4月から英語勉強を始める人は、挫折する

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■英語勉強、挫折する人はなぜ挫折するのか?

英語を身につけたい! そう思っていても自分が目標とするレベルまで上達させた人は、残念ながら少ないかもしれません。挫折する人が多いのです。

私は英語学習のポータルサイト「English Hacker」というサイトで8年ほど編集長をしており、これまで山のように英語学習の相談を受けてきました。そしてそのほとんどが「現在はTOEICスコア600点未満で、あれこれ試してみたけれど、どうやって英語を上達させればいいか分からない」といった切実な悩みでした。

そんな相談を数多く受けるうちに、「あれ、この人は英語学習に失敗するな」と思う人と、「この人は上手くいくだろうな」と思う人が予測できるようになってきました。

どういう人が、英語学習に失敗しやすいのか。今回はもっともあてはまることが多い10パターンに絞ってまとめました。

【1:大学受験時の英単語帳で勉強をはじめる人】

中学・高校の英語の授業といえば、やはり英単語の暗記を思い出す人が多いでしょう。英語授業時の単語テスト、中間・期末試験での英文の和訳、和文の英訳、さらに大学受験時には総おさらいをさらなる単語のインプット……。確かに英単語を制する者は英語を制する、といった側面があります。

しかし、再び英語勉強を開始するにあたり、かつて愛用した英単語帳から手をつける、という発想は実はとても失敗しやすいパターンなのです。それはなぜでしょう?

大学受験までの英単語帳は基本的に、英単語を覚える→その日本語の意味を覚えるの繰り返しです。しかし、これだけだと英単語の知識は増えても、実際に英語を話せるようになる、もしくはTOEICである程度長い英文を聴く・読むレベルにまでは到達できません。

それよりはむしろ、英単語よりも英文フレーズの引き出しを増やすことの方がはるかに有意義です。英文フレーズとは、例えば、tired(疲れた)という英単語を覚えるだけでなく、最もよく使われる“be tired of〜(〜で疲れている)”というフレーズで覚える、ということです。

英会話にしろTOEICにしろ、大事なのは英単語を「使える形」で覚えておくこと。そのためには、大学受験までで慣れ親しんだ英単語帳はいったん離れてください。まず英単語から、という発想は、最も身近ですが英語学習の成功には最も遠回りの勉強法なのです。

■4月から勉強を始める人はなぜ失敗するのか?

【2:英文法の勉強ばかりをやっている人】

英単語の次に多いのが、英文法の勉強ばかりをやるパターンです。大学受験までに、呪文のような英文法の解説用語を聞いた人も多いでしょう。例えば、「関係代名詞には主格と目的格があって、非制限用法もあって?」など、英語の先生から教わったことがあるでしょう。

この文法用語そのものは、もちろん悪いものではありません。ある程度英語の上級者になってくると、英語をロジックで考えるため、このような考え方も大事になってきます。

しかし、ほとんどの英語学習者にとって、こういった文法用語は実際に英語を使う上では残念ながらほとんど不要な知識です。大事なのは、文法用語を知っていることではなく、いかに知っている文法が使える形で頭に入っているかです。

大学受験までの英文法は、正しい文法構造をとらえて日本語訳にすることが求められます。しかし、英会話でもTOEICでも、日本語に訳すヒマはありません。それよりも、相手の言ったことをサッと理解してすぐリアクションをすることが求められます。そのために、文法用語というものは全くコミュニケーションを円滑にしてくれません。むしろ上達の妨げになってしまうことすらあります。

英文法の勉強ばかりしていても、なかなか英語は上達しないもの。それより実際に使われる形の英語の引き出しを増やすべきなのです。そのためには、やはり英文フレーズを多く知っている必要があります。例えば、「関係代名詞which」をそれだけで覚えるのではなく、“This movie which I watched yesterday?”などと、文章そのものを1つ頭に入れておく方がずっと英語の理解が進みます。理解できてから、文法用語で構造をあと付けすれば十分です。

