マネックスグループ社長CEO 松本 大氏

写真拡大

■中学生の頃から愛用している手帳

僕自身は、「すぐやろう」と意識したことはないんです。すぐやる理由は単純で、そうしないと日々の仕事があふれてしまうから。平均すると、1日8回、多い日は10回以上の会議をこなさないといけない。日々の業務に追われ、隙間時間もほとんどありません。その日のうちにできる仕事はすぐやっておかないと、業務は溜まる一方です。決断すべきこと、処理できる案件にはすぐに手をつけないといけません。

その上で、もちろんスケジュール管理は大切です。管理には、Googleカレンダーと手帳を使っています。書き込む内容は分けておらず、Googleカレンダーは秘書が入力していて、自分では手帳に書き込んでいます。

GoogleカレンダーはiPhoneの電池がなくなると見られませんしね。ただ、手帳はGoogleカレンダーのリスクヘッジというわけではなく、純粋に手帳の肌に馴染んだ感じが捨てがたいんですよ。

僕は、仕事道具は使っていて不便でなければ変えないスタンス。手帳も中学生の頃から愛用しているものです。どこでも買えるごく一般的な手帳で、毎年1冊、買い続けてもう30年以上になります。カバーの色と年号が違うだけで、サイズと形は一緒です。大学時代に使っていたオレンジのカバーが好きなんですけれど、なくなって残念(笑)。社会人になってから違う手帳を使ったこともありましたが、結局戻ってきましたね。

手帳の優れているところは、まず視覚的に入ってきやすい。僕の手帳は一般的なポケットにも収まるサイズです。見慣れた形式ということもありますが、その月のスケジュールや、電話番号などのメモが一覧で目に入ってくる。何日の何時に何があるかが一瞬で判別できるし、海外出張をいつ入れられるかなど、長期的な予定もたてやすい。

書き直しやすいのも魅力です。昔はボールペンで書き込んでいましたが、いまはシャーペンを愛用しています。社会人になり、経営者になってリスケジューリングが多くなりましたから、書いては直しができるほうがいい。ボールペンは文字が滲んで潰れてしまうことがあるので、ほとんど使いません。

いま愛用しているのは、パイロット製のボールペン兼用のシャープペン。兼用ペンのなかでも、とにかく小さいのが気に入っています。ボールペンのインク芯は1センチほどしかないですが、署名の時に使うくらいですからこれで十分なんです。消しゴムも3年は使っているかな。手帳に書き込む文字は細かなものですから、消しゴムもそんなに減るものではありません。

つきつめると、「カーボン」と「パピルス」への信頼があるんですよ。デジタルデータや、CDなどの媒体をどこかで信用しきっていない。CDは数十年の歴史しかないですけれど、カーボンとパピルスは紀元前から、数千年の歴史が保証してくれている。

かばんは革製の吉田カバン。形がキッチリ決まっているものよりも、いろんな形のものが入れられる、素材が柔らかく袋状のかばんを選んでいます。見た目やブランドにこだわりはなくて、機能性が一番!

もう一つ仕事で愛用しているのが、BOSEのノイズキャンセリングイヤホン。ケータイで通話をするときに騒音の中でもクリアに聞こえるので、効率を高めてくれるんです。

■すぐやることで決断の精度を上げる

ただ、道具についてはうまくいっているなら変えなくてもいいですが、仕事は違います。順調に見える事業でも、リスクをとって変える決断をしなければいけない場面がある。それを判断し、決断するのがマネジメントする側の役目です。経営者の仕事は決断することに尽きます。決断によって事態が良くなる確率が5割以上なら、理論上は決断をすればするほど成果が上がるわけです。すべての決断が奏功するのは難しくとも、7割は成功させたい。

逆に言うと、決断の5割もうまくいかないなら、その人はマネジメントをしてはいけない。すぐにマネジメントする側から退くべきです。決断力はすべてのビジネスマンに必要というわけではありません。落ち着いた分析をする人材も必要でしょう。

ただ、リーダーになろうという思いがあるならば、判断、決断が求められる。そして判断、決断の精度を上げていくためには、回数を増やすしかない。フィードバックを得て、間違えたら、それを修正する。そのサイクルを早めるために「すぐやる」ことが大事なんだと思います。

----------

マネックスグループ社長CEO 松本 大
1963年生まれ。開成高校、東京大学法学部卒業。87年、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券入社。90年、ゴールドマン・サックス証券に転職。99年に退職し、マネックス証券設立。1年4カ月で東証マザーズ上場。
 

----------

(伊藤達也=構成 的野弘路=撮影)