛より細い糸状に加工するファイバードローイング(引き上げ)の工程が難しい。ほとんどのエラストマーがドローイング中の熱で融けてしまうためである。

ドローイング中にエラストマーが融けるのを防ぐために、研究チームは高分子の保護材の中にエラストマー材料を埋め込む方法を開発した。この方法でドローイングした後で、保護材を融解除去することによって、光信号の導波路として機能する透明エラストマーが作製できるようになった。この透明エラストマーをさらに銀ナノワイヤのメッシュでコーティングすることによって、電気信号を伝える導電層を形成した。

作製された透明導電性エラストマーは、材料特性に影響を与えずに、少なくとも20〜30%は伸ばすことができるという。自由に動ける状態のマウスを使った実験では、埋め込みファイバーによって、マウスの脊髄内の電気化学的活動を記録できることが実証された。

これまで脊髄の損傷や疾病に関わる研究では、マウスよりも体の大きな実験動物が使われてきた。大きな動物のほうが神経線維が太いため、硬いファイバーの埋め込みにも耐えられるためである。しかし、マウスには、実験動物としての取り扱いが容易であり、多種類の遺伝子改変型が利用可能であるという利点もある。マウスに使える脊髄埋め込みファイバーが開発されたことで、今後この分野の研究が進むことが期待される。

「脊髄の中にはさまざまな種類の細胞が存在しており、脊髄損傷後の回復にそれらの細胞がどのように対応するのかといったことは、まだよくわかっていない」と研究チームのChi Lu氏はコメント。新開発の伸縮性ファイバーがこうした知見を得るために役立つことを望むとしている。

(荒井聡)