人種の混交がもたらした多様化が、人々の考え方や社会のあり方に大きな変革をもたらしていると語るモーリー氏

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『週刊プレイボーイ』本誌で「モーリー・ロバートソンの挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンがアメリカ・ワシントンD.Cに滞在中に見た30年前と現在のアメリカの変化について語る。

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先日、所用がありアメリカの首都ワシントンD.C.に1週間ほど滞在しました。僕はD.C.に30年ほど前に住んでいたのですが、街並みはほとんど当時のままです。

しかし、Uber(ウーバー)で手配したクルマに乗り、外国から移住してきたというドライバーと会話しつつ外の風景を見ていると、街行く人々が当時とはまったく違うことに気づきます。白人、黒人、ヒスパニック系、アジア系……かつては住む地域も生活も分離され、しばしば敵対していたさまざまな人種はもはやミックスされ尽くし、何と何のハーフなのか、それともクオーターなのか、見た目では全然わからないような人々が通りを闊歩(かっぽ)しています。

街のスーパーでは、レジに非白人のトランスジェンダーの人が立っていました。僕は一瞬「あっ」と思ってしまったのですが、現地の人々は誰も気にも留めません。有色人種のトランスジェンダーなんて、かつてはマイノリティ中のマイノリティとして奇異の目で見られたと思うのですが、もはやそうした“多様性”はすっかり当たり前です。

ある夜、地元のクラブにも足を運びました。店内は10代、20代の若者ばかりで、人種の壁など一切なく、チベット系やネパール系の子たちもいました。そこでベトナム系のDJ志望の男の子(20歳)と意気投合し、後日、同年代の仲間4人で暮らすシェアハウスに遊びに行きました。ふと見ると、リビングの大きなテーブルの上には大麻が置かれ、みんなそれを当然のように楽しみながら、ゲームで遊んだりDJプレイの練習をしたりと、思い思いの時間を過ごしていました(D.C.ではすでに嗜好[しこう]大麻の使用は合法化されています)。

30年前のアメリカでは、若者たちは大麻にしろハードドラッグにしろ、パトカーのサイレンに聞き耳を立てつつ、気合いを入れて興奮しながら使っていたものです。それが、今ではみんな実に平和的に、日常の一部として大麻を楽しんでいます(もちろんハードドラッグは別ですが)。

滞在中はできる限りいろいろな人とコミュニケーションを取り、深く話し込むこともしばしばありました。そこで再確認できたのは、人種の混交がもたらした多様化が、人々の考え方や社会のあり方に大きな変革をもたらしているということです

なぜこんなことを書くかというと、多様化の象徴だったオバマ政権から、社会の分断を煽(あお)るトランプ政権に変わったことで「アメリカの多様性は後退する」といった言説が日本ではまかり通っているからです。

しかし、このように米社会の多様化は相当な深度で進行しています。それを心から受け入れられない人々がトランプ政権の誕生を後押ししたわけですが、おそらくあれは“最後の抵抗”。今後も一部の差別主義者たちは騒ぐでしょうし、さまざまな摩擦はあると思いますが、保守的な地域の白人たちも、いずれ他人種、他文化、LGBTを受け入れ、リラックスして暮らす日が来るでしょう。

たとえホワイトハウスの中が「オバマ」から「トランプ」に変わったとしても、社会は「オバマ化」を続けていく。トランプのように一時的に選挙を牛耳ることはできても、社会の流れを止めることはできない。ホワイトハウスから程近いD.C.の街で、僕はそう確信しました。

●Morley Robertson(モーリー・ロバートソン)

1963年生まれ、米ニューヨーク出身。国際ジャーナリスト、ミュージシャン、ラジオDJなど多方面で活躍。フジテレビ系報道番組『ユアタイム〜あなたの時間〜』(月〜金曜深夜)にニュースコンシェルジュとしてレギュラー出演中!! ほかにレギュラーは『NEWSザップ!』(BSスカパー!)、『モーリー・ロバートソン チャンネル』(ニコ生)、『MorleyRobertson Show』(block.fm)など