IoTを活用することで工場従業員の作業実態を効率的に把握できる(写真はイメージ)


 IoTによる生産革新は、決して先進的な大企業ばかりが恩恵を得られるわけではない。むしろ限られた人材や設備でものづくりを行っている多くの中小企業にこそ大きな可能性をもたらすものである。

 日本能率協会コンサルティング(JMAC)では、IoTデバイスを使いこなす強い現場つくりを目指すために「現場IoT7つ道具」を提唱している。

 現場IoT7つ道具とは、現場の見える化の対象を「位置(Location )」「作業(Operation )」「場面(Situation )」「稼動(Availability)」「数量(Count)」「品質(Quality)」「危険(Hazzard)」の7つとし、これらの対象をセンシングし、データとして蓄積、解析することで次の生産活動につなげる手法である。

 例えば「作業」であれば“Operation”の頭文字「O」をとって、「IoO」と呼んでいる。すなわち、あらゆる“Operation”をインターネットにつなげるという考え方である。第3回目となる今回は、この「IoO」についての取り組み事例を紹介する。

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刻一刻と変化する作業の実態

 製造現場において、人の作業の実態を把握し、改善を行うことは、生産性を向上させるために大切なことと従来から認識されている。

 作業の実態を把握するやり方としては、日報などの実績を集計して稼動率を把握する、あるいは、ストップウォッチやビデオなどを用いて作業分析を行う、という方法が多いのではないだろうか。

 しかしこの方法では、多くの対象者を同時に分析しようとすると膨大な時間がかかる。また、ある時点での分析はできても、刻一刻と変化する作業実態の把握は困難だ。

 製造現場では、多くの人が様々な作業を行い製品を完成させてゆく。作業が正しく行われることにより、良い品質のものを効率的に作ることが可能となる。よって、多くの作業者の稼動状況や作業内容を全てリアルタイムに把握し、即座に問題を解決できれば、効率的なモノづくりが実現するはずである。

 では、広範囲の作業実態をリアルタイムで把握するには、どうすればいいのだろうか。

 IoOの活用では以下の3点をセンシングすることで、作業実態の正確な把握と効率的なモノづくりの実現を目指す。

・作業者の稼動状況 → パフォーマンスの向上、負荷の把握、適正な人員配置

・動線状況 → 作業手順適正化、作業者の歩行削減

・集中度 → ポカよけ、安全作業奨励 等

検査作業の集中度も計測

 具体的な活用事例を挙げよう。

 A社では、作業者に頭部センサー(頭部の動き、集中度の把握)、手首センサー(加速度の把握)、Beacon発信端末(作業位置の把握)を身につけてもらい、作業者の作業(動作)情報や位置情報を蓄積しようとしている。

作業者に装着するセンサーとBeacon発信端末


 例えば手首センサーとして用いるのは、腕時計のように手首に装着するデバイスである。歩数や動作を計測できる3Dモーションセンサを備える。3Dモーションセンサを手首に装着することで、加速度により腕の振り、角速度により腕のひねりや手首の回転を検知することができる。

 このリストバンド型デバイスは以下の特性を備えており、現場IoTに利用しやすい。
・安価。数千円から入手できる
・スポーツやヘルスケアでの利用も多く、水や衝撃に強い。
・小型・軽量であり、現場作業者の装着負担が少ない。

3Dモーションセンサが腕の動きを検知する


 以上のように作業者にセンサーを装着することで、作業者の作業内容や稼働状況、集中度、動線を把握、問題点などを発見できるようになる。

 しかし、これらのセンサーにより取得されるデータは、単独では意味を見出すのが困難なものもある。例えば、手首センサーから加速度の変化だけを見ても、動いていることは認識できても、何の作業をしているかは特定できない。そこで、「どの場所で作業を行っているのか?」という情報を組み合わせることで作業内容を特定できる可能性が高まる。

 また、集中度についても、「検査作業など、集中度が求められる作業のときに集中度が高くなっているか」といった複数の情報を組み合わせて実態を把握してゆく。

複数の情報を組み合わせて実態を把握する


 これらのことにより、作業内容が常時把握できるだけでなく、どの場所で作業を行っている比率が高いのか、手待ち(動作がない)はどの作業者で発生しているのか、作業者の移動距離はどうなっているか、作業者のスキルにより集中度に違いがあるのかなど、数多くの視点で現場の実態を見ることが可能となる。

 また、これらの情報を活用して、作業における問題を発見し、改善につなげてゆくことができるようになる。継続して情報を収集することで、改善の成果を把握することも可能となる。

 なお、この技術も第2回(「縦横無尽に動く工場のフォークリフトを追跡せよ」)で紹介した「IoL」ツールと同様に後付け可能なセンサーで構成されている。導入が比較的容易にできることは、やはり大きなメリットと言える。

改善案の検討や実践に多くの時間を

 以上の例はまだ限られた範囲での事例であり、現場での本格的な活用には課題が残されている。

 例えば、センシングデータは個々に取得されるため、それらを組み合わせて分析するためのプラットフォームを作成しなければならない。また、主要な作業を事前に特定し、作業を明確化するためのパターン認識が必要であるなど、いくつかの課題が明確になってきている。取得したデータから何を読み取り、どのように改善するかということについては、データを扱う人のデータ解析力やアイデア発想力を高める必要がある。

 しかしIoOというツールが、作業の実態を把握し改善につなげるために有効であることは間違いない。

 従来は実態把握や作業分析などに多くの労力を費やしていた。だが今後は、実態把握や作業分析よりも改善案の検討や実践にできるだけ時間を割き改善サイクルを早く回すことが大切である。

 JMACではこのような考えのもと、クライアントの製造現場をお借りして実証実験を重ながら、ツールを活用した製造現場改善に取り組んでいる。

 次回は不良や故障など「出来事(Situation )」の把握のIoT化についてお伝えする。

筆者:角田 賢司、袖嶋 嘉哉