【3:新年や新年度から英語をやろう!と思っている人】

1月と4月は英語学習系の本がよく売れるそうです。それだけ、新年や新年度で英語をやろうと思う人が多いのでしょう。

しかし、こういう一念発起して英語をやろうとするタイプも、残念ながら英語学習に成功しにくい。なぜでしょう? それは、「具体的な目標がない」ケースが多いからです。

英語の勉強と一口に言っても、いろいろな目的があります。日常英会話、ビジネス英会話、留学、TOEIC、TOEFL、英検などなど、使用するシーンや受ける試験によって、勉強するべき内容もかなり変わってきます。

英語の勉強をはじめる前に、まずは「具体的な目標」を持ちましょう。TOEICを受けるなら、どれくらいのスコアを取りたいですか? 英会話なら、どれくらいのレベルで英語を話せるようになりたいですか? 日常会話くらいなのか、ビジネスで通じるくらいなのか。自分が英語を身につけた後、どういうことをしたいですか? 

1月、4月に英語勉強を始めること自体は悪いことではありません。ただ、英語教材がどっと刊行されるこれらの時期に、背中を押される形で「じゃあ、やるか」という始め方は挫折率も高い。とにかく、具体的な目標を持つ。それで英語学習の成功確率がかなり変わってきます。

■一目でわかる!挫折する人の教材の選び方

【4:英語のハウツー本ばかり読んでいる人】

英語の勉強をしようと思って本書店に行くと、それはもう山のように英語関連本が並んでいます。その種類は、大きく2つに分けて、ハウツー本と勉強本。ハウツー本とは、それ単体では英語の勉強をするものでなく、どちらかと言えばガイドラインのように勉強法について書いてあるものです。もう一方の勉強本は、例えばTOEIC公式問題集などのような英語の問題が掲載されていて、それだけで英語の勉強ができるものです。

言うまでもなく、英語を上達させるためには勉強本で頑張らなくてはいけません。しかし、圧倒的に読みやすいのはハウツー本。だから、つい手に取って読みたくなる。もちろん、ハウツー本を読むことは無益ではありません。大事なのはそれに目を通した後の勉強です。勉強本も入手して、しっかり自分に必要なスキルをつけてください。

【5:いつも“背伸び”をして、教材を選ぶ人】

英語学習において、自分の英語力と目的・目標、そして学習環境に合った教材を選ぶことはとても重要です。しかし、英語学習に失敗する人の多くが、最初の教材選びを間違えてしまっています。

例えば、自分のTOEICスコアが500点未満なのに、いきなり730点を超えるためのTOEIC対策本を買う、などです。特にTOEICで言えば、500点未満の人はそもそもの英語の基礎力を身に付ける必要があるので、600点以上ある人と一緒の教材に取り組んでも効果は薄いものです。高い目標設定するのは悪くはありませんが、あまり背伸びしても、問題のレベルについていけず、結局、三日坊主ということにもなりかねません。

英語学習の成功の半分は、教材選びにかかっている。そう言っても過言ではありません。まずいろいろな教材に目を通してみて、効果的な教材はどれかしっかり吟味してください。もし、どうしても分からなければ、周りにいるTOEICスコアが高い人に、自分のレベルに適した教材選びのアドバイスをもらいましょう。成功者の経験ややり方に学ぶのです。

【6:帰国子女におすすめの参考書を聞く人】

(5)の教材選びにも関連しますが、英語を外国語として学ぶ人と、幼少時からアメリカやイギリスなどで生活していて英語が半ば母国語のようなった帰国子女の人とでは、最適な教材はまったく異なります。

私のように外国語として英語を勉強したタイプは、英語の最低限の知識(アルファベットが書ける、最低限の英単語・文法を知っている)に加えて、英語そのものに慣れるための勉強が必要になります。だからこそ、日本語で書かれた問題集を使うわけです。

一方、帰国子女の人はそもそも英語がかなり身についているので、英語で書かれた英語学習本を読むことも多い。日本語の本ももちろん使いますが、大前提とする英語力がかなり違うので、そのまま同じ教材を使うことはおすすめできません。帰国子女と同じ教材を使って効果があるのは、かなりの上級者に限られます。それこそ、洋書や英字新聞を読み切れるくらいの英語力がないと難しいでしょう。

