「選手はピッチで”考える人”でなければならず、しかも迅速に適切な決断を下せなければならない」

 そう語るミケル・エチャリは現在69歳、バスク代表監督を務める。世界最高峰リーガエスパニョーラの名門、レアル・ソシエダで強化部長、育成部長、戦略スカウト、Bチーム監督などを歴任。ファンマ・リージョ(セビージャ)など監督養成学校で多くの指導者も育ててきた。今も指導者として世界中を回り、日本でもJリーグや日本サッカー協会で講習を行なっている。

“スペインの慧眼(けいがん)”と呼ばれる男の目に、W杯アジア最終予選のUAE戦、タイ戦の日本代表選手たちはどう映ったのか? 2009年から日本代表を定点観測してきたエチャリに、一定の時間以上ピッチに立った計14人の選手評を語ってもらった。


川島永嗣(UAE戦、タイ戦ともにフル出場)GK
川島永嗣
UAE戦は落ち着き払っており、俊敏だった。前半20分の決定機は非常に集中しており、すばらしいセービングを見せている。この1対1を制したことが勝利につながったと言っても過言ではない。タイ戦も集中力の高いプレーを見せた。相手のシュート精度は低かったが、PKストップを含めゼロに抑えたことは評価できる。


酒井宏樹(UAE戦、タイ戦ともにフル出場)DF
酒井宏樹
ロンドン五輪の前から注目していた右サイドバックだ。当時から守備のポカが気になったが、攻撃ゾーンに入ったときのスキルは際立っている。UAE戦では深さと幅を与え、先制点はその長所が顕著に出た。右ワイドに開いてドリブルで侵入後、最高のタイミングのパスで久保の得点をアシスト。タイ戦はボランチとの関係性に苦しんだが、終盤には中盤との連係から目覚ましい攻め上がりを見せている。


長友佑都(UAE戦、タイ戦ともにフル出場長友佑都
左サイドバックとして、システム上、かなり高い位置をとっている。UAE戦の後半に大迫に合わせたクロスは、質の高さを証明した。ただ、今野ら中盤の選手とのコンビネーションはしばしば小さな破綻を見せていた。そしてタイ戦はボランチと連動できず、効果的な動きが少なかった。終盤にPKを与えてしまうなど「赤点」ギリギリか。


吉田麻也(UAE戦、タイ戦ともにフル出場)吉田麻也
センターバックとして経験豊富で、攻撃のヘディングを得意とする。UAE戦は中央で攻撃を跳ね返し、2点目の起点となるロングボールも及第点。ただ、クロスの対処でまずい場面があり、単純なつなぎでのミスもあった。タイ戦はロングボールや4点目のヘディングなど局面では輝きを放つも、ビルドアップは改善できていない。


森重真人(UAE戦、タイ戦ともにフル出場)森重真人
小柄だが、強く、うまく、ポテンシャルは感じるセンターバック。しかし、UAE戦は山口との連係(判断)が悪く、決定機を与えている。タイ戦も中盤のポジションに上がって逆襲を浴び、単純に相手FWに入れ替わられるシーンがあった。能力を生かし切れていない。先制点のロングパスはハイレベルだったが、もっと迅速かつ適切にボールをつける必要がある。


山口蛍(UAE戦、タイ戦ともにフル出場)MF
山口蛍
UAE戦ではアンカーとしてプレー。孤立している場面が多く、”大ケガ”にはならなかったが、戦術的にはほぼ機能していなかった。彼の両脇は非常に危険なスペースだった。タイ戦ではダブルボランチの一角を担うが、パスミスが多く、終盤は持ち直したとはいえ精彩を欠いた。周りとの距離感が悪い。展開する意識を持つべきで、ポジショニングに改善の余地がある。


今野泰幸(UAE戦にフル出場)今野泰幸
ザッケローニ監督時代は、センターバックの適性を感じない選手だった。UAE戦はインサイドハーフでプレー。完全にマークをはがされる場面があったし、前への意識が強すぎるのか、後ろや横との連係に拙さも見られた。だが攻撃意欲は奏功し、2点目を記録。DFの背後をとった位置取りは正しい。ポジションの適性が見えにくい選手で、あるいはサイドバックか。


香川真司(UAE戦は後半26分まで、タイ戦は後半29分まで出場香川真司
本来はトップ下の選手だが、タイ戦はインサイドハーフでプレーした。レアル・ソシエダの戦略担当をしていたときに彼をスカウティングしたが、コンビネーションで崩せるチームでは欠かせないが、フィジカルなチームでは力を出せないかもしれない。UAE戦の1点目は連係の起点になっている。タイ戦はトップ下で攻撃を作り出し、岡崎と同じで周りを生かしたプレーを見せた。


酒井高徳(タイ戦にフル出場)酒井高徳
これまでサイドバックでプレーする機会が多かったが、タイ戦はボランチでプレー。山口とポジションが重なることが多く、プレーを創り出せなかった。奮闘したが、守備面でも簡単にラインを越されていた。


久保裕也(UAE戦は後半33分まで、タイ戦は後半39分まで出場)FW
久保裕也
ダイアゴナルラン(斜めの動き)に特長のあるストライカー。サウジアラビア戦もそうだったが、UAE戦では見事にゴールを決めている。2点目も起点になった。タイ戦でもロングボールを引き出し、右サイドで戦術軸になっていた。2つのアシストは完璧なコントロールだった。ゴールはいずれも周囲との関係性から生まれており、楽しみな選手と言える。ただ、タイ戦の後半は消耗していた。


原口元気(UAE戦はフル出場、タイ戦は後半21分まで出場)原口元気
ハリルホジッチの戦術を最も理解しているアタッカー。UAE戦は左サイドのゾーンを固く閉ざし、守備面での貢献度が高かった。攻守両面のポジショニングに優れ、必ず味方をフォローできる位置にいる。タイ戦も直接ゴールに絡んでいないが、常に適切な位置で味方をサポート。また、切り替えの意識が速く、スピードもあり、カウンター戦術ではキーマンになる。


岡崎慎司(UAE戦は後半37分から、タイ戦はフル出場)岡崎慎司
清水時代から日本人で最も評価してきたゴールゲッター。チームプレーヤーとしての質が図抜けて高い。タイ戦は1点目、2点目、3点目、どれも彼の連係力が出た。トランジッション(切り替え)の意識も高く、相手のカウンターを許さず、味方のカウンターを発動させられる。タイ戦のベストプレーヤーのひとり。


大迫勇也(UAE戦の後半37分まで出場)大迫勇也
パスを引き出す動きに長じるセンターフォワード。UAE戦は高さも見せつけ、2点目の起点になった。クロスに合わせた際どいヘディングシュートもあった。


本田圭佑(UAE戦は後半33分から、タイ戦は後半21分から出場)本田圭佑
ゴールへの意欲を感じさせた。2試合とも交代出場だが、戦術順応度の高さを見せた。UAE戦はカウンターとポゼッションをもたらし、タイ戦は「深さ」を持ち込み、2度際どいシーンを作っている(ひとつは左足シュート、もうひとつは左足のクロスで久保がシュート)。タイ戦は終盤に山口のヘディングパスをダイレクトで裏に入れ、リターンからゴールを狙うポジションへ走っており、ここだけ切り取ってもセンスは出色だ。

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