さらに言えば、帰国子女は英語が流暢でも、幼少時から慣れ親しんで母国語同然にしたため、意外と誰かにアドバイスをすることができない人も多いのです。これは、私たち日本人が外国人から「日本語の勉強でおすすめの参考書って何ですか?」と聞かれて困るのと全く同じです。ネイティブだからといって教えるのが上手とは限らないということ。帰国子女は英語に対するアプローチが全く異なるのだと知っておくことはとても大事です。

■「週末に勉強」「1人で頑張る」と成功しない理由

【7:勉強は短時間でも毎日コツコツ派の人】

ビジネスパーソンであれ、主婦であれ、学生さんであれ、みな日々の生活が忙しく、勉強する時間が取れないことも多いでしょう。30分も勉強できない、という声もよく聞きます。しかし、それではいけません。毎日10〜20分の短時間でもやっていれば、いずれ英語力がアップすると楽観的な人もいるでしょうが、甘いです。

そもそも30分も勉強時間が取れないようであれば、英語の勉強は思い切ってやめてしまうのがよいでしょう。勉強をすると決心したら、しっかり優先順位を上げて、遊びや飲み会の誘惑に打ち勝って、しっかり勉強時間を確保するようにしてください。

【8:本番の試験は、準備不足でも自分なら何とかなると思う人】

仕事が多忙などの理由で、TOEICや英検など英語試験の前に勉強をしっかりできないまま本番を迎える人は少なくありません。そもそも完璧な対策ができることの方が少ないものですが、準備不足でも本番では大丈夫と考えている人がいます。根拠の自信があるのでしょうか。でも、試験前に準備が全く足りないまま挑めば、玉砕砕必至。受験料を払う以上、しっかり準備をしていきましょう。

例えば、TOEICであれば本番前に公式問題集や模試でリハーサルをしてみるのがおすすめです。TOEICは2時間の試験時間ずっと集中していなければいけないので、実際に受験をすると英語力以上に集中力が必要になります。また、空腹になると集中できないので、コンディションを整えることも大事だと分かってきます。最低でも1回はリハーサルをするようにして、試験を受けるようにすればそれなりに成果につながりやすくなるでしょう。

【9:週末にまとめて勉強しようと思っている人】

悲しいかな、人間の脳は覚えたことすべてを覚えていることができません。でも、毎日継続して勉強をすると、忘れにくくなっていきます。なので、土日に4〜5時間勉強するよりも、毎日30分の勉強を継続する方が効率はいいのです(理想を言えば、1日1〜2時間の勉強時間を確保したい)。

平日は仕事などで忙しい。だから、土日にまとめてやろうと思うこともあるでしょう。しかし、これまで英語学習で成功する人を見てきて痛感するのは、やはり毎日一定以上の時間を英語勉強に費やしている人が目標を成就するということです。

【10:1人でがんばろうと思っている】

これは英語だけに限りませんが、勉強はひとりでずっと頑張ろうとしてもなかなか続かないものです。励ましてくれる先生がいたり、一緒に頑張る仲間がいたりするだけで、モチベーションが高まりますし、精神的に助けられます。

私も、TOEIC満点を取るまでは周りのTOEIC受験者とスコアを共有して、悩み相談をしました。「900点から伸び悩んでいるんだよね」と相談すれば「それなら、自分はこうやって勉強した」などとアドバイスをもらいました。「行き詰まる」状況は誰にも訪れるもの。そんな時に勉強仲間がいるとすごく心強いですし、気分転換にもなります。

英語で苦労している人は、世の中たくさんいます。だからこそ、1人で孤独に頑張るのではなく、仲間とともに英語の勉強を頑張ってみてください。最近の英語勉強アプリには、そうした勉強仲間と知り合う機能付きのものがあるので、それを活用してもいいでしょう。

以上の10パターン、あなたはいくつ当てはまりましたか?

1〜2個であれば、英語学習者としてはかなり成功しやすいタイプと言えるでしょう。5個以上あてはまる人は、今のやり方ではかなり危険なので、ぜひ勉強のやり方を見直してみてください。具体的な学習について相談されたい方は、私のTwitterまたはEnglish Hackerのサイト上からお声掛けください。

(「English Hacker」編集長 佐々木真=文)